「じゃ、さようなら」
「
そう言うと瞬沢は系糸の視界から消えた。
(こういう場合、一番多いケースは背後。さっき背中を切られた時は水平切りだったから…しゃがむ!)
系糸は血刃の軌道を読んで躱し、連血糸刃の間合いまで距離を詰める。
「なんで避けられるんだよ!」
瞬沢は、系糸が水平に薙ぎ払った連血糸刃を間一髪で回避し、一瞬の硬直を見計らって蹴りを入れた。
(うざってぇガキだ!大人しく殺されてりゃいいのによ…!)
系糸に向かって真っすぐ伸びてきた足を別の血刃でガードし、弾き飛ばす。系糸は更にもう一本血刃を取り出し、打ち鳴らした。
(金属音ッ…あ"あ"ぁぁクソガキがッ!!)
不快な音に瞬沢が耳を塞いだタイミングで、二本の血刃をまとめて瞬沢に投擲する。
「…あーキチぃ…だがなァ!テメエの策は分かりきってんだよ」
このタイミングで再び瞬間移動。血刃はすり抜け、信号機の柱に突き刺さった。
(ああもう!条件とか無いの?血刃の位置にテレポートするとか!)
困惑しながら連血糸刃を振り回し、追撃に備える系糸。成務票が示す距離は30m、しかし周囲を確認しても誰もいない。
(…待てよ)
成務票は20mを示した。
(どんどん近づいている以上、逃走の線はありえない。平面上に居るなら気付くけど…)
系糸は解答を導き出した。示されている瞬沢の位置は5m。
(違う、世界は平面じゃない…立体だ。警戒すべきは上!)
高速で振り回していた連血糸刃の血刃部分を、上からの強襲を仕掛けてきた瞬沢に、投石器のように放り投げる。
「おいおい、伸びんのかよそれ!」
「ああ、僕に血が流れている限りはね」
傷口から伸びる糸は、当然ながら系糸の血液から生成されている。傷口を本体から切り離しでもしない限り、糸は伸ばすも留めるも、そして巻き取るも自由。文字通り、糸は彼の手足なのだ。
「でも…当たるわけねえんだよッ!」
ギリギリのところで瞬間移動され、後頭部に蹴撃を撃ち込む。
(今だ…!)
系糸は、前方に伸びていた連血糸刃を巻き取って引き戻し、持ち上げた。血刃は弧を描いて瞬沢の足に引っ掛かり、そのまま遠心力で巻き付いた。
(このガキ…!)
糸を少し伸ばし、背負投げ。自身の手首を切り落とした後、血刃を杭のように地面に打ち込み手首を地面に固定した。
「さてと、これであんたは動けないよ」
「どうだろうな…?こっちには瞬間移動があるんだぜ」
不敵な笑みを浮かべる瞬沢。しかし、系糸は怯まずに言う。
「いや、今から目潰れるんだから、動けるわけないでしょ」
「はぁ?何言ってやが――」
血刃の切っ先を瞬沢の目に向け、手を離す。更に系糸はそれを、足で打ち込んだ。
ぐさり、と。
「〜〜〜!!!」
血刃は深く深く刺さり込み、貫通。瞬沢は声にならない悲鳴を上げ、悶えている。
「この血刃、決定打に欠けるんだよね。だからさ」
目をえぐりながら血刃を引き抜き、系糸は丁寧に瞬沢を起こした。
「嫌だ…嫌だ…!!!〜〜〜!!」
「へえ、自分が殺されそうになったら命乞いするのか?醜いねぇ…」
血刃を取り出して、先程瞬沢に刺した物と繋げる。糸をゆっくりと首にかけて、後ろで交差させる。
「あんたが殺したのは同業じゃない、罪のない一般人だ」
思い切り系糸は糸を引っ張った。
「じゃ、さようなら」
血しぶきはスプリンクラーのように舞い、周囲の草木を赤く濡らした。
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