襲撃
鋼と鋼とがぶつかり合い、甲高い衝突音が裏路地に響く。次いで訪れる一瞬の静寂。
——その静寂を破ったのは、嫌に鈍い音を立てて地面に落ちた頭だった。
「一人、やられたか——」
俺の左側から斬りかかってきた黒装束の男の一人がそう呟く。フードを目深にかぶり顔を隠しているせいで、相手の素性が分からない。
「——一人で済むと思っているなら警告してやる。お前ら全員、これから同じ目に合うんだよ」
「——あの一瞬で一人殺したのは見事だ。だが、今の現状を見て——残りの我らを殺せるとはとても思えんが?」
虚勢を張ったが簡単に見破られ、おまけに事実を突きつけられて、俺は舌打ちをした。
たしかにこの男の言う通り、今の状況じゃこいつら全員の息の根を止めることは厳しい。
俺の足元に三人が伏せたままの体勢でいるせいで身動きがとりにくい。戦えるはずのクルトとラビまで伏せているから二対一になっていることも不利。
おまけに、一人は首を切って殺したものの……両サイドから斬りかかってくる残り二人は間に合わず、止む無く素手で受け止めるしか無かった。そのせいで、俺の右手からは血が滴っている。
「——舐めるなよ。この程度の傷、お前ら相手じゃハンデにもならねぇよ」
「強がっても、良いことなど何もないぞ。己の死期を早めるだけだ」
リーダ格なのだろう男は、そう言うとおもむろに剣を仕舞った。
「——なんだ、逃げるつもりか? 腰抜けが」
「……我々の目的は殺すことではない。取り戻すことだ。今回はその準備として視察していただけに過ぎない。——また、日を改めればいいだけのことだ」
俺が動けないとでも思っているのか、悠々と目的を話し背を向ける黒装束の男。
そのまま二、三歩歩いたところで「引き揚げるぞ」と言い放ち、俺の腕を切った奴と共に姿を消した。
「————クソが‼」
堂々と帰っていったことにムカつく。何が「日を改めればいいだけのこと」だ。
俺の足元で伏せたままの足手まといが居なければ、生きて返してなんかいなかった。
——しかも、俺が負けたかのような雰囲気を出しやがって。
「いつまで伏せてんだよ——ッ‼」
実際にはアイツらより俺の実力の方が上だった。だからこそ余計にムカつく。
そんな理由から足元にいたクルトを蹴り飛ばした。
「——ぐふッ⁉ 何で僕が蹴られなきゃいけないんだ‼ ユーリス‼」
「お前のせいで逃げられてんだよ‼ 死んで詫びろ‼」
そうしてクルトに当たり散らしていたせいで、俺は聞き逃した。
シラが怯えきった表情で何かを呟いていたことを。
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