銀の弾丸
「銀弾?ドラクーラにも出てきてるあれでしょ?」
「多分そうだと思います。他の、ヨーロッパあたりの作品にも使われてたり」
「早い話、そういうことだ。銀は古来から魔除けの性質を持つ。人間側の世界では殺傷力に欠けるがな」
心做は続ける。
「一応、初速はこちらの方が速い。こちらの世界の生物に対しては、人間に対して銃弾を撃ち込むよりも遥かに高い効果があるから、コストが高い以外デメリットは無しだ」
「…ちょっと待って。魔除けの性質ってことは、触れるのもアウトな感じ?」
「以前[調査隊]の中の一人が銀弾に触れ、その部分が焼け焦げた。とんでもなく熱かったらしい」
系糸は、あの時貫かれた感覚をまだはっきりと覚えている。高熱を帯びた石で体を引き裂かれているような、あの感覚を。
「…そういえば訊いてなかったんですけど。[調査隊]って何なんですか?」
「調査隊と書いてエキパデアンケタと読む、捜査機関兼研究機関だ。おおよそ200人で構成されていて、統率者から末端に至るまで大抵はまともだ」
「…盟団って平均何人で作られてるものなんですか?」
療病や震奮のような協力者がいるとはいえ、三人はあまりにも少なすぎる気がしたのだ。
「基本は15人前後。総勢700名を擁す[
「ねぇ〜団長、やっぱ人数増やしたほうがいいと思うんですよ…」
「一応、この区内の別の盟団と協力関係を結んでいるから心配はいらない…はずだ。合わせれば20人に達する」
心做が言い訳を並べたところで、とうとう療病が痺れを切らした。
「何度も言ってんだろうが…狭いんだよこの家!治したんだからとっとと帰れ!」
「うっさいなぁ!団長からふんだくった大金で引っ越しゃいいでしょ?!」
「貰った先から課金してんだよ馬鹿が!でなきゃゲームが廃れるだろうが!」
「貯めるとかできないの?!」
心做と系糸は顔を見合わせ、ため息をついた。
―――
部屋には巨大な長机、10人分の椅子がそれぞれ用意されていた。
「…遅いぞ心做」
ふんぞり返った、如何にも荒くれ者の形相をした男が、心做を睨みつけて言った。
「知ったことか。貴様の無能さに比べれば些事に等しい」
「話題を逸らすな。遅刻は事実だろう?」
今度は凛とした、髪の長い女性が。
「部下が負傷していた」
「どういう名前だったか…?赤亡…なんか似た漢字が並んでたはずなんだが…」
奇抜なファッションをした男も、会話に参加してきた。
「系糸。系統の系に糸で「けいし」だ。なるべく間違えないでくれ」
そう言いながら心做は、テーブルの前の椅子に座る。そして高らかに宣言した。
「…では、鬼神府会議を始める」
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