元学生探索者日本一バディの片割れ、プロ入りした元相棒に誘われもう一度、今度は世界一を目指す
梢 葉月
日本一の高校生バディ
20××年。人々が世界各地に点在するダンジョンと共生する世界の日本という島国で、一つの大会が行われた。
第××回全国学生探索者選手権。全国から選ばれた選りすぐりの学生探索者が一同に介したこの大会で、全部門優勝という前人未到の結果を残したのは、一組のバディ。
ある者には尊敬を。ある者には畏怖を。ある者には嫉妬の視線を向けられながら全ての賞状を両手に抱えた少年と少女は、悠々と会場を後にした。
一度別れた後、賞状を片付けて二人がよく過ごした河川敷に寝転がりながら、二人はこの大会を振り返っていた。
「いやー、なんとかなっちゃったね。最後の大会だったから『全部門制覇』っていう無理難題を目標にしちゃったのに」
「後世ですごい貶されそうだけどな。……特にハントの個人戦じみた動きとか」
「あれはむしろ私達が二人だったからできた戦略だよ。卑怯って言われても4対1の人数差で勝てないのが悪いよ」
「まあそうなんだけどね…ほら、もう既に賛否両論だ」
少年がスマホからSNSの大会に対する反応を少女に見せる。
「うわっ、君めっちゃアンチ来てるじゃん。なんで?」
「君は顔がいいからネット民から人気なんだよ。俺はまあ、その美人の隣にいるよくわからんイケメンでもない男。つまりほら、ネット民の敵」
「よくわからないなー…だって君も結構イケメンじゃない?」
「この程度の顔なぞどこにでもおるわ。高校3年を通して告白の1つもされたこと無い経験がそれを証明してる」
「……それなら、さ」
少女が起き上がって寝転んだ少年の顔を覗き込む。
「私がもらってあげようか? 君のこと」
「……冗談はやめろ、そしてもっと自分を大切にしなさい。俺以上の男なんていくらでもいるんだから」
「むー…」
「まあこんな美人と3年間
「……ふふ、私も。君みたいな素敵な男の子と3年間闘えて本当に楽しかったよ。これからもよろしくね」
少年の言葉に、少女も微笑んで礼を返した。
「…ああ、俺はもうこの界隈から離れるけど、友人として君の活躍を祈ってるから。これからも頑張れ」
「…え?」
「…ん?」
少年の言葉に、また少女の顔が険しくなる。
「ん? 俺なんか変なこと言った? 君は卒業したらクランに入ってプロのダンジョン配信者になるんだよね? 何個か勧誘も来てるって聞いた」
「え、うん。だから君が行くクランに合わせようかなって」
「いや? 俺は勧誘一個も来てないけど?」
「…?」
「いや、宇宙猫みたいな顔しないでも」
「いやいやいや。日本一の探索者だよ? なんで? 誰も? 勧誘をかけないの!?」
「さあ…? まあ元々進学予定だったから別にいいんだけどさ」
「わ、た、し、が! 良くない!」
「なんで?」
「このまま二人でプロ入りすると思ってたから! 人生設計もそれ前提で話進めてたから!」
「作り直せ」
「ご無体な!」
少年が放つ無慈悲な一言に弾き飛ばされるように、少女もまた芝生の上に寝転がる。
「えー! やだやだ! ぜったいきみとプロになるー!」
「子供か! 俺だって探索は楽しいしこれからも続けるさ。でも稼業としてやっていくにはあまりにも安定しないんだよ」
「いやーーー!!!」
バタバタと駄々をこねて少女は弁明を受け入れない。
「というわけで俺は大学に行く。じゃあな!」
埒が明かないと思った少年は頭を冷やしてもらうために河川敷の向こう側に跳んだ。
「あっ、逃げるな卑怯者! 君は私とプロの探索者になるんだー!」
「口を慎め無礼者! 俺は堅実に生きたいんだよ!」
「逃げるなあああああああ!! いたいけな少女の初めてを奪った責任から逃げるなあああああ!!!」
そう言い放つと、少女は魔法陣を展開し雷を降らせる。
「おいその言い方は誤解を招くだろ! やめろよ!」
少年はそれを躱しながら腰に装備した銃を抜き、魔力を込めた弾丸を発砲する。
放たれた弾丸は空中で魔力の障壁として展開し、攻撃を防いだ。
「グッバイ、JOJ◯〜!!」
「DI◯〜ッ!!!」
某有名異能力漫画の真似をしながら、少年は対岸の人混みに消えていった。
かくして、日本一の二人は一度別々の道を歩むことになる。
片方は大学生。もう片方はプロのダンジョン配信者として。
しかしながら二人の道は数年後にはまた合流する。
今度は、日本一を超えた、世界一の探索者を目指すために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます