くもくも いとちゃん
@kiriko_san
第1話 春の朝
いとちゃんの朝は、カーテンのすきまから差し込んでくる朝の光から始まります。春の柔らかくてあたたかい光がキラキラキラ…とお部屋に入ってきて、いとちゃんのまぁるいお顔にも届きました。布団の中で、6本のうでをグーッと思いっきり伸ばして、2本のあしもピーンと伸ばして「ふぁ〜」とあくびを1つ。まだ眠いけど、お気に入りのタオルを手に持って、リビングに向かいます。
リビングのテーブルの上には、お母さんが準備してくれたトーストとミルクの朝ごはんが置いてあります。お母さんが「おはよう」と言ってくれましたが、まだぼんやりしていたので「…(おはよう)」と心の中でお返事をしました。
朝ごはんを食べながら、テレビから流れてくる天気予報の情報をキャッチします。くもにとって、天気はとても気になる物事のひとつなのです。みんなもそうですよね?天気予報によると、今日は晴れのち曇り。雨は降らなさそう。朝ごはんをしっかり食べたら、学校に行く準備をします。
いとちゃんは玄関に向かって階段を登っていきます。家の中は深い穴のようになっていて、玄関は一番上の階にあるのです。ノートや鉛筆が入ったかばんを、フックから取って肩にかけたら出発です。
「行ってきまーす!」下の階に向かって大きな声言うと、「気をつけてね!」とリビングからお母さんの返事が返ってきました。
さて、くもの子供のいとちゃんは、どうやって学校に行くのでしょう?歩く?走る?乗り物にのる?
いとちゃんは庭にある小さい山のような形の岩に立つと、腰のあたりからキラキラ光る糸の束を
〝にゅう〜〟
っと出しました。春風がそよそよ吹いて、長い糸の束がふわ〜っと広がり、たゆたっています。しばらくすると、糸が風をつかまえて…
〝ふわりっ〟
いとちゃんの体が浮き上がりました。風を上手につかまえながら、すーーっと高い所まで上昇します。空の上からは、いとちゃんが暮らす88森を見下ろすことができます。遠くの方はには、たくさんの山々が続いています。木々にはつやのある葉がたくさん茂り、色あざやかな花が咲いている木もあります。
「あー、いい眺め」
学校は88森のちょうど真ん中くらいにあります。少し先に学校が見えてきました。その時突然、びゅううっ、と強い風が吹き、木々の葉っぱや花びらと一緒に、いとちゃんも飛ばされてしまいました。さあたいへん!
「わぁ〜〜っ」
どこまでも飛ばされていっちゃいそうかと思いきや、糸の束が木の枝の先に引っかかりました。命づなのように糸が枝からぶら下がって、いとちゃんの体はぶらーん、ぶらーんと揺れていました。地面に落っこちずにすみました。
しばらくして、地面に足が届くように糸を少しずつ伸ばすと、ぷつんっ、と糸を切って着地しました。
「ここからは歩いて行こう」
そんなに遠くには飛ばされなかったので、学校まで88森の中を歩いていくことにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます