第15話 女奴隷イリスとセクシー下着♡

 イリスはアブドルの命令に従い、着替えていた。


 と言っても別室で着替えることは許されない。俺たちとの間に立てられたついたての向こうで、衣服を脱いでいる。


──シュルシュルシュル──


 絹の衣装がこすれる音だけが、部屋に響く。


 洋の東西を問わず、なぜ衣装がこすれる音は、こんなにエロいのだろうか。


 ついたての上に、今まで着ていた衣服がかけられる。一枚一枚、衣服を脱いでいるのだろう。僅かにこぼれる光のおかげで、ついたての奥にいるイリスのシルエットが浮かぶ。


 衣服を脱ぐ音は消えたが、反応はない。


 おそらく全裸で恥じらいながら、見慣れぬ下着の着用に、気を病んでいるのだろう。


「なかなか時間がかかりますな、セイオウ殿」


「女性の着替えは時間がかかるものです。アブドル様。それにこうしてじらされるのも、また一興かと」


「はっはっは、確かに」


 アブドルの言葉を、適当な相槌を合わせる。どうやら上機嫌のようだ。


「・・・準備が整いました。ご主人様」


 ついたての向こうから、恥じらいに満ちた声が聞こえる。


「ではイリス、こっちに来なさい」


「はい。ご主人様」


 たどたどしい足取りで、俺たちの前に現れるイリス。


 ガーターストッキングに包まれた、魅惑的な長い脚。


 豊かな胸は、ブラの補正効果によってより美しい谷間を形成している。

 

 そして怪しい色香を放つ陰部を、丁寧な刺繍が施されたショーツが隠していた。


 窓からこぼれる夕陽に照らされた長い髪が、彼女の美しい身体をより一層際立たせている。


 唯一以前と変わらぬのは、首に嵌められた首輪だけだったが、それがかえって下着姿の彼女に怪しい色気を与えていた。


「うう・・・」

 

 よく見ると、イリスは小さく震えている。


 主人以外の男に肌をだすことはもちろん、体のラインが明らかになる衣服を着る事さえ初めてのはずだ。ひょっとしたら、裸になるよりも恥ずかしいのかもしれない。


「これは、美しい! あの衣装を身に着ければ、このような姿になるのか」 


 アブドルが感嘆の声をあげる。


「はい。ここまで美しい女の身体、私も初めて見ます」


 俺も相槌を打ち、称賛の言葉を述べる。せめて称賛の言葉を贈ることが、俺ができるイリスへの精一杯のフォローだった。


「・・・ありがとう、ございます。ご主人様」


 イリスがたどたどしい口調で、感謝の言葉を述べる。恥じらいの中にも、身体を褒められたことに対するわずかな喜びを感じる。


「ぜひ、後姿も見てください、アブドル様」


「ふむ。イリス、後ろを向きなさい」


「はい。ご主人様」


 そのまま背中を見せるイリス。


「おお!」

 

 アブドルが思わず声をあげる。


 目の前にあらわになったのは、シミ一つない透明な肌の、果物の様に形の良いヒップ。


 細いヒモにすぎないTバックに尻を隠す力はなく、むしろ美しいヒップラインを際立たせていた。


「うう・・・恥ずかしいです、ご主人様」


 自身の尻に向けられた男二人の熱い視線に、イリスが身もだえる。


「ここまで美しい尻を持つ女は、めったにおりません。完璧です」


 俺は大げさに褒める。AVでもグラビアの撮影現場でも、とにかく女優さんを褒めるらしい。せめて劣等感だけは感じてほしくなかった。


「こ、このような衣服、許されてよいのか?」


 ほとんどあらわになったイリスのヒップを見つめながら、アブドルが問いかけてくる。


「もちろん、女性にとって、特別な男性のみが見ることができる夜伽の衣装ですから」


「ふむ、素晴らしい」


「様々なデザインの下着がありますから、その時に応じて楽しむことができます。同じデザインの下着でも、例えば赤と白と黒では、まるで印象が違ってきます」


「ふむ、確かに」


 別の色の下着をつけたイリスの下着姿でも想像したのだろうか。アブドルの唇がにやける。


「下着には体のラインを補正する効果があります。より美しく、体を見せることができるのです」


「ふむふむ」


「優れた下着は、夜伽に向かう女性たちにとっての鎧の様なものです。彼女達は高い金を出してでも、よい下着を買おうとするでしょう。騎士たちがより良い武器を買いあさるように。そこに大きな商機があります」


