第21話 暗殺

 盗賊の尋問が終わった後、俺達は村長さんの自宅へ向かった。

 残りの二人の盗賊から聞いた話は、最初に聞いた盗賊の話と全く同じだった。


「ユートくん⋯⋯わしらはこれからどうすればええんじゃ。まさか意図的に村が狙われていたとは⋯⋯」


 村長さんは盗賊達の情報を聞いて、憔悴しきっている。

 若い人がおらず、衛兵もいないこの村が盗賊に襲われたら一溜まりもないだろう。

 現にもし俺がいなかったら、この村は昨日滅んでいたかもしれない。

 ここは元凶である人物を何とかしないと、また村が狙われてしまう。

 とりあえずあの三人をロマリオの衛兵に渡すわけにはいかない。村の襲撃を指示した人物に繋がる唯一の手掛かりだから。


「村長! ユートくん! 大変です!」


 村長とこれからのことを話そうとしていた時、突然村人が血相を変えて村長宅に飛び込んできた。


「何事じゃ!」

「と、盗賊達が外套を着た奴に刺された! 血がたくさん出ていて⋯⋯もうこれでは⋯⋯」


 まさかこれ以上情報が漏れないように口封じをしてきたのか!


「外套の者はどうした!?」

「刺した奴は村の西側に逃げました。すみません、怖くて追いかけることは出来ませんでした」


 それは仕方のないことだ。逆に追いかけて二次被害が出る可能性もあったのでその判断は間違ってはいない。


「とにかく盗賊達の元へ行くのじゃ」

「俺は外套を着た奴を追いかけます」

「申し訳ないが頼んだぞ」


 俺達は急ぎ村長の家から飛び出す。

 だが外套を着た奴を探しに行く前に、やるべきことをやっておこう。

 俺はある場所に向かった後、盗賊を刺した犯人を追いかけるために村の西側へと足を進める。


「くそっ! 誰もいないな」


 さすがに初動が遅すぎたか。もうロマリオの方に逃げてしまったのかもしれない。

 俺は村の西側の入口まで来たが、周囲に誰かがいる気配はなかった。

 本当は追いかけたい所だけど、まだ村の中に潜んでいたらリリアに危険が及ぶ可能性がある。

 それだけは絶対に避けなければならない。

 俺は盗賊達を刺した奴を追いかけるのを諦め、村長宅へと戻る。


「ユート様!」


 村長宅へ戻ると、そこには村長だけではなくリリアもいて俺を出迎えてくれた。


「大変なことになりましたね」

「まさか盗賊達が刺されるとは思わなかった」


 いや、本当にそうか? 二度失敗した盗賊達を不要と判断するのは、考えればすぐにわかることだ。それに悪事の証拠になるような奴を生かしておく訳がない。

 俺は自分の考えの至らなさに愕然としてしまう。

 だけど今は落ち込んでいてもしょうがない。これからどうするか考えないと。


「これは本当にバーカルが指示したことなのか? 鉱石を手に入れるために簡単に人を殺めるとは」

「大事な物は人によって違うということです」


 俺だってリリアを守るためなら、どんなことでもやるつもりだ。だけどそれは己の欲の為ではない。

 これまでの出来事がバーカルが指示したことなら、到底許せるものではない。

 しかし今回の件でこちらは。後はその武器の発動するタイミングを間違わなければ、きっとバーカルを追い詰めることが出来るはずだ。


「村長さんに一つお願いがあります。村の人達に箝口令を敷いてもらえませんか?」

「どういうことじゃ」

「今回の盗賊が刺されたことに関して、絶対に外に漏らさないで下さい」

「わかった。じゃがそれにいったいどういう意味が⋯⋯」

「それは――」


 俺はバーカルを追い詰める策を話す。


「な、なるほど。それならもしかしたら⋯⋯」

「さすがはユート様です」

「だけどまだ調べなくちゃならないことがありますけどね」

「わしらだってやられたまま黙っている訳にはいかん。バーカルの奴に目に物を見せてくれるわ!」


 良かった。村長さんはいつもの調子を取り戻したようだ。

 昨日盗賊達に襲われてから元気がなかったからな。

 後はさっき言ったように、バーカルとバーカルの周囲の人物を調べなくては。

 そのためにはロマリオの街に行く必要がある⋯⋯と口にしようとしたその時。


「村長大変だ!」


 再び村長の家の扉が開き、そこには血相を変えた村人の姿があった。


「今度はなんじゃ!」

「こ、鉱石が発掘された洞窟の方から魔物が!」


 村人達の言葉に、俺達は騒然となるのであった。

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