第2話 喜んで受け入れます
そんなカリブラとソルティアの思惑を理解したアスーナは、ニヤニヤする二人に向かって自分にとっても彼らにとっても最適な答えを口にした。
「分かりました。喜んで婚約を破棄を受け入れさせていただきます」
当たり障りのない笑顔で。
「「え?」」
「どうぞ、ご自由に。この件に関しては私の方でお父様に伝えますので、お二人でお楽しみに」
予想外の答えが帰ってきたのか、アスーナの言葉を聞いたカリブラとソルティアも呆然と固まった。その間にアスーナは少し機嫌が良さそうに離れていった。
◇
「はぁ~、やっとあの男から開放されたわ~。今回だけはソルティアには感謝しかないわね」
上機嫌に一人で歩いていくアスーナは父を探す。パーティー会場は広いため、別行動している父を探すのも少し手間があった。
「まさか、カリブラ様とソルティアがくっつくなんて……いや、有り得る話か。あの二人は我儘で自分勝手だからね。特にカリブラ様は本当にひどかった……」
カリブラと婚約していたアスーナにはカリブラに対する愛情は一切ない。というのも、カリブラの性格は意地の悪い子供をそのまま大きくしたようなもので、度々近しい人にイタズラやドッキリをする等して面倒だったのだ。侯爵令息という立場を誇ってか、世界の中心に自分がいると思いこんでいる節があるのだ。そんなカリブラが婚約者であることにアスーナは苦痛を感じていた。
「ソルティアも相当我儘だし、私の代わりに嫁入りしてくれて助かるわ。あの子にも苦労させられたわけだし……」
ソルティアは今は亡き母に似た顔立ちと同じ髪の色のため、父に大変可愛がられ、姉であるアスーナも可愛い妹として最初の頃は甘やかした。だが、その最初がいけなかったのか、ソルティアは今でも我儘で人のものを欲しがるような娘になってしまったのだ。特に姉のアスーナのものを欲しがるような傾向が強く出るようで、アスーナは困ることが多くなっていた。
「もしかしたら、カリブラ様とくっついたのも私のものを……だとしたらすぐに飽きるのかしら? 今度は長続きしてほしいわね……」
皮肉っぽい笑みを浮かべながらアスーナは父親を探す。記憶が正しければ友人の貴族と話をしているはずだ。大事な話らしいがもう終わる頃だろうとアスーナが思っている時、彼女に一人の男性が声をかけてきた。
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