雨よ

 雨よ、私の住む世界から全ての音を奪っておくれ。地上を満たす愚かしい響きを拉し去っておくれ。


 愛を囁く甘い声、悲嘆に暮れる苦い声、晴れやかな祝いの歓声すらも、み空から下るお前の音色で包んでおくれ。


 何もかもの声を、そう何もかもの声を包んで、世界の外へと運んでおくれ。


 私に必要なのは沈黙と静寂なのだ。新たな詩が生まれる時、それは無音のうちにある。


 私の沈黙、私のうちなる静寂と地上の静寂とが結び付く時、私のうちに新たな詩は生じるのだ。


 だからどうか雨よ、私に静寂を与えておくれ。新たな詩の生まれる時、私にはお前の助けが必要なのだ。


 雨よ、私に詩を恵む雨よ、どうかお前の声を届けておくれ。私はお前を歌いたいのだ。


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