明日はストライク
モス
始まりの練習試合
―照りつけ太陽、鳴り響くセミの鳴き声、グラウンドに広がるナイン…半年前はゲッツーすらわからなかった俺たちが全国への切符をかけて戦う日が来るとは誰も思わないだろう。
中学2年の6月俺は不登校になった。理由は単純、いじめられたからだ。銀星中学。県内唯一の県立の中高一貫で、俺が通う学校だ。中高一貫ということ以外は特にこれといった特徴はないが、とにかく運動部が弱い。俺が一年のときから所属していたサッカー部も全部初戦敗退だ。
不登校になって半月今日も自分の部屋に閉じこもる。もしかしたら一生この生活が続くかもしれない。というか多分そうだろう。
「ピーンポーン」
不意に玄関チャイムが鳴った。どーせ宅配便かなんかの勧誘だろう。無視無視。と思ったが、
「ピーンポーンピーンポーンピピピンポーン」
まさかの連打。いくらなんでも失礼だろうと思いながら一階に降りてドアを開けると、そこにいたのは、クラスで唯一話せる男子宮野真也だった。
「よっ、モス」
「おぉ、真也か。てかお前学校は?もう8時すぎてるだろ!」
「それはこっちのセリフ。なんでお前パジャマ何だよ!元気そうだし学校行けるだろ」
そう言って真也はドヤ顔で親指を立てた。何も言い返せない
「ま、まぁそうだな。元気だし学校行こうかな…」
どうせ断っても、意味ないし 半月ぶりに制服に袖を通す感覚はどこか新鮮だった。
半月ぶりのクラス。半月ぶりの1限目は、英語、か、ダリー
英語教室は席替えしたらしく、俺のペアは、佐竹真菜か、うんまじで誰?不登校が久々に登校して一発目が話したことない女子と英会話とか、終わったたwとりあえず席について本でも読んどくかと思ったら
「おはよー君が橋岡くん?よろしくね!」
佐竹真菜と思われる人物が不意に話しかけてきた。
「あぁよろしく…」
最低限の挨拶を済ませるのと同時にチャイムが鳴り女性教師がドアを開けて
「号令お願いします」
と言う。
授業開始から約20分今はペアで英文の確認をする時間のはずなのだが…寝てる。佐竹寝てる。俺なりに机揺らしてみたりして起こそうとしているのだが、正直確認してもらわないとかなり困るし、と思い、人生初の肩トントンしてみた。結果起きた→助かった。
そんなこんなで1限終了後
「今日は、起こしてくれてありがとう」
急に佐竹から声をかけられた。小学校の頃すら女子とまともに話したことなかった俺の頭の混乱度は世界記録級だろう。とりあえず適当に返事をして足早に教室を去った。ちょっとかわいかったな。そう思ったのはその日の夕方だった。
部活は休むと顧問に伝えて急いで家に帰りベットにダイブ!この瞬間が1番の楽しみ!でも久々の学校は意外となんとかなったな。明日は土曜か、ゲームするか…そんな事を考えているうちにゲームにグインせずにいつの間にか寝落ちしてしまった。
翌日
「モスー真也くんがお呼びよー」
部屋で着替えていると不意に母に呼ばれた。真也が朝から何だよ!なんかあったに違いない。急いで階段を駆け下りる。そこには野球部のユニホームを着た真也がいた。
「お前メッセージ見たか?」
あっやべぇ昨日寝落ちして見てないとは言えない。がユニホームを着ているということはなんとなく察しはつく…今日は野球部の数少ない練習試合があるのだが、誰かがやすむことになって、少年野球やってた俺に助っ人を頼みたいのだろう。
「分かった要は試合に出ればいいんだろ」
真也がコクリと頷く。真也には借りが山程あるからNOとは言えなかった
「とりあえず5番ライトで行ってくれ。途中から一人来るはずだからそれまで頼む!」
「はいはいわかりました。」
約二年ぶりにユニホームに袖を通す。少し小さいけどその分成長したってことだよなと昔お思い出に浸っていたいのだが、すぐに来いとのことなので二人で急いで学校へ向う。
真也は学校へ向かう途中部員の名前やポジションなどを教えてくれた。
宮野真也 二年 主に外野とショート これでも部長らしい
大川修司 二年 キャッチャー 初心者組では1番の才能の持ち主
横山弘大 二年 サード 初心者でヘタクソだがムードメーカー
中田林 二年 セカンド 初心者で部1の真面目さと信頼を持つ
谷井優太 一年 ピッチャー 強豪チーム出身の期待株
この5人+初心者と一年って感じらしい。
そんなこんなで学校到着。みんなはもうアップを終えたみたいだ。これ結構ぎりだったなw
部員に挨拶した後真也と軽くキャッチボール。二年ぶりの試合にワクワクしている反面かなり緊張してきた…
顧問が集合をかけ、スタメン発表されるとまもなく試合が始まった。相手校は中堅校の二軍らしくうちらと同じように初心者も含まれているが、スタメンはみんなゴリゴリの経験者。しかもなかなかの強豪
まずは我らが銀星の攻撃は幸先よく1、2番がヒットとフォアボールで出塁すると3番がしっかり犠打を決め4番宮野!が、初球腰にデッドボールを御見舞され、まさかのワンナイト満塁で俺の打席だ。投手はよりによって苦手な左サイド。左打ちにとって悪魔とも言える存在だろう。初球インコースへのスライダーはボール。人生初の変化球がこれか。2球目得意なアウトコースへまっすぐ!甘い!!!そう思ってバットを振ったが、次の瞬間ボールが止まった。やられた。中学初打席は変化球に翻弄されまくり結果1-2-3のホームゲッツー。やってしまった。ま、所詮助っ人だしこんなこともあるか、俺を含め全員がそう思っているのは肌で感じられる。とりあえずグラフ持ってライトへ向かう。銀星の先発は期待の1年谷井。ものすごい豪速球やキモい変化球を投げる訳では無いが、その投球は安定そのもの。おそらく格上相手に初回を三者凡退で切り抜けた。純粋にすごい…
2回も互いに0点3回に谷井が打たれて3点を失うも、戦力差を考えたら大健だ。なお俺の2打席目はものの見事に三球三振…
そして4回の表7番の中田がフォアボールで先頭が出塁しここから反撃だ!というとこに
「こんにちはー遅れてすいません!」
どこかで聞いたことのある声が聞こえた。聞こえた方を見るとなんと佐竹真菜がユニホーム姿で立っていたのだ。どーゆーことー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます