第2話甘い同棲生活
「学。起きて。朝ご飯できているよ」
僕を起こす彼女は昔飼っていた愛猫のネリが転生した女性である。
彼女と再会したその日から僕らの同棲生活は始まっていた。
「おはよう。なんか懐かしいね」
「何が?」
「いや、ネリに起こしてもらうのがさ。凄く懐かしいよ」
「そうだったね。昔はずっと私が起こしていたもんね。一人で起きれるようになっていると思ったんだけどね」
「いやいや。今までずっと一人で起きていたよ。でも今日は少し気が抜けていたのかも。ネリと再会できて…気が緩んでいたよ」
「そうなの?朝ごはん一緒に食べよ?」
「ネリが作ったの?なんか変な気分だよ」
「何が?」
「いや、ネリに世話をされるなんてさ。立場が逆転しているようだと思って」
「そう?猫の時からずっとなにかしてあげたいって思っていたんだよ?」
「そうなの?まぁ猫の頃から色々としてもらっていたと思うけど」
「そんなことないよ。もっとなんでもしてあげたかったの。今は人間になったから…何でもしてあげられるのが嬉しくて…」
「そっか。僕も嬉しいよ」
朝から僕らは軽いイチャつきのような会話を繰り広げるとリビングのテーブルで朝食をいただくのであった。
朝食を終えると仕事部屋へと向かい本日もリモートワークを進めていく。
パソコンの前の椅子に腰掛けるとただひたすらにタイピングを開始した。
打ち込み作業を繰り返して無の状態で時だけが過ぎていく。
ただひたすらに夢中になっていると仕事部屋の扉をノックするような音が聞こえた気がした。
ただ今は集中しているためそれがノイズなのか本当のノックなのかが分からずにいた。
返事をすることもなくタイピング作業を続けていると扉は開かれた。
「学。少し休んだら?肩凝ってない?」
仕事部屋の中に入ってきたのはもちろんネリだった。
時計を確認すると作業を始めてから数時間が経過していた。
「あぁ〜。もうこんなに時間が経過していたんだ。気付かなかった」
集中しすぎていたために時間の感覚が完全に狂っていた。
「大丈夫?疲れてない?」
「まぁ…仕事だからね。疲れるのは普通っていうか。当然というか…」
「そんなことないでしょ?仕事でも疲れないで効率よくやる方が良いよ。一時間作業したら十五分ぐらいは休憩しないと。身体壊すよ?」
「そうも言っていられないと言うか…」
そんな消極的な言葉を口にするとネリは僕の後ろに立って両肩を掴んだ。
「とにかく。今から十五分は休憩ね。マッサージしてあげるよ」
「でも…」
「良いから。ワーホリになりかけているんじゃない?身体と心を壊したら人間は立ち直るのに時間が掛るよ」
「それはそうだけど…」
「私の言うことを聞いて?」
「わかったよ」
そこで僕はキーボードから手を離すとネリに甘えてしまう。
ネリはそこから十五分間、丁寧に僕の肩をマッサージしてくれるのであった。
その御蔭もあってか仕事の効率が上がったような気がした。
本日はいつもより作業を進めることが出来たような気がする。
それもこれもネリの御蔭だと感じると夕食の時に彼女に感謝を告げるのであった。
まだまだ僕とネリの甘い同棲生活は続くのであった。
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