持久戦
僕とリノが共に敵の司令部を叩き、そのまま大量の補給を燃やし尽くすという荒業を行った結果。
敵のヘイトを大幅に買ったことで、何の戦術も戦略もなしにただ引くだけだった我が軍はほとんど犠牲を出すこともなく徹底することに成功した。
そんな僕とリノによる緒戦から時間が飛んで一か月。
戦場は停滞によって支配されていた。
「どう?戦況は」
広大な草原を横切るように流れる川のラインに沿って作られた我らの防衛線。
そこの後方に存在する総司令部へとやってきた僕は疑問の声を上げる。
「何も変わりありませんよ」
答えるのは総司令部の中にいた高級士官である。
「最初の一、二週間はこちらの防衛線が完璧で、敵の防衛線が不揃いであったことから、攻勢によって相手に大きな被害を与えられていましたが……既に敵も陣地を完成させたことから、完全に持久戦の構えとなっております」
長い前線に張り巡らせられた両軍の有刺鉄線に塹壕。
そんな中で両軍の相手で乱れ撃たれるのは魔法の数々。
日夜、大量の食糧をくらう兵士たちによって放たれる魔法の光と、それを受け切る結界魔法の光でこの戦場は明るく照らされている。
「だからと言って、何も起こっていないのだが」
両者完全に互いの陣地にこもっての持久戦となっている。
しばらくはこの持久戦が続くだろう。
「ですが、我が軍は徐々に優勢を掴みだしています。元より相手が奇襲だったからこそ、大きく我らは劣勢を強いられただけであり、既に我が軍は兵士を揃え、戦線に並べております。地力であれば当然、敵国よりも我が軍の方が上!必ずや勝利を掴むことができるでしょう!」
「そうだね……あまり、長引いてもらっても困るけど」
「確かにそうではありますが……それではいかがなさいますか?何か、策を用いて撃って出ますか?ここから挽回する策などあまりないようにも思いますが」
「しない。強者は奇策なんてものに走らないのだ」
奇策とは持たざるものを
この場において、持たざるものとは僕たちのことではなく相手のことだろう。
「相手の生半可な奇策を打ち破り、我らが勝つ。それでいいだろう」
「ハッ。それではそのように」
僕の言葉に高級士官は頷く。
「それじゃあ、僕は今日も敵補給を叩いてくる」
「行ってらっしゃいませ」
僕は今日も鉄の弾丸の代わりに魔法が飛びかい、空を駆る両軍の飛行部隊が制空権を巡って激しい攻防を繰り広げる空へと繰り出し、単騎で敵の補給を叩くべく加速するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます