第2話

 ダンジョン情報サイトを閉じると、すぐに西荻が大きな足音を立てて俺の方に近寄ってきた。そして俺の頭を思いっきり叩いてきたのだ。


「何、閉じてんだよてめえ」

「閉じたって何を」

「ダンジョン情報サイトのことだってよ。おまえのパソコンが開いていたサイトのことだよ」


 そう言って西荻は乱暴に俺を椅子から退かすと、パソコンの前に座って、マウスを操作した。


「くっそ、履歴からは辿れねえのか」


 西荻は俺の顔をじろりと睨みつける。俺は首を振って応えた。


「おまえどうやってこのサイトを開いたんだよ」

「パソコンを付けたら」

「本当か、まあ、おまえみてえな、ゴミが開けるサイトじゃねえからな」


 西荻はマウスから手を離すと、自分の席に向かった。俺は椅子に腰掛けると、再びダンジョン情報サイトを開くことにした。ダンジョン内の情報がタイムリーに流れてくるサイトで、登録されているボスモンスターの出現時間を管理しているものだった。一部の人間しか利用できないため、このサイトの利用者でボスの管理が行われている。


「あ、何そのサイト」


 振り向くと今度は神無月が立っていた。


「あ、たまたま開いてあって」

「ダンジョン情報サイトって書いてあるけど?」


 すぐに西荻が近寄ってきたのだ。


「てめえ、本当は開けるんじゃねえか。履歴でも辿れねえけど、根暗なパソコンオタクのおまえなら開けるんだろ?」

「まあ、西荻」


 神無月がそう言って西荻をなだめる。


「で、すごいサイトなのか?」

「ダンジョンのあらゆる情報が載っているんだよ。ちょっと退けって」


 西荻はそう言って俺を席から立たせる。ログインアカウントは俺のものだった。西荻はマウスを操作し始める。


「この学校、のどんなやつがログインしているんだろうかな」


 西荻がログイン情報を調べると、そこには「タイタン」というユーザーネームが書かれていた。


「まさか、偽物か?」


 そう言って西荻は神無月の顔を見るが、神無月は何がなんだか分からない様子だ。俺を一瞥するも、西荻はため息をついた。


「お前ら、タイタンも知らねえのかよ。俺がもっとも尊敬しているダンジョン探索者で、顔と本名は知られていねえが、ボス討伐数がダントツの1位のお方なんだ」

「へえ、で、このアカウントがタイタンなのかよ? とんだラッキーやな」

「まあ、偽物だろうけどな。それとも、この学校にいる可能性が、まあねえか。ありえねえ。おまえ、どうやってこのアカウントを見つけてきたんだ?」


 西荻は俺の顔を睨みつけ、マウスで催促するように矢印を動かしていた。


「えーと」

「吃ってねえで、さっさと答えろや」


 教室の扉が開くと、情報の先生が入ってきたところだった。仕方なくという感じで、西荻が席を立ち、自分の席の方へと戻っていった。情報の授業が終わると、西荻はすぐに俺の名前を呼んだ。


「覚えているよな?」

「西荻」


 神無月が言うのだ。


「先輩達との約束あるんちゃうか?」

「あ、ああ、そうだったな」


 西荻と神無月は情報室から出ていくと、俺はゆっくりと席を立ち、教室を後にした。この日は、西荻と神無月は情報の授業以降会うことはなかった。謎の先輩と何処かに消えてしまったのだろうか。俺は学校が終わると、近くのダンジョンによってみることにした。


 

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