小説家失格

エリー.ファー

小説家失格

「小説家として失格です」

「誰のことを話してるんすか」

「あなたのことです」

「マジっすか。俺っすか。なんで。ねぇ、なんでなんすか」

「なんでもです」

「いやぁ、すげぇ聞きたいんすけど」

「聞かせません」

「なんでですか」

「聞かせたくないからです」

「小説家として失格っていう意見は、分かるんすけど。なんていうか、説明は欲しいんすよね」

「説明は必要ありません」

「そりゃ、言う方はそうだと思うんすけど。こっちとしては、改善できるところは受け入れたいと思ってるんすよね」

「説明はしません」

「まぁ、億劫なのは分かるんすよ。俺も、説明とか面倒臭いなぁ、とか思ったりするんすよね。でも、大事なことじゃないっすか。結局、人間と人間って会話がないと情報共有も上手くいかないし、今、この瞬間に一番必要なことだと思うんすよ」

「思いません。説明はしません」

「説明があるかないかで大きく変わるじゃないっすか」

「だとしても、説明はしません」

「まぁ、いいじゃないっすか。何事もチャレンジじゃないっすか」

「チャレンジしません」

「チャレンジって悪いことなんすか」

「いや」

「そうっすよね。チャレンジ自体は悪いことじゃないんすから、説明してみればいいじゃないっすか。もちろん、それで大きく変わるかどうかなんて分からないっすけど。でも、そこに価値はあるんじゃないっすかね」

「価値はありません」

「まぁ、意地にならなくたっていいじゃないっすか。何でもチャレンジしてみて、それで失敗したら、その時は謝ったり、笑って誤魔化せばいいんすよ。ねっ、そうすっよね」

「説明はしませんし、価値はありません」

「大丈夫ですって、間違えても許すんで」

「説明はしません」

「チャレンジしなかったら、チャレンジしなかった人ととして言われ続けるっすけど、今、言っちゃえば恥をかいたとしても今だけで済むんすよ」

「絶対に説明しません」

「でも、それだと同意は得られにくいんじゃないっすか。だって、説明しないんすから。それじゃあ、意見というより壁に向かって呟いてる独り言と変わらないじゃないっすか。折角、意見があるのにもったいないと思わないんすか。どうせだったら相手に伝わるように言った方が、皆のためにも、自分のためにも絶対に良いじゃないっすか」

「説明をする気はありません」

「じゃあ、説明じゃなくて、話してみるのはどうっすか。今は、ただ結論だけを言ってる人なんで、やっぱり同意はしにくいっすよ。裁判だって、有罪とか無罪とか色々言ったりするっすけど、ちゃんと理由だって説明するじゃないっすか。それは司法における責任というよりも、結論を出す人にとって重要な要素だからっすよ。もちろん、この説明しないっていう意見が今後変わる可能性があって、結論と言えなかったとしても、今は一応の結論として、説明する気はありません、とは言ってるわけじゃないっすか。だから、説明できるなら説明しちゃった方がいいと思うんすよ。できないのであれば、難しいし、それは避けた方が良いと思うんすよ。だって、できない人に、させようとしたって無理じゃないっすか。できない人って、できないからできない人なわけっすからね。本当に、本当にできる人なら、やってみてもいいんじゃないっすか」




「説明しません。なんと言われても説明しません」

「またまたぁ、例えばの話っすけどね」

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