飛んで舞う二人

神原ゆう

第1話 20XX年

月夜に浮かぶ、大きな翼。


「うわぁ、すっげー。ここは荒れてんなー」


俺の名はヒルン。年は確か十六だったかな。もう何年も誕生日を祝ってないから詳しい年は覚えていない。まぁ、分からなくても問題無い。


ここは20XX年のとある世界。科学技術は止めなく発展し、映画さながらの沢山のAIロボットや、最先端の機械技術きかいぎじゅつがあふれている。

一見発展した、豊かな世界に見える。


でも、光があれば影が生まれる。暴走したAIロボット。富を得た者をうらみ、命を奪うために発展した暗殺業。科学によって発展した兵器を用い、日々争いが起こっている。大変な世の中になったものだ。


俺はそんな世界で、傭兵ようへい生業なりわいとして生活している。

傭兵は依頼された目標をこなすだけで金がもらえる。もちろん命が懸かっているが、俺の運があればそう簡単に死にはしない。


「今日の小鳥ちゃんはどんなもんかな」


俺も言ってしまえば科学の発展で生まれた影。こん色のウイングスーツを身に纏い、空を駆ける。

特殊な金属で出来た大きな翼は、腕と繋げて羽ばたくも良し。天使のように肩の位置から生やして、両手で銃や刀を持つも良し。どちらかと言えば悪魔かもしれないな。

この翼と、背中にあるジェットで俺は空を飛ぶ。 


今日は刀をたずさえて荒廃こうはいした住宅街に来た。

コンクリートでできた建物の周りを飛び回る。障害物が多いところはゲームみたいで楽しい。


―――バサッ――ヒュッ


素早く飛び回って目標ターゲットを倒す俺は、"月燕つきつばめ"だなんて二つ名が付いた。

由来は、スーツが燕のような青色で、月夜の空に飛んでいる所からだそう。燕と聞くと小さくて弱そうだけど、響きが格好良くて割と気に入っている。


これでまた"月燕"の名が騒がれるのかな。

静かになって倒れた大勢の悪人達を眺めながら思う。



さあ、今日の依頼はこれで終わり。

今回は依頼主が珍しく太っ腹で報酬がたんまりだから楽しみだ。


背中に付いた小さなジェットが赤く光って、月のそばに赤い線を描いていった。

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