常連のサンタさん

椿豆腐

おでん

「百合子ちゃん、もう一杯」


 閑古鳥が鳴く小料理屋で、陽気にお猪口を掲げるサンタさん。

 この時期は、おでんが美味しい。からしを添えて、ほろほろに煮込んだ大根を箸で割って頬張ると、熱い出汁がじゅわっと溢れる。そこへよく冷やしたビールを飲むと、スッと出汁の旨みが冴える。


「あらあら、今日も良い飲みっぷり」


 カウンター越しに熱燗を注ぐ。

 真っ赤な着流しから垣間見える火照った筋肉に、心の内も染まっていく。


「美味いなぁ。百合子ちゃんの酒が一番美味いなぁ」


 そう言っておでんを頬張る彼に、私は心底惚れている。


「私も、アナタの飲みっぷりが一番好きですよ」


 軒先で、閉店を示す暖簾が朔風に揺れていた。

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