Thy

皇 遊李

エピローグ

私はこの春見事第一志望の大学に滑り込み合格を果たした。言い換えると逆転合格だった。高校1年生の夏から興味を持っていた大学に入ることができたのだ。余韻に浸る3月上旬。自信に溢れる3月上旬。


大学は関西にあるため、そろそろ引っ越しの準備をしなくてはと思い、荷造りを始めた。誰しも経験した事があるだろうが、荷造りをしているときに思い出が溢れかえってくる。

「お、これ懐かしいな。入学式の時の写真やん。俺の顔めっちゃ緊張してる。たしか、横のやつこん時俺に声かけてくれたよな。」


写真や工作品、手紙、プレゼント此等は私に過去の記憶をリアルタイムに思い出させてくれる。その度に、懐かしいものが出てきて独り言を言ってしまう。そうなると荷造りしているのを忘れてしまい、終いには明日でいいやと思って荷造りをやめ卒業アルバムや出てきた写真をベッドで横になりながら見てしまう。

そして寝落ちした。


懐かしいものを見ると、夢で回想シーンのような感じで見ることができる。この時、未だたかが十数年の人生でこんなにも思い出が有るのかと思ってしまう。80億人いる中の一人でまだ二十歳も超えてない俺でもこんなにも思い出が有るのか。


次の日、昨日放棄した荷造りを再開した。もう思い出は荷造りが終るまで見ないと決めても、出てきた思い出には抗えない。手にしたらノスタルジックな思いが私を包みこんでくる。そうなると昨日同様、思い出を読み漁ってしまう。

思い出の抗えない効力まさにスマホの如し。


ノスタルジックな思いに包まれながらもやっと荷造りが終わった。何でこう面倒くさいことを私は一心に出来ないのかと思ってしまう。荷造りしたものを玄関近くに運ぼうとしたとき本棚にぶつかってしまい本が何冊か落ちてしまった。やってしまったと思い本棚に一つ一つ戻していく。その時、本の隙間から空中をヒラヒラと落ちていく1枚の写真を見つけた。本を全て直してから床に落ちた写真を手にとって見る。そこには俺と女の子が映っていた。この写真の俺からするとこの写真は小学生の時の物だ。今から十年前のもの。勿論一人は俺だとすぐに分かったが俺の横にいた女の子を見ても思い出せなかった。失礼な事だとは思っていたけど、記憶に無いのは仕方ない(100%俺が悪い)。そこで思い出してみる事にした。

「ウ~ン、コレは5年生のときか?確か俺と仲良かった子はーーー。」

俺は物事を考えるときよく独り言を言ってしまう。こうすると脳の整理がしやすくなるからだ。


1時間後、

「あ~、やっぱ思い出せん。君は一体誰なのか。」

苦闘したが思い出せなかったため少しムカついてしまった。心のなかでWho are you?を連呼してしまう。疑問が晴れないまま生活するのは嫌だと思い親に確かめてみることにした。

 


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