ひえっ!ストーカー!

皆さんはどの肉の部位が好きですか?私はザブトンです。何か甘い感じがして美味しい(小並感)



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気を取り直して夕華を加えた5人で改めて焼き肉に行くことに。


「そういえばどこの焼肉屋行きますか?」


「叙◯苑しかなくない?」


「いや、◯角でしょ」


「待て待て、今日の主役に決めてもらおうじゃないか」


バッと夕華と東雲さんの視線が猫水嬢に集まる。


「あ、えっと」


「ちなみに商品単価は気にしなくていい。私が払う」


「え、じゃあ……」


そう言って猫水嬢が選んだのは、都内の高級焼肉店だった。


「昔、両親と一緒に来たことがあったんです。すごい美味しかったのが思い出に残ってて」


「いいじゃん。行こうよ。すごい美味しそうだし」


「ちょっと待ってろ、今予約するから」


猫水嬢の希望を聞き、すぐに紫倉社長が店の予約を取った。


「よかったね水面ちゃん」


「はい!」


隣で猫水譲と東雲さんが喜び合う中、俺は夕華に話しかける。


「夕華」


「うん」


さすが相棒、俺の言わんとすることをすぐに理解してくれた。


「よし、予約取れたぞ」


「じゃあ早速向かおうか!」


「あ、朝霞さんは呼ばないんですか?」


「悠音は1日中会議で時間がないからな。仕方ない」


朝霞さんが可哀想だとも思ったが、今は猫水嬢を祝い、そして問題に対処することが優先だ。



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「んーっ!やっぱりここのザブトン、美味しいです!」


焼肉屋に行くと、天使がいた。


いや、美味しそうにザブトンを頬張る猫水嬢のことなのだが。


「すみませんザブトン追加で。猫水嬢、美味しい?」


「ふぁい!おいひいでふ」


「これは天使だね」


「ああ、前のパーティーで疎まれるのもわかるくらいのいい笑顔だ」


社長と東雲さんが俺と同じことを呟いた。


おっと、気を取られている場合ではない。いい焼肉屋に来ているのだから食べなければ損だ。


「あ、その牛タン取らないでよ、私が育ててたのに」


適当に目についた牛タンを皿に取ると、夕華が抗議の声をあげた。


「あ、ごめん。このカルビあげるから」


「わーい」


そういうときは適当に代わりの肉を与えるだけで許してもらえる。ちょろいものである。


「東雲さんは飲み物頼みますか?」


「あ、じゃあメロンソーダで」


「私は梅酒のお湯割りで」


「バカお前、昼から酒飲むんじゃないよ」


「えー…ならカシスソーダで…」


「私は烏龍茶にしよう」


「私もそれでお願いします!」


「えーっと、メロンソーダとカシスソーダ一つ、烏龍茶3つで」


店員さんに飲み物を頼むと、俺は席を立つ。


「あれ?どこ行くの?」


「トイレ」


そう言ってトイレのある出入り口に向かう。


目的地はトイレではない。


「やあ、白銀君。君も焼き肉?」


出入り口の影にコソコソと身を潜めていた白銀王子君だ。


「なっ…!来栖…さん…」


バレていないと思っていたのか露骨に動揺した様子を見せる。


「ここのお店は肉の質がとても良いよ。パーティーの皆で来たら?」


この男はクランの本部からここに来るまで、ずっと背後について回ってきていた。


それに気づいていたのは俺と夕華。目的が夕華関連であることは自明だったので、注視しつつ折を見て警告することにしていた。


「彼女は君のパーティーには入らないよ。潔く諦めて、コソコソ付け回すのを止めた方がいい」


「…いや、何を言っているのかいまいちよくわかりません。僕はただ美味しそうな焼肉屋の下見に来ただけで…」


すぐに取り繕うのはもはや才能だな。結婚詐欺師とかが天職何じゃなかろうか。


「君がそう言い張るならそうなのかも知れないが……もしパーティーのメンバーに危害を加えたら例えBランク最強格でも容赦はしない」


「……」


「それだけだよ、じゃあ俺はトイレに行ってくるから」


そう言ってまた出入り口から今度こそトイレに向かう。



「………もうパーティーメンバー気取りかよ……」



背後からちらっとそんな声が聞こえてきた。



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『黄昏の明星』メンバーの好きな焼肉の部位


来栖凛凪:シマチョウ(牛の大腸・ホルモンの一種) ガムみたいにずっと噛める


閃道夕華:牛タン(牛の舌) 安いし美味しいし薄いからたくさん食べられる!


紫倉綾音:ゲタ(中落ちカルビ) 肉の味わいが濃厚


朝霞悠音:シャトーブリアン(最高級のヒレ肉) 「綾音ちゃん?なんで私も連れて行ってくれなかったの?」


東雲真樹:枕(ソトモモの内側)赤身最高!


猫水水面:ザブトン(あばらに近い肩ロース)甘くて美味しい!

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