【改稿】神に選ばれしモブは世界を救わない〜チート能力者だけど世界を救うとか無理なんでモブに徹します〜
高井真悠
第1話 神に選ばれしモブ
以前書いていた物を大幅に変更して書き直してます。むしろ別物レベル…!
拙い作品ではありますが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
※※ ※※ ※※ ※※ ※※ ※※ ※※ ※※
「はぁ〜、いよいよ今日でこの
耳に届くのは可愛い少女の声なのに、言い回しが妙にオッサンくさいのは、オッサンな俺、
一時期は同接2000万人突破!という偉業を成し遂げた世界的MMORPG『創聖のアーステラ』だったが、それも今日の0時に終わりを迎える。理由は幾つかあるが、開発陣が入れ替えられた影響で質の悪いクエストやダンジョンが実装されたことと、他の海外産MMORPGが破竹の勢いで人気を博し、プレイヤーがごっそりとそちらへ流れたからだ。
例に漏れず俺もプレイしているが、1日の最後はやっぱりココへ戻ってきてしまう。ネットでも
「はぁ…明日からどうしたらいいんだよ…」
アーステラ内でもほんの一握りのプレイヤーしか立ち入れない『神の庭』は、こんな時でも神秘的な光に満ちて優しい風が吹いている。色とりどりの草花が咲き乱れ、希少な動物達が穏やかに過ごし、眼下にはアーステラの大地が広がっているこの場所は俺が一番気に入っている場所だ。
最高難易度ダンジョン『神の庭』を踏破したものだけがこの景色を楽しめるのだが、開発陣の入れ替え後に実装されたもので、プレイヤーの大半は最初のボスで心を折られてしまう者も少なくなかった。
別名が『引退の庭』なのは推して知るべし。
開発陣が変わろうとも、オープン当初からプレイし続けてきた最古参プレイヤーな俺は実装されたクエストやダンジョンは一通り踏破してきた。ココを踏破した時はマジで泣いたよね。何せ、上司や同僚に白い目で見られながら連休と有休を繋げて10日かけて踏破したんだからな。一度踏破した者はこの場所に自由に入れるから、それ以来ここでのんびり過ごすのが俺の日課だったってワケ。
「そういや、この場所って本物の女神が現れるらしいって噂になってたんだよな。ま、毎日ココにいる俺は一度も見てないし嘘だったワケだが…一目でいいから見てみたかったぞ」
その場にゴロンと寝転がって最期の時を待つ。
慣れないうちは歩くのも大変だったな…
最初はスライムを倒すのにも苦労したっけ…
そんな風に、今までの事を思い返している内にいよいよ終わりを告げるカウントダウンが始まった。寝転んだ俺の視界には上空から巨大な隕石が落ちてくるのが見えている。
『この世界は隕石によって滅亡します』
って、開発陣が出演したゲームショーのステージで発表された時は人目を気にせずに叫んだなぁ。周りも似たようなものだったが、あの時は何の冗談かと思ったよ。このゲームは特殊信号で脳に直接アクセスする機器を使うから未成年は利用不可だったんだが…まぁ、そんなのはどうとでも誤魔化せてしまうのが世の中だ。その結果、機器を取り外しても目覚めなくなった未成年者が出て一気にゲーム批判に繋がってしまった。そして、この世界は終焉を迎える事となったんだ。
それが今、俺の目の前で起きている。
「この隕石が堕ちたら終わり…か。いっそこのまま異世界に転生出来ないかな〜なんてね」
物語のモブみたいに、特に目立つ事もなく空気のように過ごしてきた俺が唯一輝けたのはこの場所だけだった。生来のコミュ障でフレンドとは無縁だったが、トッププレイヤーとしてそれなりに名前は知られている。
「ま、そんなのは物語の中だけだよな。はー、マジで明日からどうしよう。この先同じ熱量でやれるゲームなんて出てくるのかねぇ?」
明日からどうしようか…そんな事を考えている間にも、空の隕石はどんどん大きくなっていく。
「…今更だけど、結構怖いなこれ。さすが没入型MMORPGってか」
迫ってくる隕石はなかなかリアルで、頬に当たる風がほんのりと熱く感じる。しかも空に近い場所で寝転がって見てるから迫力は半端ないのだ。今更だけど何で最後の場所にココを選んじゃったかな、俺。
「…怖いからちょっと移動しよう」
よいしょと立ち上がって前を向くと、何か違和感を感じた。なんだろう…?
