500字フィクション「壊れたカメラ」
@Lotus927
「失敗」
「俺の人生をやり直せる...?」
午前9時31分。ビルの屋上から片足を差し出したところである男に声をかけられた。なんでも、彼は時間を司ってるとかなんとかで、望むなら時間を巻き戻すことができるらしい。
何ともうさん臭かったが、確かにたった今砕いてみせた小さな石を元に戻したところで完全に信用しきってしまっていた。
何年でも戻せるとのことだったので、今の会社に入社する直前、2年前の今日に戻してもらうことにした。
転送が開始された途端意識が脆くなる。最後になにか言っていたが、まぁいいだろう。もう1回やり直してやる。彼は久しぶりにやる気に満ち溢れていた。
───────
───やけにうるさい目覚ましの音で目を覚ます。
デジタル時計はちょうど2年前の今日を示していた。布団から飛び起きる。そうか、昔はこんなに体が軽かったのか。そうしてそのまま、古くて新しい生活を楽しむことにした。
時は過ぎ、東京の方に出張する機会があった。何度通っても慣れないビル街。突然何かが落ちる音が背中に響く。慌てて振り返るとそこには見知った顔。というより、何度も鏡で見てきたあの顔があった。ポツリと呟く。
「私、誰...?」
それ以降の記憶は無い。
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