第22話 神格化
結婚式とは言えないが、創造神の前で簡単に誓ったところで、ククは満足して白狼を呼んだ。
だが、白狼は無反応で池を見ている。
それにより、ククはまたしても嫌われたかと焦ったが、東屋に入ればこちらの声は外部に洩れないと、創造神が教えたため、ククはホッとして東屋から出ようとした。
しかし、シシがククを抱き寄せ、まだ重要な話が終わっていないと言う。
「黒天、確認したい事がある。ククは神になってるのか、それとも神格化されているだけなのか、それによって今後どうするべきか決まる。ククには、教えないといけない事が沢山あるからね」
(神?神格化?この僕が……全然想像できない。確かに、僕はモノノケから好かれてるし、シシが愛してくれてるけど、下界ではあんまり……)
「ククを神格化したのは、モノノケとキミの眷属達じゃないのかい?古竜がククの匂いに耐えられるほど夢中なんだ。古い神が二人もククに夢中で、今現在、最も多いモノノケがククを崇拝している。それに私の息子でもある。これは、神になるのも時間の問題だね」
「古い神はやめてもらえるかな」
「そんな事、気にするものかい?私は事実を言ったまでで……年寄り二人が私の息子に夢中というのも面白い」
面白がっている創造神は、シシがどれだけ文句を言っても笑って流し、最初にククが勘違いしてしまった事についても文句を言えば、創造神はククにだけは謝った。
だが、もうその件は気にしていないククは今、自分が神になったらどうしたらいいのか気になっていた。
「父さん、僕が神様になったら、何かやらないといけないの?シシは循環してるよね?」
「待って。そうだ、忘れるところだった。俺はもう、魂の循環はしない。愛がない循環は、いつか失敗してしまう。実際、俺はククを優先するようになってから、正直循環している時間がもったいなくてね。また俺の発情期がきたら、ククを抱き殺してしまう」
(……僕の発情期がこないからだよね。シシは、全部の時間を僕に使うつもりなのかな)
ククの発情期がこなければ、シシは定期的に発情期に入るため、魂の循環が疎かになるのだ。
そもそも冥界を維持し、常に天界と下界をジオラマに更新しているため、ツガイ持ちとなったシシが魂の循環まで続けるのは無理な話だった。
自分の発情期がこなくとも、ククの発情期がきた場合、何日もククと部屋にこもることになる。
そして、運命のオメガであるククに運命だと認められるには、全てをククに捧げる必要があると、創造神も理解している。
「それに、ククは活発だからね。いろんな所に行きたがるし、俺とのデートを楽しみにしてる。可愛いツガイが毎回着飾ってくれて、贈り物も毎日毎日……俺との時間も邪魔はされたくないなんて、可愛すぎて放っておけない」
「どうせ惚気るのなら、ククについて詳しく教えてもらえるとありがたいね。はぁ……まあいいよ。魂の循環を続けるのは、無理だと思っていたからね。ただ、残念なことに循環を任せられる神がいない」
「それなら、冥獣に任せようと思ってる。彼らの管理場所は水没しているし、天界で遊べるほど暇なら、仕事を与えた方がいいからね」
「ふむ……確かに、冥界に馴染める冥獣四人が頑張れば、今の循環量は問題ないだろうね。けれど、私はそろそろ人々の衰退をどうにかしようと思っているよ。その場合は、循環は別な形にしようと思っている」
どうやら、冥獣は水没している都市を管理しているようで、現在は天界で遊んでいるらしい。
そして、今のシシはこれまでのように、冥獣のサボりを許すつもりはないようだ。
水没しているとは言えモノノケはいるため、たまに争いがおこっていたのを、古竜とシシが対処していたのだと言う。
だが古竜の場合は、冥獣を戻す為に水没都市をなんとかしようと、密かに魂をモノノケへと変えていたようで、それにより下界も冥界もモノノケが多くなってしまったのだ。
「俺は、魂が望んでモノノケになっていたから止めなかったけど、冥界の都市はいまだに水没している。それに、循環しても望みがない魂ばかりで、転生したがらないらしいんだよね。何度燃やし尽くそうと思ったか……今ある魂は、もうこの世界で何かを経験したいとは思ってない。まだまだ未熟であるにも関わらず、衰退していく世界には興味がないらしい」
(だからシシは、僕が最初に訊いた時、どっちでもないって言ったんだ。確かに、魂が転生を望んでないなら、冥界の都市が水没してても、下界が衰退してても、それが良いか悪いかなんて、判断できないね)
一見、第二の性によって陸に女性がいなくなり、産まれる先がないように思えるが、それは衰退のきっかけに過ぎなかったようだ。
魂が転生を拒み、それが続けば更に人々は衰退していく。
そして衰退する世界を見た事で、更に転生を拒む魂が増えるという悪循環が、今の水没都市となっているらしい。
「それは私も産神から聞いているよ。人々も私も、判断を間違ったのかもしれない。それでも後悔はない。私も学ぶことができたし、なによりククをシシのツガイにできた。実を言うと、このまま陸の人々が衰退するのなら、自然に任せても構わないと思っているんだよ。彼らが動くのなら、私は私の息子の為に行動できる彼らを見守る」
創造神は、流底にいるククの家族を気にかけていたらしく、彼らが今、陸へ乗り込もうとしている事を知っていた。
ククが亡くなった際、共に海へ引き摺り込まれた獣人達を、ククの家族は海龍の贄にしようとしたらしい。
だが、その前に陸でのククの様子を、獣人達に訊いてしまったようだ。
そこで、贄にされたくなかった獣人達は、ククがどんな扱いを受けて生きていたのかを話した。
その結果ククの家族は憤り、陸の事を全て調べたのだ。
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