銀河帝国軍第十三艦隊
惑星シスキアの軌道上には、銀河帝国軍第十三艦隊の主要戦力が集結している。
随所に帝国軍のイメージカラーである赤の塗装が施された白銀色の船体をした艦艇が数十隻。
これらの艦艇を纏め上げる艦隊旗艦を勤めている、ゲルマニクス級宇宙戦艦ヴァリアントの会議室には艦隊運用を司る高級士官達が集まっている。
「いよいよ我等も戦いに加わる! この瞬間を待ちに待ったぞ!」
そう言って意気揚々としているのは、長く豊かな銀髪に赤い瞳をした若い女性士官。
彼女の名はパリア・マルキアナ。帝国軍准将の地位にあり、第十三艦隊第二戦隊司令官を務めている人物だ。
ふっくらとした胸に明るい印象を与える美貌を持つパリアは多くの将兵から羨望の眼差しを集めている。
そんな彼女に続き諸将は喜びの声を上げる。
多くの提督達が次期皇帝に名乗りを上げて、覇を競い争う中、これまで静観の姿勢を貫いてきたルクスに不満を持つ将兵は少なくなったのだ。
諸将が士気を高め合う中、会議室にルクスが姿を現した。
そして彼の後ろには、彼に仕える奴隷少年フルウィもいる。
「混迷を極める銀河に、我が第十三艦隊の勇名を轟かせる時が来た。諸君等の努力と忍耐が帝国を救うのだ。感謝する。……アルセナート伯爵、あなたにも感謝せねばな」
ルクスは会議室の末席に座る黒衣の女性に視線を向ける。
所々白髪が目立つ濃いめの灰色の髪をした五十代半ばくらいの彼女の名はベファーナ・アルセナート伯爵。
バルカニア星域の有力者の一人で、幾つもの惑星を領有している帝国貴族。
軍艦を建造する造船所の経営にも携わっており、現在ではルクスと盟約を結び、第十三艦隊の艦艇を多く建造している。
「貴公の造船所で先日、最後の艦艇が完成した。これで我が艦隊の戦力は最大限にまで高まっている」
「勿体なきお言葉。閣下のためとあらば、いつでもお力になりますわ、提督」
「結構。諸君、我々はここにいるアルセナート伯爵の協力により多くの艦艇、そして多くの志願兵を獲得した。この戦力を以て地方軍閥化した各帝国艦隊を殲滅する」
「それでまずはどこの艦隊から叩きますか?」
幕僚の一人が問うと、ルクスは「クリスメル提督の第四十艦隊だ」と短く答える。
しかし、その回答に多くの幕僚が顔に不安の色を浮かべた。
クリスメル提督は、現在帝国内での最大軍閥と言われるユリアヌス大提督の派閥に属しているからだ。
ユリアヌス大提督は、この銀河系で元老院から皇帝の承認を得た唯一の人物であり、名実ともに銀河系の覇者としての地位を固めつつあった。
クリスメル提督を敵に回すという事は、そのユリアヌス大提督を敵に回すのと同じ事で、それに不安を抱く者がいるのは無理も無いだろう。
「皆、さっきの威勢はどうした? 何をそんなに弱気になっているんだ? セウェルスターク提督が玉座を狙うとなれば、いずれはユリアヌスも我々の敵となるのは目に見えている。先に倒すか後に倒すかだけの違いだろう!」
パリアは臆する様子もなく啖呵を切る。
「そうだ! 権力欲に取り付かれ、銀河中をめちゃくちゃにした連中に、その報いを与えてやろうじゃないか!」
「セウェルスターク提督に掛かれば、ユリアヌスなど何も恐れる必要は無い!」
「この時代を我等の手を終わらせてやる!」
パリアの言葉を受けて、幕僚達は一気に戦意を高める。
「提督のために戦おう!」
幕僚の一人がそう叫ぶと、ルクスは即座に「我等が団結して戦うのは、帝国のためだ」と訂正する。
「諸君の力と団結は、必ずや銀河に秩序と平和をもたらすだろう。皆の尽力に期待する」
ルクスはこれまで諸提督達が内戦を展開する中もただ静観していたわけではない。
アルセナート伯爵に艦艇の増強を依頼するだけでなく、第十三艦隊が管轄している軍管区を自身の勢力基盤とすべく活動を続けていた。
現に良好な治安が維持されているバルカニア星域には、多くの物と富が集まり、第十三艦隊は豊富な資金源と強力な支援団体を得るに至っている。
ルクスの優れた指導力と緻密な計画により、第十三艦隊は単なる武装勢力ではなく、一つの国家と言えるほどの組織力を有しているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます