返事
「主。主。どちらへ行かれるのですか?」
「………」
無視である。
取り付く島もないのである。
さっさとこんな家潰れてしまいなさいな。
主は家の者たちに冷たくそう言い放つと、婚約者に結婚はしないと断言して家から出て来て、今。町の中を歩いているのである。
後ろからついて回る俺のことは丸無視である。
婚約者である後進は慈愛に満ち溢れる素直な方であるゆえ、幼馴染が結婚したくないのならばその意思を尊重すると聞き届けてしまったのである。
そこはもうちょっと粘ってほしかったである。
まあ、気になってはいるらしく、こっそり主に気づかれないようについてきているであるが。
主は迷いなくスタスタ歩き続けているである。
これからどうしようである。
俺も職なしである。
職を探さねばである。
自分だけではなく、主も養うぐらいの気概で働かなければいけないであるかもしれないである。
主が住む家を探すところから始まり、家政婦よろしく主の家事も担わなければいけないかもしれないのである。
確か。主は家事はできないはず。多分。お手伝いさんにすべて任せていたのである。
どうしようである。
気前のいい家で給金は高く、衣食住は提供されていたあるので、お金の使い道はなかった俺は貯金はとりあえずたっぷりあるであるので、家一軒は買える、と思うであるが、主が住んでいた大豪邸は無理である。
とにもかくにも、まずは意思疎通を図りたいのである。
言葉を返してほしいのである。
(2024.1.14)
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