元魔王だけど、勇者になってみた。

@sugimotorikera

第1話 勇者カイザー誕生


「それでは、勇者カイザーよ。この剣を引き抜き給え」神官は言った。


 カイザーは光を浴びて輝く剣に手をかけた。

 明らかに、カイザー自身のステータスがさがる。


“パワー、スピード、魔力、すべて下がります。警告します、この装備は呪いです。スキル覇王、威圧、その他もろもろのスキルを失います”

 エキドナに忠告された。

 カイザーはその忠告を無視する、わかっていたことだ。込み上げる吐き気、鈍痛をこらえながら剣を引き抜く。


 周囲から拍手が沸き起こる。その声にカイザーはばれないように顔をしかめる。彼らに悪気はない、いまここに誕生した勇者を祝福しているのだ。


 カイザーはふらつく。

 予想以上に体に力が入らない。


 近くの巫女が支えてくれる。巫女に触れられた部分に痛みを感じる。巫女の聖なる力はこの体には毒なのだ。

 ただし、カイザーはそんな表情はおくびにもださない。巫女ににっこり微笑む。

「巫女様すみません、大丈夫ですので手を放してください」

「しかし……」巫女は手を放そうとしない。


 カイザーは力強く立ち上がった。巫女に体の万全を知らせるように。

 内心では“さっさと離れないと私のHPがなくなる”そう思っていた。

 巫女は名残惜しそうに手を放した。巫女の人生で勇者に触れられることなどもうないかもしれない。しかもイケメン。


「それでは勇者カイザーよ。そなたの旅の無事を祈る。グッドラック!」神官長はそういった。

 カイザーは残った力を振り絞って、勇者の剣を掲げた。


 これが勇者カイザーの誕生だった。


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