絵夢子
あべせい
絵夢子
とある事務所。
部長の滝口がデスクの前に進み出た部下の里下を見上げている。
「辞めたい?」
「はい」
「突然、どうしたンだ」
里下、落ち着いた口調で応える。
「給与と仕事が合いません」
「ウム? 給料が高すぎるというのか」
「給与に比べて、仕事が多すぎるンです」
「けっこうじゃないか。仕事がなくて困っている企業はいっぱいある」
「給与を上げてください」
「それは出来ン。仕事はふやせるが、給料はふやせン」
里下、用意してきた言葉のように、強く発する。
「なら、辞めます!」
滝口、ちょっと驚き、
「待て。辞める理由は、それだけか」
「ほかにもいろいろあります」
「この際だ。言ってみろ」
「このユニフォームが不恰好過ぎます」
「うちは家電をつくる工場だ。作業衣はどこでもだいたいそんなものだろうが」
「色も形もよくありません」
「ほかには?」
「始業と終業の合図が、おかしいです」
「チャイムのメロディか?」
「始業の合図が明るくて、終業の合図が暗過ぎます」
「始業は仕事を始めるンだから、元気が出るように明るいメロディにしてある。終業時は仕事を忘れて穏やかに過ごせるようにと静かなメロディにしてある。それが、不服か?」
「仕事始めにあんな軍艦マーチのような元気いっぱいの音楽を流されると、出社時までの甘い余韻が消し飛んでしまうンです」
「甘い余韻? キミは毎朝そんないい思いをしているのか。相手はだれだ。まァいい、ほかには?」
「洗面所の水の出が悪過ぎます」
「水? ここは浄水場から最も遠い所にあるから、昔から水の出はよくない」
「それから、玄関の傘立てが小さ過ぎます。雨の日、出社すると、いつも濡れた傘であふれていて、ぼくは傘を立てることができない」
「小さい傘立ての代わりに、大きなバケツを置いておく。辞めたい理由はそんなところか」
「まだ、あります」
「何だ」
「若い女性社員が少な過ぎます」
「ここは会社だ。キャバクラじゃない」
「しかし、部長が、その数少ない女性社員を独り占めしようとしている……」
滝口、慌てる。
「何を言い出すンだ。いまは休憩時間とはいえ、勤務中だぞ」
滝口、立ち上がって周囲を見渡す。
広い事務室には、2人しかいない。
滝口、腰を下ろそうとして、突然、
「イタッ、タタ、タタッ!」
里下、訝り、
「部長、腰の痛みがまだ治らないンですか。もう1ヵ月になるでしょう」
滝口、腰をさすりながら、
「急な動作がよくないみたいだ」
「転んだだけでしょ」
「そうだが……、それで、私が若い女性社員をどうかしたとか、なんの話だ?」
「最も若くてかわいい絵夢子が、昨晩ぼくに別れたいと言いました」
滝口、腰の痛みを忘れる。
「キミだったのか。絵夢子の元カレは」
「元カレじゃありません。現在進行中です。部長が横から入ってきたンです。これって、不倫じゃないですか」
「だから、辞めるというのか」
「ぼくが辞めれば、絵夢子がついて来ます」
「すごい自信だな」
「絵夢子は、金で動く女じゃありません」
「そう思っているのは、キミだけだ。おれは、ずいぶん金を使っている」
「彼女は、好きではない男には、金を使わせるンです。部長は彼女のミツグくんですよ」
「ミツグだろうと、アッシーだろうと、おれは目的が遂げれば、それでいいンだ」
「目的!? 部長! もう、絵夢子の手を握ったのですか!」
「……手? 手は、まだだ」
「脚を触ったのですか!」
「脚も、まだだ」
「何をしたンですか!」
「昂奮するな、落ち着け」
「返答次第では、ぼくにも覚悟があります」
「覚悟? どんな覚悟だ」
「奥さんに注進します」
「女房とは先月から別居中だ」
「それでも、注進します」
滝口、遠くを見る目で、
「遠いぞ」
「どちらです?」
