運命の物語(おはなし)
涼
第1話 出会い
その子との出会いは、運命だった。初めて彼女を発見した時、思わず……、
「キレー……」
と、口からポロリと漏れたのだ。その人とは、
「閃ちゃーん! おはよー!」
「あ、
「ねぇ! 閃ちゃん、いつものあれお願いします!」
「…………充希、あなたね、私は、あなたの専属占い師じゃないんだけど?」
そう。閃ちゃんは、占い師なのだ。
ご両親がそうだったわけでもなく、閃ちゃんだけが、生まれて来るなり、不思議な力が宿っていたらしい。霊のようなものは見えないらしいけど、人の未来を当てるのは、物心ついた時から、とてつもなく得意だったのだそう。
閃ちゃんの占いは少し変わっている。
まず、両の手を、水を掬い上げるようにまあるくすると、そっと瞳を閉じて、集中すると言う。そうすると、掌に、目の前にいる人のありとあらゆる運命が吸い込まれてくるように浮かび上がって来て、脳が冴えるようにその人の未来や運命が見えるのだ。……とか言ってた気がする……。
閃ちゃんは、本当に頭も良くて、成績はいつも学年トップ3に君臨する。背も、170センチあって、スラッとモデル体型で、髪なんかもう腰まであるロングヘア―で、そして、私が高校の入学式の時、おっぺけぺーな声を上げてしまうほど美人さんなのだ。
「分かってるんだけど……分かってるんだけど……凄く当たるんだもん!!」
「……そりゃどうも」
閃ちゃんが、少し呆れた……みたいな顔をして、それでも、ふっと微笑んでくれた。閃ちゃんは、性格も良いのだ。皆に優しくて、皆から信頼されてて、皆、(特に男子)閃ちゃんに憧れている。
「じゃあ……見てくれる?」
「良いよ。前、座って」
「はい!」
私は、慌てて閃ちゃんの机の前に座った。
「今日は何を占って欲しいの?」
「う~ん……私に好きな人っていつ現れるんだろう?」
「え……そんなこと占うの?」
「え?なんで?なんかおかしい?」
「おかしいでしょ。そんなこと知ったら、きっとつまらないよ?究極の出会いは、いつ訪れるか分からないんだから、その瞬間までとっておいたら?」
「……そんなこと言ったら、占い師やる事ないじゃん……」
「あ……そうか……」
「閃ちゃん、頭いいのに、たまにすっとぼけてるよねー! あははは!!」
「もう充希には2度と占いしてあげない」
「えぇ!? 嘘でしょ!? うわーん! 撤回します! 今の全部撤回しますのでぇ~!!」
こんなやりとりが、もう半年も続いている。
遅くなりました。私、
それは、そう。もう、皆様もお察しの通り、私は、無類の占いマニアなのです。だから、綺麗で聡明な閃ちゃんが、占い師だと知って、しかも、同じクラスだと分かって、私はもう閃ちゃんを私の専属占い師にするしかない!! と思ったのです。
もう一つ、閃ちゃんの雄姿をお教えするとしたら、やっぱり、自己紹介の時しかないでしょう。
「姫野閃です。特技などは特にありません。ですが、皆さんに、幸福が訪れている事は、何となく分かります。そう言う、勘……みたいなものは、よく当たる方です。ですので、この感覚で皆さんをお守りする事が出来るなら、それは、特技の一つかも知れません」
と、滅茶苦茶真顔で言ったのだ。皆さんをお守りする。この言い方に、私は、占いマニアの私だけは、ピンと来たんだ。
(この人……もしかして占いとかできたりするんじゃ……)
そう直感した私は、ホームルームの後、すぐさま、閃ちゃんの席に向かった。
「あ……あのぉ……姫野さん」
「はい」
「ちょっと、小声で話しますね」
「はぁ……」
閃ちゃんはその時、私が気付いたとは全く思ってなかったらしい。だから、その時はとても驚いたと言う。なんでかって?それは……、『だって、充希、勘とか直感とか鋭いようには全然見えなかったから』と言う理由だった。
私は、もちろん、少し凹んだが、小声で、その後も続けた。
「ひ、姫野さんて、もしかして……占いとかできたりしませんか?」
「!」
「あ! その顔はもしかして……!」
「……なんで分ったの?」
「あの意味深な自己紹介だよ。私ね、占い大好きで、占い師とか、そう言う人見つけるの、めっちゃうまいの! だから、きっとそうだと思って!」
そう言うと、閃ちゃんは、明らかに少し焦って、私に、耳を貸せ、と合図した。そして、本当に、本当に小声で、
「確かに、占い師とは名乗ってないけど、かなりの確率で、運勢や未来を当てる事は出来るの。内緒よ?」
その時、私の左耳から、悪魔の囁きが聴こえた。
「……じゃあ……内緒にしてるから、時々私の事、占ってもらえませんか?」
「……う~ん……まぁ、時々なら……」
「やった! ありがとう! 閃ちゃん!」
「!」
閃ちゃんが、余りに目を丸くしたから、私は何事かと思って、そのまま思った事をぶつけた。
「何? 何かあった?」
「……分からなかった……今、あなたが私の事閃ちゃんて呼ぶの、見えなかった……」
「え? それって、そんなに重要な事なの?」
「なんか……不思議な子みたいだね……」
「高校入って、初めての友達になってくれる? 閃ちゃん!」
そして、あっけにとられている閃ちゃんをそのままに、私は、勝手に友達の資格を閃ちゃんからぶんどったのだ。
「……充希、よろしくね」
「うん!」
「……はぁ……」
と、閃ちゃんがいきなり大きな溜息を吐いた。
「え……」
「ううん。今のは、自分の力の確認。私が今、充希って呼び捨てにしても、あなたは怒らないって見えたから、そう言ったんだけど、怒って……ないよね?」
「当たり前だよ! よろしくね! 閃ちゃん!」
「うん」
その時の、閃ちゃんの笑顔は、きっと、男子が見てたら、皆、惚れてしまうんじゃないかと思うほど、とーっても、綺麗だったんだ。
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