試験
エリー.ファー
試験
正解があるはずだ。
探すしかない。
見つからないまま終わる。
それもまた一興じゃないか。
変わらない一夜を過ごすうちに。
気が付けば試験日。
ドラマじゃないか。
痺れるじゃないか。
「どうだった」
「何が」
「試験に決まってるだろ」
「いや、ダメだった」
「まぁ、そういう日もあるよな」
「お前は、どうだった。俺は、そうだな。難しいかもしれないな」
「手が震えるよな」
「あぁ、足が震えるよ」
「どうして、こんなことしなきゃいけないんだろうって思うと、何もできなくなっちゃってさ」
「それ、試験中に思っちゃうんだ。試験のための勉強中に出るなら分かるけど」
「そうなんだよなぁ。なんか、疑問に思っちゃうんだよなぁ」
「まぁ、人それぞれだよな。試験中に何が足を引っ張ってくるかなんて、分からないもんだし」
「空調、きつくなかった」
「かなりきつかった。ていうか、臭かったよな」
「そうなんだよ。あれ、明らかに臭いんだよ。マジでやめて欲しかった」
「皆、どう思ってたんだろうな」
「誰も抗議しなかったよな」
「でも、皆、嫌だったけど言い出せなかったのかもしれないな。まさに、俺たちがそうなわけだし」
「まぁ、な。でも、仮に空調がちゃんとしてたとして、それで点数が上がったかっていうと、微妙な所なんだよなぁ」
「そう、空調が悪かったのは事実なんだよ。でも、だからといって、空調に責任を被せられるほどの実力が俺にあったかって考えると、正直な話、微妙というか」
「俺もだよ。なんていうか、試験前は、何か嫌なことがあったら失敗の責任を全部被せてやろうって思ってたんだけど、いざ、そのタイミングがやって来ると、何もできないよな」
「まぁ、親からまともな教育を受けたということで」
「でも、良い点数を取りたかったなぁ」
「頑張ったからな」
「嫌なこともいっぱいあったけどな」
「でも、その繰り返しだもんな」
「暇だな」
「暇過ぎるよな」
「どうして、生きてるんだろうな」
「え」
「だから、どうして生きてるんだろうなってことだよ」
「マジで急にどうしたんだよ。怖いぞ」
「だって、生きてるってことは、何かしらの試験を受け続けるってことだろ。じゃあ、ずっと苦しいってことだろ」
「まぁ、そういう考えにはなるな」
「でも、俺は、俺たちは、生きるって選択肢に自分を賭けるわけだ」
「まぁ、それしかないからな」
「なんなんだろうな。俺たちってここから出られるのかな」
「出られるだろ。合格さえすれば、全部終わるんだから」
「終わるって、いい意味なのかな。だって、合格したら、次の試験に会うための準備が整うだけなんじゃないかな」
「だとしても。しょうがないだろ」
「やめようかな、試験を受けるの」
「おいおいおい。なんでだよ、今までずっと頑張ってきたじゃねぇかよ」
「でもさ、生きるって、こういうことなんじゃないのかな」
「そんなことねぇって」
「だって、合格したとしても、ここの外に出られるようになることと、ようやく死ねるようになるだけだろ」
「だから、死ぬって選択肢を抱えた上で生きていけるんだよ。凄い贅沢なことだろ。ただ、生かされてるよりも遥かにましだろうが」
「そうかな。そうなのかな」
試験 エリー.ファー @eri-far-
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