「どこでも、いいだろう」
「韓国ですか」
「どうして知っている」
「奥さんは、韓流スターが好きだとおっしゃっていたじゃないですか」
「そんなこと、言ったか? まァ、いい。先月、若い男とソウルに逃げたンだ。おれを置いてな」
「部長、捨てられたンですか!」
「声が大きい。社内では、絵夢子しか知らないことだ」
里下、ひとりごとのように、
「絵夢子は、部長夫人の座を狙っているのか」
滝口、我が意を得たりと、
「そういうことだ。絵夢子のことはあきらめろ」
「ぼくがここを辞めても絵夢子はついて来ないとおっしゃるンですね」
滝口、事務所の入口を見て、
「シッ! 戻ってきた」
絵夢子が同僚数人と事務所に入ってくる。
絵夢子、部長席の2人を見ると、急いで近寄る。
里下、一歩下がる。
「部長! いまお昼休みに寄った食堂のテレビのニュースで見たンですが……(チラッと里下を見やり)ソウルのデバートで大火災が発生したそうです」
「ソウル! それで……」
「日本人観光客も巻き込まれたと言っています」
絵夢子、里下の耳に顔を寄せ、ささやく。
「おもしろくなりそうよ」
滝口、絵夢子のささやきに気付かず、
「絵夢子、犠牲者の中に、家内の名前はないのか?」
「それは、まだです」
「ここではまずい。あっちに行こう」
滝口、立ちあがり、他の部下に、
「ちょっと打ち合わせをしてくる」
と言って応接室へ。
絵夢子、滝口の後を追いながら里下に、
「本当に辞めるの?」
「部長の秘話もバッチリとれたしね」
ポケットからICレコーダーを取り出す。
「もう一言、欲しいけれど……」
絵夢子、優しい笑顔で、
「私も時期が来たら、辞めるから。じゃ……」
とささやき、滝口に続いて応接室へ。
応接室のソファ。
絵夢子が大画面のテレビを見ている。
滝口が湯呑みを持って現れ、絵夢子の横にぴったり寄り添うように座る。
「よく燃えているな。これは生映像か?」
「これはケーブルテレビのニュース専門チャンネルの取材映像です。キャスターの話では、火災は1時間ほど前に鎮火したそうです」
「うム……」
「奥さんが心配ですか?」
「あいつは買い物が好きで、ソウルに旅行すると必ずこのデパートに行くと言っていた。しかし、そんなにうまい具合に火事に出くわすなんてことが、あるわけが……」
「部長、犠牲者のリストです」
画面に、アルファベットで名前が出る.
「タキクチ、タキクチ……、滝口はないな。なくて当然だ」
画面は火災現場の生中継映像に変わる。
火は消えているが、現場は消防車、救急車などの緊急車両が多く、雑然としている。
「火事は5階と6階だけか。あいつは地下の食料品売り場が好きだから……」
絵夢子、テレビ画面を指差す。
「部長、あれ、奥さんじゃないですか!」
滝口、驚いて、
「ナンダッ、どこだ!」
絵夢子、立ちあがって、テレビ画面の隅を指差す。
「ここ、消防車の陰にいるこの女性。奥さんに似ていませんか」
「待て……」
滝口も立ちあがり、画面に顔を近付ける。
「うウ、似ているが、顔が小さ過ぎる。もう少しアップにならンと、何ともいえン。絵夢子、このテレビ局に電話をして、もっとアップに出来ないか頼んでくれないか」
「そんなこと……」
里下がスマホを手に入ってくる。
「部長!」
「どうした、里下」
里下、スマホを示し、
「奥さんから電話がかかっています」
「慶子から電話? そのスマホはキミのか」
「はい……」
「どうして、キミの携帯にかかってくるンだ」
「それは、その……」
絵夢子、里下を軽く睨み、
「奥さんは、里下クンがお気に入りみたいで、何かと相談しているようですよ」
滝口、信じられないという風に、
「慶子と逃げた若い男というのは、キミのことか!」
「冗談はやめてください。ぼくはそれほど物好きじゃない」
