元勇者的登校。

「お、俺、今日、学校……?」


「です……。ごめんなさい……」


 俺の絶望的な表情に釣られるように、桜彩がしゅんとなる。


「いや、別に謝る必要はないが……」


「た、たしかに……。すごく嫌そうな顔をしていたので、つい……」


 その通り、嫌だった。

 面倒くさい。最悪だ。


 だが、行かないわけにもいくまい。


 異世界に飛ばされ、魔王を倒し、戻ってきたらダンジョンと幼なじみと同棲していることになっていても、生活は続いていくのだから。


「じゃあ……えっと、行ってきます……」


「いってらっしゃい」


 桜彩を見送る。


 男と同棲(……というかシェアハウスか?)していることを知られたくはないだろうし、そもそも俺が学校に行く準備をまったくしていない。



 急いで準備する。

 桜彩の弁当の残りものをタッパーに詰め、筆記用具を鞄に入れて、制服を着た。


 ……が、なんかコスプレしてるみたいで気持ち悪い。


「そもそも、あんま似合ってない気がするな……」


 妙に後ろめたいというか、変な感じだ。

 ……まあ、それは置いておいて。


「学校はあのあたりだったよな……ってなると……」


 玄関の鍵を閉めた俺は自室に駆け込み、壁伝いに魔力を流す。

 買い物に行く手間などを省くため、各所と自室を魔法陣でつなげてあるのだ。


 学校に一番近いのは、スーパーの裏に設置したポータルCだろうか。

 たぶんあれを使えば、始業にはギリギリ間に合うだろう。



「よし――行ってきます」


 白い光に身体が包まれる。

 こうして、俺の新学期は慌ただしく始まった。

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