【60万PV突破!】オッサン、3人のギャルに『シェア』される!?〜元気いっぱいな美人ギャルに懐かれた平凡サラリーマン、ギャルづくしな毎日が始まってしまう〜

兎のしっぽ🐇

第1章① 1人目のギャル「月城ミサキ」

1-1改 オッサン、彼氏持ちギャルと出会う

 社会人ってマジで出会いがないな……。


 そう痛感した俺が新しい出会いを求めてマッチングアプリに登録したのは社会人2年目の5月のことだ。趣味の合う子がいいな。できれば可愛い子で。


【ワタシも筋トレと料理が趣味なの♡】


 初めてマッチングした相手が、なぜかガチムチ♂だった。


【お尻が初めてでも安心してね♡】

【優しく掘ってあ・げ・る♡】


 俺はそっとアプリを削除した。


 6月。出会いを求めて駅前のジムへ行ってみた。施設を案内してくれたのはとてもセクシーなトレーナーのお姉さんだった。このお姉さんとトレーニングしたい。


「はじめましてえ〜♡」


 体験入会の担当がどこか見覚えのあるガチムチトレーナー♂だった。


「ワタシ、お兄さんみたいな塩顔男子が大好物なんですう〜♡ 体も逞しくてス・テ・キ♡」


 初日でギブアップした。


 7月。出会いを求めて料理教室へ通ってみることにした。1レッスン16人。20代独身女性が半数を占めていた。先生も美人だ。これは期待。


「あら〜ん♡ 塩顔のお兄さんじゃな〜い♡」


 ペアの相手がエプロンぴちぴちのガチムチ生徒♂だった。


「お兄さんもお料理しちゃおうかしら〜ん♡」


 俺は出会いを諦めた。


 それから仕事に打ち込み、気づけば何の出会いもないまま社会人6年目。もうすぐ28になる。アラサーと呼ばれる歳になるが結婚はおろか彼女すらいない。


「はぁ……」


 こんなことなら2年付き合った大学の先輩と別れなければ良かった。まあ、今さら後悔しても遅いけど。


 そろそろ彼女のひとりでも作らないとヤバい気がする……。


 そう思う反面。会社帰りに寄り道するのも面倒だし、ひとりでいることに慣れてきちゃったりで結局いつものルーティーンに落ち着くことが普通になってきた俺、名雲優希なぐもゆうきと出会ったのは本格的な夏が間近に迫る7月中旬のことである。


 いつも通り仕事を終え、自宅のある最寄駅まで帰ってきた俺は行きつけの駅前スーパーへ向かう途中……


「あの、すみません」


 前を歩く彼女に声を掛けていた。


 言っておくが、ただの女子高生じゃない。肌は真っ白だし、サラサラの金髪はピンク色のメッシュが入り。スカートは中身が見えそうなほど短いし、手首にはシルバーのブレスレットが輝いている。


 そう、彼女はギャルだ。それもゴリゴリの白ギャルだ。


 身長は俺より20センチほど低い160センチ弱でスレンダーなモデル体型。派手な髪色と相まって人混みの中でもめちゃくちゃ目立つ。


 27年間生きてきて、まったく関わることのなかった相手にちゃんとコミュニケーションが取れるかどうか……。いささか不安はあるが、もう一度声を掛けてみる。


「あの、すみません」


「ふんっ」


 全然止まってくれない。めげずにもう一度声をかけてみる。


「あの」


「あーし、急いでるんで」


 ピシャリと言い切ったギャルの歩調が早まる。


「あっ、ちょっと!?」


 慌てて彼女の後を追う俺の手には『ピンク色のスマホ』が握られている。


「ったく」


 勘弁してくれ。を届けたいだけなのに、なんでこんなに苦労しなきゃならないんだよ。



 ことの始まりは約1分前――


 スーパーへ向かって歩道を歩いていたら、前を歩いていた女子高生のスカートのポケットからスマホが滑り落ちる瞬間を目撃した。

 

 本人は気づいていなさそうだったので、すぐにスマホを拾い上げ、普通に声をかけたつもりが、なぜか無視され振り返ってすらもらえなかった。


 そのまま駅前でギャルとの追いかけっこが始まってしまい……



「あのー」


 今に至るというわけだ。もちろん彼女の名前なんて知らないし、顔すらまともに見ていない。


「ちょっと待ってくださいって」


「やだ」


 やだ!?


「あーし、彼氏いるし。超ラブラブだし。なんかに興味ないし」


 あ、たぶんナンパだと思われてる。ていうか、いくらなんでもオッサンはないだろ……。


 自分で言うのもなんだが、顔は女子受けしそうな当たり障りのないあっさり系で、イケメンではないにしろ中の上ぐらいはあると思っていたし。なんなら元カノに、


「優希くんってさ、"脱いだらスゴい"よねっ♡」


 なんて言われてたから、男としてまあまあ自信があっただけにちょっとショックだ。


 まあ17、8歳の高校生からしたら、もうすぐ28になるサラリーマンなんてオッサンに思えるかもしれないけど、そこはせめて『お兄さん』でお願いしたい。


「いや、ナンパじゃないんですって」


「まさか!?」


 え?


「あーし、パパ活とかやんないし!! 見た目派手だけど全然ピュアだし!! 彼氏一筋だし!!」


「ちょっ!?」


 声がでかいって! 人通りも多いのにやめてくれ!


 俺は堪らずギャルの前に回り込む。


「あの!」


「オッサン、しつこいっつーの!!」


「これを渡したいだけですって! あなたの落とし物です!」


 俺は革のハンドストラップがついたピンク色のスマホをギャルに見せつける。


「ああ!! それ、あーしの!!」


 ギャルは俺の手からスマホをかっさらうと、すぐに画面をチェックし始める。コイツ、お礼もなしとは……。まあ、めちゃくちゃ可愛いから許すけど。


「スカートのポケットへしまおうとした際に誤って落としてしまったみたいです。幸い無傷だったみたいですけど、気をつけた方がいいですよ?」


 って、聞いてないし。まったく……。


「ちゃんとお渡ししましたからね? 俺はこれで失礼します」


 スマホを見るのに必死なギャルにそれだけ伝えて来た道を戻る。別に急いではいないのに周りの視線が気になって自然と早歩きになる。


 にしても、めちゃくちゃ美人だったな。顔面偏差値が高すぎて緊張するレベルだった。すごくいい匂いがしたし。


 本物のギャルと面と向かって話す機会なんて、これが最初で最後だろうな。いやまあ、さっきのを会話と呼んでいいのか――


「だああああああああああああッッ!?」


 うおうっ!?


 背後から聞こえてきた女性の大絶叫に俺は思わず立ち止まるのだった。

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