「物好きとはナンダ。おれの女房をバカにするのか!」
絵夢子が呆れて、
「部長、そんなことより、電話の用件を聞いたほうがよくはないですか」
「そうだ。里下、何の電話だ」
「奥さんの連れの男性が、ソウルのデパート火災で、行方不明になったそうです」
絵夢子、再び画面を指差す。
「部長、この女性、やはり奥さんみたい。携帯を耳に当てていますよ」
滝口、テレビ画面を見ながら、
「里下、そのスマホ、貸してみろ」
里下、滝口にスマホを手渡す。
同時に、ポケットの中でこっそり機械を操作する。
「もしもし……おれだ……里下じゃない。おまえの亭主だ……細かい話はいい。連れの男が火事で行方不明なのか?……本当にそうなら、いますぐに右手をあげてみろ。なんでもいい、右手を上に上げるンだ!」
里下、テレビを指差し、
「部長! 画面の女性が右手を上げています」
「部長、やはり、あれは、奥さんですよ。でも、あんなにとり乱して……せっかくの美貌が台無し……恋人が亡くなってパニックになっているのかしら」
「慶子、聞こえるか! 無事だったのか……なに、連れとデパートの売り場で待ちあわせていたが、おまえが遅刻したっていうのか……よかったじゃないか。それで命拾いしたンだろう。それで男は?……待ち合わせ場所が火元の5階だったから、焼け死んだ、って?……そりゃ運がないンだ……これから? それは自分で決めるしかないだろう……帰りたい? うちに帰る、ってか?……わかっているだろうが、いままで通りにはいかないぞ……それで、いいのか?……どういうことか、って? そりゃ……おまえが旅行代理店の若い男と出て行って、もう1ヵ月近くになるンだ。男一人じゃ、不自由で仕方ない……オイ、泣いているのか……いまさら、そんなことを言われても、どうにもならン。おれにもプライドがある……なに、女房を間男されても平気でいろというのか!……おれのほうが先に浮気をしていた、ってか? おれは自慢じゃないが、おまえ以外の女は知らない……」
里下、テレビを見つめながら、
「部長、画面の女性が、首を左右に振っています」
「そりゃ、少しは間違いがあった。遊び程度だ」
絵夢子がつぶやく。
「わたし,遊び相手なの?」
里下もつぶやき、
「絵夢子、おまえ、遊ばれたのか」
すると、絵夢子、
「わたし、里下クンに悪いことしちゃったかも……」
滝口は、電話に夢中で、
「しかし、おれはおまえのように男と手に手を取って、逃げたりはしなかった……待て、マンションは確かにおまえの名義だ。おまえの死んだ親父が遺したものだ。だからって、出ていけ、ってか!……マンション15戸分の家賃は全額、おまえの口座に毎月振り込まれているンだろう……何を言っているンだ。ネズミみたいにおれが少しづつ齧っている、ってか。おれはおまえのキャッシュカードの暗証番号を知らない……わかった、少しは借りている。ほんのわずかだ。しかし、おまえは、クレジットカードの暗唱番号もすぐに変えただろう。いまはどうしようもない……前も言っただろう。離婚する気はない……確かに、おまえが送った署名入りの離婚用紙は届いている。しかし、すぐに破って捨てた。おまえは一生、おれから離れることはできないンだ」
絵夢子が大声で、
「部長、画面の女性の後ろから若い男性が近付いています。あッ、女性が、気がついて振り返った」
滝口、絵夢子の声が耳に入らず、
「オイ、どうした。『生きていたの、心配した』って、だれに言っているンだ。オイ、気は確かか。慶子、しっかりしろ!」
里下、滝口の肩をたたき、テレビ画面を指差す。
滝口、意味がわからない。
その途端、テレビの画面切り替わり、スタジオのキャスターに戻る。
「以上、現場からの中継でした……」
滝口、スマホにとりつき、
