ちょっと本気で生きてみた

夜摘

第1話 ちょっと本気で筋トレしてみた


19歳。

・・・大好きだったばあちゃんが死んだ。

俺の唯一の家族だ。


金も職もない俺が今後どう生きていけばいいのか不安が募った。


狭い和室に布団が今は1つだ。

隣で寝ていたばあちゃんはもういない。


ぼろアパートでも、ばあちゃんと一緒なら暖かさがあった。


狭い和室なのに、ばあちゃんが居ないだけで、とてつもない孤独感が俺を覆った。


ばあちゃんは腰を痛めていても、多少熱があっても、パートをしていた。

ばあちゃんはいつも笑っていて、だらけて生きている俺を怒ることもなかった。



他の家庭とは多分違う味だろうが、俺はばあちゃんが作る家庭の味が大好きだった。


ネットでも見たことがない、不思議な料理を作ってくれた。



『タツアキ、あなたは・・・あなたのペースでいいのよ』



ばあちゃんがいつも言っていた言葉だ。


分かったよばあちゃん、俺、少し行動してみるよ。


ばあちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。



翌日・・・・。

俺はちょっと本気で筋トレをすることにした。



毎日18時間、寝る時以外はずっと腕立てをした。


俺のペースだ。


普通はどれくらいすればいいのか、俺は知らない。

なので、俺のペースでやってみる。


365日目、右手の甲のあざが熱くなった。

翌朝の366日目、何故か俺の大事な箇所の毛がすべて抜け落ちていた。



俺のペースで筋トレをした。


今なら何か行動出来そうだ。


俺は傭兵に志願した。


紛争地帯に赴き、戦場を走った。



気付いたら弾丸やミサイルが効かない身体になっていた・・・・。



俺のペースで筋トレをした結果だろう。


敵国から、俺はこう呼ばれた。


<日本の黒い悪魔>


白だったら個人的に嬉しいのだが・・・。


それが紛争地帯での俺の通り名だ。


そして、紛争は終結した。


次は何を本気で取り組んでみよう・・・・。


紛争地で現地人から貰った黒い防塵マントを羽織り、

俺は日本に帰国した。


ばあちゃん・・・・俺・・・ちゃんと出来たぞ・・・・。


第1話 完

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