にゃーと鳴いたら猫になる

濃空藍

第一章

第1話 成人ってめんどくさいだけでは?

「ふあぁ〜」


私ことラナンは朝の陽を浴び眠りから目覚めた。

私が起き上がると、足元からいつのまにか家に住み着いた猫が


「にゃーん」


と起こしている。私は


「おはよう。」


と背中を撫でると、その猫はゴロゴロと、心地よさそうに喉を鳴らし始めた。

あの猫も家に住み着いただけだったはずなのにいつの間にかここまでがルーティンになってしまった…。

そんなことを考えながら私が階段を降り、リビングに入ると


「ラナン、12歳のお誕生日おめでと〜‼︎」


と、朝から騒々しくお母さんがやって来た。

寝ぼけている私は、その言葉を理解す

のに数秒かかったが、理解した途端


「あ、忘れてた」


と呟いた。独り言のつもりだったのだが、それを聞き取ったであろうお母さんが


「も〜。今日から一人前の大人なんだから、しっかりしないとダメよ?」


「はいはい。」


そっけなく返事をしたが、満足した様子のお母さんは、軽い足取りで台所へ戻っていき、皿洗いを始めた。

成人したのは十分分かっているがやはり、12歳で成人は早くないだろうかと思ってしまう。

まぁ、成人したといえただの小娘。

私が意見したところで何も変わらない。

そう思い、私は机に置かれた朝食に手をつけた。

私が黙々と食べ進めているとお母さんが、お皿を洗いながら話しかけてきた。


「そういえばラナン、今日の午後からある成人式、ちゃんと行くのよ?」


「いやだ。いきたくない。」


「なんで行きたくないの?」


「だってめんどくさそうだから。」


私が答えると、お母さんは、はぁっとため息をついて言った。


「そんなこと言ってたら、女神様にスキルがもらえないわよ。」

「まぁ、スキルは欲しいけど…」


「ならやっぱり成人式に行かないとね」


「でも成人式ってめんどくさいこともあるでしょ?」

流石にめんどくさいことが一つも無いことはあり得ないと思いそう尋ねた。

お母さんは少し考えるそぶりをして答えた。


「まぁ、手にナイフを当てて出た血で儀式をして女神様にスキルをもらうのとか?」


私はそう聞いて、やはり成人はめんどくさいだけだと確信した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る