ギャルと一緒に×××しないと出られない部屋

烏目 ヒツキ

密室とギャル

××しないと出られない部屋

 ボクはベッドに座り、目だけを泳がせて周りを見る。

 部屋は12畳半の広さ。

 部屋全体は、モダン風で落ち着いた感じの内装。


 入口の近くには、トイレとシャワーが別々にある。

 他に部屋はない。


 あとは、化粧台の所に電話の子機が見える。

 テレビは見れるし、カラオケはできる。


 一室だけに、何でも揃っていた。


 見るからに、ホテルの一室。

 だが、不思議な事に、ボクはここへ


「だあっ! もう! 出られない!」


 入口の方から怒鳴り声が聞こえ、ボクはビクついてしまう。

 出入り口までは、ベッドのある空間から、L字になった廊下を歩く。

 そこに扉はあるのだが、妙な事に開かないのだ。


「おい。フトシ!」

「は、はい」


 戻ってきたクラスの女子に呼ばれ、ボクは返事をする。


「窓は⁉ 開いた⁉」

「いえ、ビクともしません」

「チッ。……マジかよぉ」


 金髪のギャルがベッドのそばにうずくまる。


 ボクはこの女子が苦手だった。

 見てくれは、本当に綺麗な容姿をしている子だ。

 ムラがなく、綺麗に染まった金色の髪。

 前下がりのショートボブで、頭の斜めから片側に長い前髪を寄せた髪型。


 肌は白くて、ギャルにしてはメイクが薄め。

 ただ、耳にピアスはしているし、ネックレスやスマホの飾りなどは、チャラチャラとしていて、見たままギャルだった。


 名前は、菅野すがのレミ。


 普段は、ボクをからかい、イジメているクラスの女子だ。

 ボクの事が嫌いらしく、顔を会わせる度に意地悪してくる。


 そんな女子と、密室に閉じ込められていた。


「菅野さん。他に手掛かりは?」

「あったら、お前に教えないで逃げてるよ」

「ひ、ひどいなぁ……」


 実を言うと、ボクはもう手がかりを見つけている。

 部屋の入口のドア。

 その上に、パネルがあったのだ。


 パネルにはこう書いてあった。



 どうせなら、推しのアイドルと二人きりになりたかった。

 それなら、この強制力のせいにできるし、ボクはキスができる。

 なのに――。


「はぁ~~~~……。マジで、八つ当たりしてぇ」

「はは。落ち着きなよぉ」

「るせぇ!」


 ゴスっ。


 肩を殴り、八つ当たりしてくる菅野さん。

 この女子とキスは、かなり気まずい。

 容姿だけは、本当に整っている。

 なのに、中身が獰猛どうもうなので、ボクは冷や汗が止まらなかった。


 いずれ、密室に閉じ込められて限界がくる。

 その前に、彼女へボクは言わないといけない。


 でないと、二人とも密室から出られないのだ。


「あ、あの~……、菅野さん」

「あぁ?」

「実は、……手がかりらしきものを見つけましてぇ」


 目をつり上げて、菅野さんが立つ。

 元々、目じりが若干つり上がった形をしているが、さらに鋭さが増したので怖かった。


 やや大きめの目には、青色のカラコンが見えた。

 その目が、ボクを見下ろし、今にも殴りかかりそうな気配を漂わせている。


「実は、入口のパネルに――」


 誰か助けてくれ。

 ボクは、本当にこの子とキスするのか。


 ボクの前方には、薄っすらと三途の川が広がって見えた。

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