第4話 魅了魔法


 豪華な部屋に入ると、何人もの女の人たちが迎えてくれた。

 どうやら先に走って行った男性が、伝えてくれていたらしい。


 その女の人たちにジェイデン様は「身なりを整えてやってくれ。丁重に扱うのだぞ」と言いつけ、私は女の人達に奥の部屋に連れて行かれ……!


「ちょっ!? 自分で出来ますから! ひゃわっ、まっ……」

「そう言う訳には行きません! 私達はこれが仕事です!」


 私はお風呂場で、女の人達にマッサージをされ身体をピカピカに磨かれている……。まっ裸でね!

 正直、日本人であった記憶がある今の私には、ただの辱めでしかない。


「うう……本当に恥ずかしい。」


 声に出てしまっていた私の言葉に女の人達は言う。


「何が恥ずかしいのですか? この陶器のようにきめ細かく白い肌、大きく形の良いお胸、引き締まった腰すべて美しいです」


 ウットリしながら私の体について話す


 もうやめて? その誉め殺しが恥ずかしいんです……!


 ピカピカに磨かれた私は、綺麗なドレスを着せられやっと解放された。


「何を着ても美しいなアリスティア。急だったので、こんなドレスしか用意出来なくてすまない。明日はアリスティアに似合うドレスを作って貰おうね?」


 今着てるこのドレスは、侯爵令嬢だった時でさえ着たこともないレベルです……!


 竜王様! 価値観が既におかしい


「あの……ジェイデン様。私は命を助けて貰っただけでも感謝しきれないのに、更にこの様にしてもらい。私は何をジェイデン様に返したら言いのですか?」

「アリスティア、俺は何もいらないよ。俺の側にアリスティアが居るだけで幸せなんだ」


 ジェイデン様は話しながら優しく私の頭を撫でる。


「俺はね? 今まで番の存在を知らずに生きてきた。番と言う存在がこんなにも俺の心を占領するなんて知らない感情だった。それがこんなに心地良いなんて……! アリスティアが教えてくれたんだよ?』


 うう……ジェイデン様。

 セリフがカッコ良過ぎです! 嬉しくて胸が苦しいです。


「ふふ。そう緊張せずとも、ソファーに座ってこれからの事を決めようか」


 ジェイデン様に促されソファーに座ると、執事のルミエールさんが紅茶を淹れて持ってきてくれた。


「あの、アリスティア様、宜しいですか? 何故貴方様の様な貴族の女性が森に居たのですか?」


 執事のルミエールさんが不思議そうに聞いてきた。私はジェイデン様に話した様に思いの丈を伝えた。


「何と!!……あり得ない。魅了魔法を使ったとしか考えれないですね」

「やはりそう思うか? 俺も同じことを考えていた」


 ——え? 魅了魔法?


 このゲーム、そんな魔法あった?


 やはりゲームの世界と現実世界は違うの?

 自分の顔が真っ青になって行くのがわかる……。


「アリスティア、大丈夫だから! そんな顔しないでおくれ?」


 どうやら私は、不安で倒れそうになっていたらしい。 


「落ち着いて良く聞いてね? アリスティアを陥れたその女は、魅了魔法を使ってアリスティアの周りの人達を操っていたんだと思う」

「操って?」

「そうだ!」

「周りの態度が急変し過ぎだ。思い当たる節はない?」


 ———!!!


 言われてみれば、思い当たる節がありすぎる。

 だって……私は皆との関係は悪く無かったように思う。

 弟のロイだって私の事を慕ってくれていたはずなのに、急に汚物を見る様な目で私を見てくる様になって……。悲しかった。


 レイモンド皇子とだって、愛し合う事はなかったけれどお互いを敬い尊重しあえる親友のような関係だったと思う……。


「アリスティア? 思い当たる節があるんだね?」

「……はい」


 色々と思い出す度に疑問が出て胸が苦しい。


「ふぅむ。許せないね」


 直ぐにアリスティアを連れて竜人国に帰るつもりだったけど、可愛い我番に酷い仕打ちをした女にはお仕置きが必要だね。


 クスッ


 ジェイデン様がいたずらっ子みたいに笑う。


「アリスティア、俺はちょっとだけフィルメルン王国に行く予定が出来た」

「えっ!?何で……⁉︎」


 どうしてジェイデン様が私を追放した国に……⁉︎


「俺の大事なアリスティアに酷い事をした奴等に、少しだけ意地悪しようかなと思ってな」

「そんなっ!もう良いんです!終わった事だし」

「ダメだよ? 俺が少しでも遅れていれば、アリスティアは魔獣に殺されていたかも知れないんだ……絶対にその女許せぬ」


 さっきまで柔らかな表情だったジェイデン様の顔が凍りつく。


「ちょっとだけ行って来るからね。アリスティアは此処で待っててね?」



 私に笑いかけた後、ルミエールさんを呼ぶ。


「ルミエール! 至急フィルメルン王国に謁見の連絡を入れろ!」

「了解致しました。では準備して参ります。」

「ククッ急な申し入れに慌てるだろうな……」


 ジェイデン様が悪い顔して笑ってる。。いったい何をする気?


「急ではありますが明日フィルメルン王国に行く手筈が完了致しました」


 えっ?もう?

 早くない?

 執事のルミエールさんは仕事の出来る男だわ。


「明日が楽しみだな……」


 ジェイデン様が口角を上げ悪戯に笑う。なんだか少し悪魔の笑みに見えてきた。


 あのう……ジェイデン様?

 どんな意地悪を考えてるの。

 それは本当に意地悪なんですよね?



★★★


 読んでいただきありがとうございます。本日中に完結予定です。

 ジェイデンですが、実は別作品の悪役令嬢にも同じ名前のヒーローが登場します。

 【悪役令嬢アルビダは溺愛されたい】こちらの作品はカクヨムコン応募作品となっており、宜しければ読んでいただけると嬉しいです。

 さらにお気に入り登録や★など頂けますと、うれしすぎて泣きます。

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