第4話 愚痴を聞いて
アスーナはついさっき起こったことを全て話した。カリブラと妹のソルティアが仲良くなったという理由で婚約破棄を受け入れるように要求されたこと。そして、それに対して不満はないどころか喜んで応じたことも。
「……カリブラ様には以前からというか婚約した時から困っていたので、私じゃなくてソルティアと婚約してくれるならそれでいいと思ったんです。あの二人には本当に苦労ばかりさせられて……」
「婚約破棄されて嬉しい令嬢になるなんて君も苦労してきたんだね。嘘を言ってるようには見えないし、カリブラと君の妹の悪評なら俺の耳にも入ってるし、そもそもカリブラの行動は誰が見ても目に余る物がある。君が婚約破棄されて喜ぶのも当然といえば当然か」
ハラドは興味本位で話を聞いていただけだったが、いつの間にか真面目な顔で聞いていた。そして、少し考えてアスーナに質問を始めた。
「気分がいいことじゃないだろうけど、カリブラに何をされたか聞いてもいいかな? それと妹のことも聞いても?」
「ええ、構いません。むしろあの二人のことを聞いてくださるなら返って気分がいいです。ただ、愚痴を聞いてくださることになりますが?」
「愚痴は誰かに聞かせるものだろう? 君の気が済むまで聞かせてくれ」
アスーナにとっては都合がいいことだ。婚約者……元婚約者と妹の愚痴を聞いてくれるというのだから、願ってもないことなのだから。
◇
アスーナはカリブラにされてきた悪戯やドッキリ、押し付けられた学園の課題に金銭のトラブル。そして、妹のソルティアに物を奪われてきたことや我儘の数々。
「……カリブラも君の妹もひどすぎるな。学園で耳にした以上だよ」
ハラドは不快そうに顔を歪める。ハラドもカリブラとソルティアの悪評は聞いてはいたが、アスーナの話を聞いて噂以上に性格が悪いのだと確信した。
「カリブラには上級貴族としても紳士としても間違っている。イタズラにドッキリなんて幼い子供のやることじゃないか。自分の課題や金銭問題を君に押し付けるなんて無責任だ。イタズラの内容も何だよ……勝手に君の髪を切ったり、君の鞄を漁ったり、他の女の子と遊んだり、君や親の仕事の邪魔したり……どうしようもなさすぎだ」
「そうなんですよ。本当に辛かったです……」
「君の妹、ソルティアも平民や男爵令嬢にきつく当たると聞くが、姉の君や父親にも我儘を言いたい放題だけでなく無断で君の物を取り上げたりとは厄介だね。姉のいない間にドレスや宝石を勝手に持ち出して自分の物だと言って自慢して、勝手に売り払うだなんて。報連相もなってないな。もう子供でいられないだろうに」
「お恥ずかしい限りです。最初の頃に甘やかしたのが悪かったのですね……」
「それも遠因かもしれないけど成長しない本人が一番悪い。むしろ君はよく頑張ったもんだよ。本当に苦労してたんだね……」
「…………!」
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