療養院③
凸凹コンビは背の低いほうがヴェルナー・オットー、背の高いほうがテオドール・フォルスマンと名乗ったのは、自分で動けないほど重症な10名ほどの怪我人の世話をした後だった。小夜と凸凹の二人は汚いシーツをはがして新しいものと交換し、沸かした湯に浸したタオルで怪我人たちの体を清め、ベッド周囲をきれいに片づけた。
「サヨさん、すごいですね。みんな喜んでますよ。」
体が大きい割に気の小さいテオドールがようやく小夜に慣れたように話しかけた。食欲を取り戻した怪我人に粥を配り終えた小夜がようやく微笑んだ。
「ヴェルナー君もテオドール君も頑張ってくれたからね。」
≪しかしこの状況どうなってるのかしら?≫
小夜は自分が置かれた状況よりも、このひどい療養院なる建物への疑問が尽きなかった。凸凹コンビのヴェルナーやテオドールは17歳、詳細は分からないが彼らは知的階級の生まれで読み書きができたため、療養院の世話係に任命されたらしい。介護や看護の知識も持たず教育も受けずに。彼らの話では『治療術師』とやらに施された治療後、怪我人の体が完全に回復するには1週間を要する、その間を怪我人たちが過ごすのがこの療養院だそうだ。治療の技術はあってもその後の看護がなされないから、ばたばたと治療を受けたはずの怪我人たちが死んでいく。ちゃんとした統計は取っていないようだが、死亡率が4割を超える月もあったらしい。
≪私が来たからには絶対この状況を改善させてやる。≫
自分が置かれた状況が全く分からない中、小夜は決意に燃えていた。
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