「慶子、慶子!……おれが言い過ぎた。いつまでも待っているから、帰ってきてくれ……そうだ。おまえがいないと、おれは生きていけやしない。家の中は、いままで通りだ。おれひとりで待っている。余計な人間は入れない……そんなことは言わずに……ヨシ、わかった、若い男と好きなだけそっちで遊んで、飽きてからでいい、帰ってきてくれ……アッ、切れた」
滝口、悄然。
里下、滝口の顔を見て、
「部長、大丈夫ですか。顔色が……」
「慶子はお嬢さん育ちだから、男に騙されているンだ。慶子の銀行口座には、毎月200万円近い金が振り込まれて来る。男はその金を狙っているに違いない」
滝口、頭を抱える。
絵夢子、そのようすを見て、
「部長って髪結いの亭主みたいですね。お給料は全部お小遣いにできる。だから、わたしとも懐具合を気にしないで遊んでいられる。でも、離婚になったら、そうはいかないわ」
「あいつは家を出るとき、クレジットカードを1枚置いていった。おれはそれを慶子の思いやりと受け取って、気兼ねせずに使っていた。しかし、それが1週間ほど前に使えなくなった。男の入れ知恵に違いない」
「しかし、部長、奥さんがもし事故に遭って亡くなれば、200万円の月収は部長のものでは……」
絵夢子、里下をたしなめるように、
「里下クン、何てことを言うの。奥さんが、ソウルのデパート火災で亡くなっていればよかったみたいじゃない。部長は、そんな人でなし、ではないわ。私の知っている部長は、虫も殺さない人よ」
滝口、絵夢子を無視して、
「里下、おまえ、会社を辞めたいと言ったな」
「ハイ……」
「辞表は受けとってやるから、すぐにソウルに飛ばないか」
絵夢子、びっくりして、
「部長!」
滝口、構わずに、
「絵夢子、人間は何にでもなれるンだ。仏にも鬼にもな」
里下、警戒しながら、
「部長、ソウルに行って何をするンですか」
「決まっているだろう。慶子に会って、若い男と別れさせ、日本に連れて帰るンだ」
「それだけですか」
滝口、暗く淀んだ目で、
「もっとも、途中、何があるかはわからン。地下鉄のホームから転落するかもな。暴走車にぶつかるかも知れン。もっとも確率が高いのは、通り魔に刺されることだ」
里下、顔を真っ赤にして、
「部長! 正気ですか」
「女と思って油断はするな」
6ヵ月後。
都内10階建てマンションの最上階フロア-。
慶子、部屋着姿でくつろいでいる。
ドアが開き、里下が両手で紙袋を抱えながら入ってくる。
「奥さん、お祝いのワインを買ってきました」
「奥さんだなんて。慶子と呼んで。きようから、私たち、戸籍上も夫婦なのよ」
「そうでした。昨日、裁判で離婚が成立して、いま役所に婚姻届けを出してきたンだ。今日からぼくは慶子さん、いや慶子の正式の夫になる」
「そうよ。ダーリン!」
慶子、里下の首に手を回す。
2人、ワインの栓を開け、飲み始める。
やがて、2本目のワインに手をつける。
「部長はいまごろ、どうしているのかな?」
「あの人、観察力がないのよ。私が旅行代理店の若い社員と駆け落ちしたって、本気にしたンだから。そりゃ、いるわよ。韓国旅行でいつもお世話になっている旅行代理店には、わたし好みの若い社員が。今回も、ツアー客に添乗する彼とソウルで落ち合って、いいお店を教えてもらいたくて2、3日つきあってもらったわ。でも、飽きるのね。いくら好きなソウルでも、1ヵ月いると。今回は、3ヵ月は帰らないつもりだったけれど、1ヵ月で嫌になった。そんなとき、あの火災じゃない。あれはショックだった。添乗員のカレが中にいるはずだったから、マジで心配しちゃった」
「ぼくも、あの火事は想定外だった。慶子から電話をもらったときは、すぐにソウルに飛ぶつもりでいたのに、部長から50万円の報酬を出すからソウルに行って欲しいといわれ、内心ラッキーと叫ンだ」
