五杯目 強さには…

「まだ明るいじゃん!やってるんじゃね?ビッチがいるって噂のカフェ。」


柄の悪い5人組が店に入ってきた。

もちろん、閉店の札は出ているが…


「あ、お姉さ~ん!この店にビッチいるって聞いて来たんすけど…ってうわ!お姉さんすごいかわいいですねぇ?」


「カフェの営業時間はもう終わっています…申し訳ございませんが、出ていってください。」


「そんなつれないこと言わないでくださいよ~。どうです?俺らとホテルでも行きませんか~?」


そう言って、連中の一人がサヤの肩に手を回した。

サヤはその手を払いのける。


「不快です…触らないでください…!」


「そんな怖がらなくても大丈夫っすよ?気持ちいいだけです…って、もしかして初めてだったり?」


「とにかく、出ていってください!警察呼びますよ!」


警察…という単語が出ると、連中は怒りを露にした。


「出たよ警察…最初は、皆同じこと言うんすよねぇ!?徐々に気持ちよくなってくるんで…安心してください?」


そう言いながら、ジリジリとサヤに近づく…

サヤは恐怖で動けない。


むにっ…


一人がサヤの胸を触った。


「ひゃっ…やめてくださ…」


「あはは!反応初々し~…絶対処女だよね?興奮してきた~!」


(嫌…!誰か助け…!)


カランカランッ…


また誰かが店に入ってきた。

連中も入り口方向を見る。


「忘れ物した…サヤさん、まだいます…」


忘れ物をしたレドが店に戻ったのだ。


「あ…レド…さ…助け…」


「ちょっとお兄さん!俺らお楽しみ中なんですわ。それとも7Pに変更しますか~?ww」


連中はゲラゲラと笑っている。

レドは眉間に力を入れ、こう言い放った。


「何が面白い…?よってたかって一人の女性を強姦未遂…漢の片隅にも置けんクズ共が。」


「あ?今何て言いましたかねぇ、お兄さぁん!?」


連中の一人がレドに殴りかかる。


「聞こえなかったのか?お前らは生きるに値しないと言ったんだ…!」


軽々とその拳をかわし、急所に蹴りを入れる。

痛みのあまり、男は意識を失った。


「ほら、来てもいいんだぞ?」


レドは、サヤからターゲットを外すために挑発した。


「こんな細マッチョがなんだ!殺るぞてめぇら!!」


四人のうち三人がレドをターゲットに切り替えた。

だが一人は冷静で、サヤを押さえたまま…

三人が一斉に蹴りとストレートをかましてきた。


「足を出したら負けだ。俺以外はな。」


蹴りの足を掴み、反対方向にねじ曲げた。


「いだだだだだだ!!離…」


「遅い。」


ゴキッ


足の骨をへし折った。

もう、奴は立ち上がれないだろう…


「隙ありぃぃ!」


レドの腹にアッパーを決めた。


「ぐっ…!?なんて、言うと思ったか?」


「は…?」


殴った男は自分の手を見る。

プラプラとしていて、おそらく手首の骨が折れている。


「俺の手…?何で…?」


「防弾チョッキ…って知ってるか?」


手首が折れた男はへにゃりと座り込んでしまった。


「レドさん…すごい…!」


「黙ってろ、くそビッチが!」


ガンッ


サヤの頭をテーブルに叩きつけた。

レドの怒りは頂点に達した。


「もういい…手加減する価値もない…!」


残っていたもう一人の頭を蹴り、怯ませてサヤの元へ向かった。

サヤの頭を叩きつけた男は、それに気づかぬうちに頭を掴まれ…


ガシャアンッ


レドはその男の頭を叩きつけた。

男は鼻血を出している。


「もう一度、同じことをしてみろ…次はこれで済まさない。わからなかったなら一からやり直すが…」


「わかりました、わかりました!!もう二度としません…だからもも…もうやややらないでくださいぃぃぃ…!」


レドは手を離し、男は他の者を引きずって、外に逃げ出した。


「サヤさん…怖いものを見せてすまなかった…大丈…」


ぎゅっ…


泣いてレドに抱きつくサヤ。


「うぇ…ひっ…」


「…もっと早く戻ってくるべきだった…もう大丈夫…俺が居ます…顔を見せて。怪我をしてないか確認しないと…」


「わだじは大丈夫れす…レドざ…ごめんなさ…」


濡れているサヤの頬を拭う。

レドは少しホッとした表情で、サヤを抱き返す。


「怪我はないね…よかった…」


「レド…さん…?」


「まだ痛むところが…?」


サヤは首を振る。


「レドさん…怪我は…?」


「俺は大丈夫。それよりも、自分の心配をした方が…」


「よかった…レドさんに何かあったら…どうしようかと…」


震えるサヤの背中を優しくさする。


「サヤさん、あいつらに何かされた…?」


「ちょっとだけ…胸、触られました…」


「…あいつら絶対殺す…!」


思わずサヤは笑ってしまった。


「レドさん、いつもはクールで…すましてるのに、今は違いますね…ふふ…」


「大切な人が傷つけられたら怒るに決まってるだろ?無事で本当によかったよ…」


その後、二人は店長に連絡を取って被害を伝えた後、警察に迎えに来てもらった。犯人の情報を警察に教えて、その日は家まで送ってもらうことに…


「助けていただいてありがとうございました…それにしても、レドさん何であんなに強かったんですか?」


「幼い頃からスラム育ちで、闘いの技術は嫌でも教え込まれたよ。俺は何で生まれたのか…理由もわからず生きてきたんだ。」


レドには辛い生い立ちがあるようだ。

もう少し聞いていたかったが、家に着いてしまった。


「じゃあレドさん…今日はお別れということで…本当に、ありがとうございました。」


「礼はもういいよ。俺は本を取りに戻っただけだからな…」


「レドさんがいなかったら…今頃どうなっていたか…ではまた明日、会いましょう?」


少し恥ずかしそうに、レドは頷いた。

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