ドッキリで婚約破棄を宣言するようなクズ男はいりませんので我儘な妹とお幸せに! 〜後から後悔してももう遅いので寄って来ないで!〜

mimiaizu

第1話 始まりの婚約破棄

タースグバ王国。国の規模も大きくもなければ小さくもないという中堅国家。比較的平和で隣国との関係も良好な豊かな王国だ。そんな国でも馬鹿な貴族はいる。いや、絶対に出てきてしまうのだ。



それも、いい年して『ドッキリ』を楽しむような上級貴族の令息がいた。それは伯爵令嬢アスーナ・ブラアランの婚約者であるカリブラ・ゲムデス侯爵令息だ。



カリブラは上級貴族の令息でありながら、我儘で自分勝手でどうしようもない男だった。世界の中心に自分がいるというような考え方で、自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男。ハッキリ言って大きな子供という表現が当てはまるくらいだ。マゼンダの髪に黒い瞳の美男子だが、人格の問題から関係者に苦労をかけている。特に婚約者のアスーナがいい例だ。



伯爵令嬢アスーナ・ブラアランは、赤みのある黒髪のショートヘアに桃色の瞳の美少女。美少女といっても、例えるならば「可愛い」と「綺麗」の中間にいるような感じで、それなりに男女ともに人気がある。性格面でも「姉」という立場からか面倒見がいいため友人も多い。そんな性格が災いしてか、婚約者のカリブラに良くも悪くも絡まれることが多い。婚約が苦痛に感じることも多く、もはや嫌気すら感じていた。



そんな二人の婚約は、カリブラとアスーナの妹によるドッキリで終わることとなるのだ。





「アスーナ、君との婚約を破棄させてくれ」


「……今なんと?」



とあるパーティー会場にて、婚約者カリブラ・ゲムデス侯爵令息に呼び出された伯爵令嬢アスーナ・ブラアランは耳を疑った。彼女の顔に困惑の色が広がる。



「聞こえなかったのかな? 僕は君との婚約を破棄すると言ったんだ。そして、僕は君の妹と婚約するつもりでいるんだ」


「ええ!?」



だが、カリブラは更に驚くべき言葉を口にした。婚約破棄するとともにアスーナの妹と婚約すると口にしたのだ。



「そういうことなのよね~」


「ソルティア!?」



妹と婚約すると聞いて驚きの声を上げるアスーナの前に、青色の軽いウェーブのかかった長い髪と同じ色の瞳の少女が現れる。彼女の妹ソルティア・ブラアランだ。


そして、ソルティアはニヤニヤしながらカリブラの腕にしがみついた。



「実はわたくしとカリブラ様は愛し合っていますの。お姉様には悪いと思っているのですけどね~」


「ぶっちゃけ、君よりも彼女と仲良くなっちゃったんだ。これでもう分かるだろ?」


「……」



つまり、カリブラは妹のソルティアと婚約したいからアスーナとの婚約を破棄したいというわけだ。

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