「そのおかげで、あの人がとんでもないことを考えていたことがわかったのだから。わたしのほうがラッキーよ。それにしても、あなた、あの人の話をこっそり録音してくれたから、離婚裁判がスムーズにいったの。あなたはホント、気転がきく」
「ぼくだって、驚いた。通り魔に見せかけて慶子を殺せばいい、なんてニオわせるンだから。あれは殺人未遂といわれても仕方ない。犯罪だよ」
「あの人が入れ揚げていた絵夢子って女子社員はどうしているの? まだ、会社にいるの?」
「いるよ。彼女はあれで案外真面目なンだ。部長にも、手も触らせなかったそうだから」
「あの人、それで平気だったの?」
「裁判では名前は出なかったが、部長の本命は営業部の愛子で、絵夢子より年齢は一回りも上の女性。愛子は音楽学校出身で、歌がうまいそうだ。いま部長はその愛子のマンションに転がりこんでいる」
「2人の出会いはカラオケね。あの人、ヘタの横好き。カラオケにはよく誘われたわ。でも、あなた、どうして、そんなことまで知っているの?」
「絵夢子の情報だよ。絵夢子と愛子は高校が同じで、部活でも先輩後輩の関係だそうだ」
「ところで、あなたと絵夢子は本当に、なんでもないの?」
「絵夢子は堅い女で、結婚するまではキスもダメだという女だ」
「私とは大違いね。ねェ、バルコニーに出てみない。夜景がきれいだから」
慶子、バルコニーに足を踏み出したとき、体がふらついて里下によりかかる。
「大丈夫か、慶子」
「ちょっと、飲みすぎたみたい」
2人、バルコニーに体を預け、ワイングラスを傾ける。
「あなた、私とひと回りも違うのに、よく結婚する気持ちになったわね。このマンションと私の月収200万円が魅力だったわけ?」
「慶子、酔っているね。ぼくと慶子は10才しか違わない。慶子、マンションの前にいま停止した、ハザードランプを点けている、あの車……」
里下、バルコニーの手すりから下を見下ろす。
慶子も手すりに近付き、下を見下ろす。
「あの車、前に見たことがあるわ。前にあの人が、あんな真っ赤な車で送られてきたわ」
「そんなことはどうでも、いいじゃないか。ワイングラスは置いて……」
2人は、互いに熱く、長いキスをかわしながら、考え事にふける。
絵夢子のやつ、部長をここまで送ってきていたのか。体の関係はなかったというのは、眉唾だな。しかし、いまここで打ち合わせ通り、慶子をこのバルコニーから突き落とせば、ニュースの見出しは、『マンションのオーナー、自室から酔っ払って転落死』ですむだろう。そうすれば、このマンションはおれのもの。絵夢子のことはそのあとでいいか。
あなた、私をいま、このマンションから突き落とせたらいいのに、って思っているンじゃないでしょうね。そんなことをしても無駄よ。別れた亭主は、私が合気道の有段者だってことをあなたに言わなかったみたい。あの人も、今夜のように私をバルコニーに連れ出し、手すりから乗り出した拍子に突き落とそうなンてバカなことを考えたンだけれど、反対に腰を痛めて、1ヵ月以上苦しんだの。ウソだと思うのなら、やってみなさい。ここから落ちるのは、あなたよ。あの人は、私に払い腰をかけられ、腰をしたたかコンクリートの床で打っただけですんだけれど、あなたは地上までまっ逆さま。警察はどっちを疑う? あなたには私を殺す動機があるけれど、私には結婚したばかりで、貧乏なあなたを殺す動機はない。あなたがここから落ちても、酔っ払いの転落死でケリがつくわ。絵夢子みたいな若いだけの女のどこがいいの。よォく考えなさい。あなたの代わりはいくらでもいるンだから。
(了)
絵夢子 あべせい @abesei
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