「なるほど」


「他にも胸を固定することによって胸を保護したり、陰部を清潔に保つ効果もあります。洗濯も簡単です。夜伽の為のだけの衣装というわけではないのです」


「ふむ。異世界の女性は、皆このような下着をみにつけているので?」


「もちろんです(Tバックじゃないけど)」


「なるほど、ご提案の趣旨は理解いたしました。確かに、成功すれば大きな収益となるでしょう」


「我がフリージア王国のお針子の女たちの腕は、大陸一です。出資さえしていただければ、必ずご期待にそってみせます」


 ここぞとばかりに熱く営業をかける。


「はっはっは、〝我がフリージア王国〟ですか、結構な心意気ですな」


 この世界に来たばかりの俺が発した言葉。それがおかしかったのか、アブドルは豪快に笑う。


「しかし、この世界の女性に下着という文化を普及させるのは、少々骨が折れるのでは?」


 痛いところを突いてくる。


 アブドルのいう事は一理あった。文化を普及させるには、時間がかかる。人の目に触れない下着に関しては、特にそうだ。


「それに関しては策がございます。娼館の娘たちに、下着をつけてもらうのです」


 この世界にファッションモデルや下着モデルという職業はない。ファッションリーダーであるアイドルや女優もいない。


 あえてそれに近い存在がいるとすれば、娼館の娘たちだった。


「娼館の娘たちに身に着けて接客してもらえば、下着を一気に普及させることができます」


「ふむ。だが裸の方がよいという男達もいるのでは?」


「娼館ですから、その場合は脱げばよろしいのです」


「ああ、それはそうか。ははは」


 何がおかしいのか、豪快に笑うアブドル。まあノーパンやノーブラが好きだという男性もいるが、ややこしいのでその話はしないでおこう。


「融資をお願いできませんか?」


「ふむ・・・聞けば娼館の方の経営改善策も、ご担当されているとか?」


 下着ビジネスへの融資についての質問には答えないまま、アブドルは話題を変える。俺に対する試験は続くらしい。


 なら、受けて立ってやる。


「はい。どうせなら、一度に改善しようと思っております」


「ふむ。そちらの方の案も、伺いたいものですな」


「わかりました」


 そういうと、俺は静かに深呼吸する。


 一歩間違えれば、この男との関係は崩壊し、すべてが無に帰すだろう。


 だが後戻りはできない。娼館の経営状況改善もまた、必要な事なのだ。


 俺はイリスの方を向き、口を開く。


「実際に試していただくのが、一番です。できれば、イリスさんに実演していただきたい」


「えええっ!?」


 流石のイリスも、驚きの声をあげる。


「ふむ・・・」


 アドブルの方も、さすがに目の色が変わった。先ほどまでの上機嫌な余裕の表情は、もうない。


「もちろんアドブル様に体験していただくのが一番ですが、俺が代行しても構いません」


「ひゃあ!?」


 さらなる衝撃の提案に、イリスが悲鳴に近い声をあげる。


「ふむ・・・」


 そんなイリスを尻目に、アドブルが豊かな髭をいじりながら、考え込んでいる。


 普通の男なら、自分が体験するというだろう。もしくは、怒りだしてもよい提案だ。


 しかし、俺はこの男の性癖を知っていた。しかも商人としては超一流だ。俺がどんな性ビジネスを提案するか、興味もあるはずだ。


 10中8、9、いける。ダメなら首をくくるしかないが。


 俺は固唾をのんで、アブドルの反応を待った。


「・・・最近、体調がわるくてのう、セイオウ様に代行していただきましょうか」


「ご、ご主人様、本気でおっしゃっているのですか!?」


 予想外の回答だったのか、イリスは悲痛な声をあげる。


「ご主人様以外の方に触れられるなんて・・・わたくしのことを、お嫌いになられましたか?」


 懇願するような声。


「そのようなことはない。あくまでも商いのためだ。命令だ、従いなさい」


「・・・はい。わかりました」


 目を伏せ、あきらめたように主人の意に従うイリス。


 ネトラレの性癖を持つ主人の歪んだ心情など、彼女には理解できないのだからしかたない。

 

 もちろん俺にもよくわからないし、わかりたくもなかったが。


「我々の掟では、女が春を売る行為は禁止されております。しかし例外的に主人が認めた場合にのみ、女奴隷を貸し与える事はあります」


「なるほど」


 それは売春とどう違うんだ?、と心の中でつっこむ。


「その場合、男達は〝特別な関係〟になったとされます。セイオウ殿と〝特別な関係〟になるのも、一つのご縁でしょう」


「はい。それは俺も光栄です」


 〝特別な関係〟か。〝穴兄弟〟とでもいうのだろうか?


 そんなことを考えても、仕方がない。


 ここからは実践になる。後戻りはできない。


 脳裏に浮かぶのは、瞳を涙でいっぱいにして、必死で訴えるレイナの姿。彼女を手に入れるためだ。間男にも、人間バイブにも、バター犬にでもなってやる。


「水を使いたいので、場所の移動をお願いします」


「ふむ、では沐浴場がよろしかろう」




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