第16話 おそろい

「えっ!?ちょっとユーリー、こんな高そうなもの…」


そう言いながら杖の商品タグを見ると3600エルと書かれていた。


「あら、そんなに高くないわね…」


「装飾の宝石はイミテーションみたいだからね」


なるほど、と納得しながら商品タグの説明へ目を向ける。

【魔法攻撃力1%上昇】と書かれていた。

微々たるものだけど、無いよりは断然良い。

それにこの手触りもなかなか。


「手で持つ所は、メガドロスの皮を張り付けているから、滑りにくくなっているよ」


「メガドロスが何なのか分からないけれど…本当に手に馴染んで、とても持ちやすくて滑らないわ」


「冒険の時はグローブも付けるから、もっとしっくりと来ると思うよ」

「実は…今日は持っていないけど、僕の剣のつかも同じ加工が施されているんだ」


そう言ってユーリーは照れ笑いをした。

いちいち、どうしてこう可愛いのかしら。


「値段も悪くないし、これにするわ」


こうして、グローブ、ブーツ、バッグに水袋、ヒール=ポーション3本、今は必要ないだろうけどロープと短剣をカートに入れていく。

そして、購入前に試着室で全てを着用しておかしなところが無いかどうかを最終チェック。

その時、ユーリーは口を半開きにしてボーッとしていたけど何を考えていたのだろう。

そんなことを思いながらレジに向かおうとした時。


「まだクッションを見てないよ」


という、ユーリーの言葉に馬車での出来事を思い出す。

そうだった。

家具コーナーへと行き、クッションを見繕ってカートへと投入。

色違いではあるけれど、彼と同じクッションだ。


レジに向かうと、若い女性店員がテンポよくレジをさばいていた。


「へいらっしゃい」

「って、あれ?もしかしてニーニャさんの娘さん?」


偶然にもママの知り合いの女性店員と出会うことになる。

基本的に買い物をネットで全て済ませるママに実店舗のお知り合いがいるなんて。


「そりゃあ、この街でニーニャさんを知らない人はモグリだよ」

「あ、でも一応私は…えっと名前は蘊蘊ゆんゆんって言うんだけど本当に友達だからよろしくね」


こうして少しばかり世間話をしながら精算を終えた私達は、ギルドに寄ってアリシアさんに挨拶を兼ねた世間話をしてから帰途に就き、城に戻った時には既に空は朱色に染まっていた。

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