改めて、再会
「やほー、凛凪」
すべての試験が終わり、合格者が発表され、社長が記者会見を行っている頃。
俺は約束通り元バディである夕華と話していた。
「これから凛凪の家行ってもいい? またピザでも食べて遊ぼうよ」
「変わらないね。いいけど」
そうして二人で俺の家に行くことになった。
道中でも、夕華が俺の近況について聞いてくる。
「大学って何学んでるの?」
「一応メディア系かな。探索者やってた経験を活かして探索者の密着記事でも書こうと思ってたんだけど」
「そしたら私のことをインタビューしてたかもしれないね」
「それは勘弁してほしいかな。夕華が速すぎて追いつけないだろうし」
途中でコンビニに寄り、サラダやらデザートやらを買う。
「夕華、お酒飲むの?」
「うん、ビールとかはあんまし得意じゃないんだけどね。果実酒系は好きだよ。凛凪は?」
「俺はそもそもあんまり飲まないかな。コーラとかのほうが美味しい」
「まだまだ子供だなぁ」
「あんまり飲みすぎないでよ。何か夕華はお酒弱そう」
「そこんところはちゃんとコントロールできてるよ。パーティーの皆に絞られたし」
「もうやられたのね…」
「20歳の誕生日にお酒デビューした際にそれはもうこってりとね……うぅ…今思い出しても身震いが」
その後、バイト先でもあるピザ屋でピザを買った。店主のおっちゃんは始めこそ目を丸くしていたが、俺がプロクランに所属することを伝えると、
「ということは俺が凛凪のファン1号ってことだな? 店の宣伝は頼んだぞ」
「ファンって何か知ってる? 普通俺の宣伝するものじゃないの?」
「おじさんのピザは美味しいからね。半額にしてくれるなら配信でこのお店の名前出すよ?」
「まじか? さっすが嬢ちゃん。お礼にチーズの量を倍にしておくよ!」
「やったー!」
その後、二人で家に到着する。
「おお、高校の頃から何も変わってない…おっじゃましま〜す」
もはや慣れ親しんだ自分の家のように夕華が俺の家を歩き回る。
「夕華手洗え」
「は〜い」
二人で晩餐の準備をして、ピザを食べる。
「はい、じゃあ凛凪の合格を祝って、かんぱ〜い」
「かんぱ〜い」
俺がコーラ。夕華が果実酒の缶を持ってそれを打ち鳴らす。
「んんっ! ピザ美味しい! やっぱりあのお店のが一番美味しい!」
「美味いよな」
二人でピザを食べる。
「ん、そうだ、夕華が出てる動画でも見るか。先輩だし」
「おいぃ!? ちょっとまってよ!」
「えーっと、『ダンジョンに閃光が走った日』、『閃道夕華の名場面20選』…よし、これを見よう」
スマホからテレビに動画をキャストする。
「おぉー、こんなダンジョン行ったんだ」
「うぅ…ちょっと恥ずかしい」
コーラを飲みながら夕華のダンジョン攻略を視聴していく。
「あれ? ここって学生の時も一回入らなかったっけ?」
「ああうん。そこのフロアボスの素材を新しい装備に付けられそうみたいな話になって。私が行ったことあるよって言ったら道案内みたいな感じで行くことになっちゃったんだ」
「へー懐かしい」
「ね、ねえ、そんなにじっくりと見るの止めない? こっちとしてはすごい恥ずかしいんだけど」
「まあまあ、これも後輩のためだと思って」
「うううーー! 公開処刑だよこれ…!」
顔を赤くして涙目のまま俺の服の裾を掴んでいるが、無視して動画を見続ける。
「おー、かっこいいー。やっぱり動き良くなってるな」
「お、お酒の力でなんとか耐えば…」
俺が称賛の声を上げると、夕華が羞恥心を堪えるために酒を飲む。
そうして一本の配信アーカイブが見終わる頃には、隣にぐでんぐでんの酔っぱらいが1名、出来上がっていた。
「うぇへへへ〜、逃さないぞ〜」
「うわ、すごいだるい絡みしてくるね。足が絡み付いてるんだけど」
「りんなぁ〜…」
「おい! ちょっ、登ってくるなぁあああ!!」
腰から這い上がってきた夕華が、ついに俺を押し倒した。
お互いの鼻が触れ合うくらいの距離まで顔が近づく。
「りんなはぁ、わたしがせかいいちになれるとおもう?」
至近距離でそんなことを聞いてきた。
「え…まあ思うけど」
「んふふふふ……そっかそっか……んふふふふふ」
顔を擦り付けて笑いを浮かべる。
酔っ払いの情緒はわからん…
「ほら、離れて。水飲め水」
俺がコップに入った水を渡す。
「のませて〜…」
「はいはい」
彼女の口にコップを当てて傾けると、俺に寄りかかったままコクリコクリと水を飲み干した。
「ねむい……」
「ん、寝な。連れてってあげるから」
「ぅん……」
大人しく夕華は規則正しい寝息を立てて眠りについた。
「はぁ……世話の焼けるやつ…」
俺は折りたたみ式のベッドを軽く整えると、夕華を運んでそこで寝させた。
「俺は…ソファで寝るか」
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