「あっ、あれ?!『女神の宮殿』への入り口が開いてる!!!」
『神の庭』には、このアーステラの創世神である女神が住む宮殿がある。このゲームが続いてたら、たぶん宮殿の中へ入る事も出来たのだろうが残念ながら実装はされなかった。なので、宮殿の入り口は固く閉ざされ入ることは出来なかったのだが…何故か扉が開いていたのだ。
「うん、毎日来てるから見間違いじゃない。この扉は開いてなかったはずだぞ」
何で今になってこの扉が開いたんだ??
終了時刻も迫っているが、入れなかった場所が開いてるなら入ってみたくなるのがヒトってもんだ。
「そんじゃ、最後はこの中で過ごす事にしようかね」
そうして、俺は宮殿の中に足を踏み入れたのだった。
* * * * * * *
「うほぉ〜!!!こりゃすげぇ!!!!」
宮殿内は柱も床も全てがクリスタルで出来ていた。とにかく綺麗で豪華で…語彙力がなさ過ぎてなんて表現したら良いのかわからないくらいスゴイ!すごくすごい!!!
「なんだよ〜〜〜!!!こんなスゴイの隠してたのかよ!!!ほんとに…なんで終わっちゃうんだよぉぉぉぉ!!!!」
もう、思わず叫んだのは仕方ないよな。こんなスゴイ場所があるなら、もっと早く出してたらもっとこのゲームも続けられたかもしれないのに…悔しい…悔しいよ…
もっと静かに最後を迎えるつもりだったのに、今になっていろんな感情が溢れてきた。アバターは涙を流さないんだが、涙で頬が濡れているのが分かる。
ズズッと鼻をすすると、宮殿内をゆっくりと進んだ。
「流石にNPCは配置されてないんだな」
宮殿内には人っ子ひとりいない。まぁ、中身だけは作られてたんだろう。扉が開いたのはバグかな?
なんてボンヤリ考えながら玉座みたいなのがある大きな部屋へ足を踏み入れた時だった。
『ようこそ、我が宮殿へ』
響くような女性の声が聞こえて、慌てて振り返る。すると、そこには神話の女神様みたいな少女が腰に手を当てて立っていた。あれ、この子どこから現れたんだ?
ポカンとしつつ、少女をじっくりと眺める。やたらヒラヒラした服で、昔の宗教画に描かれた女神様みたいだ。裾とか肩から垂れる謎の布とかは風もないのにフワフワとしてるし、女の子自体も若干浮いてるし。こんなNPCいたかな?プレイヤーでもなさそうだけど…
そんな風に考えながらじっくり観察していると、少女が若干居心地悪そうに呟いた。
『…あの、続けて良いかしら?』
「あっ、どうぞ」
しまった、コミュニケーション型NPCだったのか。
アーステラにはプレイヤーだけでなく、ノンプレイヤーキャラ…つまり中身が本物の人じゃないキャラクター達がいる。これらを纏めてNPCと呼ぶんだが、特殊なAIによって本物の人と同じようなコミュニケーションを可能にした『コミュニケーション型NPC』というのがいる。
まぁ、分かりやすく言えば空気の読めるか読めないかの違いかな?
『えぇと、物部タロウさん。年齢は35歳で彼女はナシ…というか、恋愛には興味ナシなの?!信じられない!』
「…は????」
ゲーム内のキャラが、何故か俺の個人情報をペラペラと喋っている…
「いやいやいや、おかしいだろ?!今の俺は『アーシェラッド』だよな?!何で本名を…しかも何で恋愛の事まで知ってるんだよ!おかしいだろ!!!」
本名と生年月日は登録の時に入力したが、通常ならゲーム内キャラが個人情報を話すなんてあり得ない。ましてや、誰にも話してない俺の恋愛観なんて…おいおい開発陣は何してんだよ!!!!
『アタシは惑星『アーステラ』の女神よ。貴方達風に言えば異世界の女神ってこと』
「…惑星アーステラとか設定にあったか?いやそれよりも、異世界って…えっ?」
『
小中高と常に平均的な成績で、友人は居るけど親友はなし。
趣味はモノ作りと読書とオンラインゲーム。
特に好きなゲームは『創聖のアーステラ』で、トッププレイヤーとして名前が知られている。
サービス終了をゲーム内で迎えようとしていた』
こいつは…何を言ってるんだ?
『どう?合ってるかしら』
ポカンとするしか出来ない俺の前で、少女のNPCは得意げにしている。
『喜びなさい!アナタを私の世界に転生させてあげるわ!』
「はぁぁぁぁ???????」
突然のことに叫んだ俺は間違ってない…よな?
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