第22話 剣聖と言われた魔族がいた2
和の国の国王シャーが、先制攻撃で剣を振るった。
魔族でもあるシャーの剣は、人間をはるかに上回る威力とスピードがあった。
(どうだ。人の強き剣士よ)
ところが、
すぐに両者は離れ、距離をとった。
「ほう―― われの一撃を簡単に受け止めることができる人間がいるとはな。暗黒騎士の中でも、我がひ孫1人しかいなかったのだがな。それではこれは!! 」
単発の攻撃ではだめだと感じたシャーは、すぐ連続
信じられないほどのスピードで、何回もの打撃があった。
しかし、悟はシャーの1回1回の打撃をしっかりと見極めていた。
彼は超感覚で感じていた。
ただ、シャーはとても強く、その剣に対応するのはぎりぎりだった。
(感じるんだ。精神体になって小惑星群の中で、打撃訓練をしていた時のことを)
やがて、突然シャーの打撃が止まった。
シャーはとても愉快そうに笑いながら言った。
「はははは エネルギーが切れてしまった。少し待ってくれ」
国王シャーはそう言うと、はるか後方に体を引いて
「
「はい。もちろんです。国王様、お願いごとがございます」
「許す。聞くことにしよう」
「私と聖女カタリナが、この和の国を通過するのをお認めいただきますか? 」
「なんだ。そんなことか‥‥‥‥ 」
国王シャーはしばらく考えているようだった。
「認めよう、と言いたいところだが、それには1つ条件がある。もう知っていると思うが、この和の国には私ととともに侵攻した暗黒騎士で構成された魔族軍がいる」
「はい」
「私はもう
「『聖女の命を奪うため独自に行動するかもしれない』ということですね」
「そのとおり。魔族軍は10万人くらいの暗黒騎士で構成されている」
「大丈夫です。どんなに多くの暗黒騎士が襲ってきても聖女を守り抜きます」
「われが教えた暗黒騎士だぞ、1人1人が相当強いのだが」
「たぶん、大丈夫です」
実は、全暗黒騎士のマスターで指令官であったシャーは心の底で思った。
(ああ―― この若者は剣が最強だけではなく。精神も充実して最強なのだな。やはり、あの聖女の守護騎士なのが理由か―― )
その後、シャーはこっそりと気が付かれないように、舞台のそばにいたカタリナを見た。
(美しい―― たしか、目の前で両親を殺されたとか。しかし、幸せをつかみそうだ。ほんとうによかった)
シャーは、カタリナが
カタリナと
そして再び街道を歩き始め、ロメル帝国に向けて進んだ。
「悟さん。暗黒騎士は襲ってくるでしょうか? 」
「そうですね。可能性は高いですが。大丈夫ですよ―― あっ!! 」
前方を見ていた悟が驚きの声を上げた。
街道の少し前方の横、大きな広場に軍が展開されていたのだ。
「カタリナさん。後ろで待っていてください。そして、聖女のオーラで自分の回りに結界をつくってください」
悟は最大限の注意を払い、前方に歩き始めた。
(絶対に守り切ってみせる!! )
ところが。
「おーい、おーい」
子供の声が聞こえ、展開した軍の中から、1人の子供が飛びだし近づいてきた。
そしてだんだん、その姿ははっきりした。
「あっ!! あの子は確か‥‥ 」
「僕です。武蔵です。試合場の舞台の下で木剣を渡しました!! 」
小さなかわいらしい子供が目の前に来た。
「きみがなんで、あのような軍の中から?? 」
「僕は、前国王の第一皇子なのです。そしてあれは、僕の元に集まってくれた国軍です。どうぞ、聖女様をお連れください」
悟とカタリナは、武蔵皇子に連れられて歩いた。
そして、国軍が展開している前に立った。
1万人くらいの数だったが、2人の姿を見ると、全員がひざまずいた。
その内、最前列の1人が顔を上げて言った。
「聖女様と守護騎士様、我々がお2人の警護のため、国境まで同行させていただくことをお許しください」
武蔵皇子が言った。
「今、指令長官がお願いしましたとおりです。どうぞ、お許しください」
「お心づかい。心の底から感謝致します。ありがとうございます」
カタリナの声は優しさにあふれ、全軍に響いた。
「お――っ 聖女様のお言葉を聞くだけで、心がなんて穏やかになるのだろう!! 」
「悟さん?? 」
カタリナは神宮悟の顔を見た。
すると、彼は微笑んで小さくうなずいた。
「お願い致します。しかし、十分に注意して戦ってください。自分に対する暗黒騎士にはかなわないと思ったら逃げてもよいのです。そして――
――絶対に死なないでくださいね。ケガを負ったら、私の結界の中に来てください。私が治癒魔法を使います」
国軍に守られながら、カタリナと悟は進んだ。
しばらくは何もなかったが、国境付近の平野地帯で異変が起きた。
専攻して進んでいた
「前方に、暗黒騎士の莫大な大軍が展開しています。数は約10万人、我が方の十倍」
武蔵皇子が言った。
「そうか。戦うしかない。ここはサムライ魂を見せる時」
皇子がそう言った後だった。
背の高い
そして、目を合わせて優しい、真剣な声で言った。
「皇子様。ほんとうの勇気は進むことだけではありません。ここまで来た途中に小山がありました。そこは、街道が狭くなっていました」
さらに続けた。
「そこまで撤退してください。大軍の身動きがとれない場所に誘い込み、両側から岩を落とし、矢を放つのです」
皇子はとても利発だった。
「わかりました。でも、撤退の途中で追いつかれてしまったら‥‥ 」
「私が時間をかせぎます」
「お1人で10万の暗黒騎士を!! 」
「大丈夫です。私が戦った今の国王シャー様は、相当強い暗黒騎士です。たぶん、今前方にいる暗黒騎士束になってもかないません。私は互角に戦えました」
カタリナが続けた。
「皇子様。私の守護騎士なら聖剣1本あれば十分です。全く問題ありません」
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