compensation

皇 

悲しみは神が人間へ与えた代償

私「藁山渚」は捕まりました。殺人の罪で捕まりました。

右手にはそこら辺のスーパーで買える包丁が握られ生々しい鮮血がこびりついています。地面には女が倒れていて全身複数回刺しました。

通行人に見られ抵抗することなく、警察に現行犯逮捕されました。

車に乗る時にふと殺した女の方を見ました。

すると目を疑いました、女の人が私を睨んでいたのです。

その時私は初めて取り返しがつかないことをしてしまったのだと思いました。

車は高速道路を走り、景色を見ようと窓から覗いくと黒い世界が見えました。

窓は外から見えない構造になっておりそのため内側から外の景色をみても黒色にしか見えないのでした。

日本は殺人者思いだと感じると同時に私達から自由を奪っている様にも感じました。私はもう翼のない罪深き人間。

人々からは怖がられ憎悪を持たれましてや自由という品物を奪われるのです。

罪を受けたものは牢屋で生涯を送るか死刑か保釈されるか。

そう考えるともう何も考えたくなくなってきます。

車は高速を降り街並みを進んでいきました。日が暮れる頃に警察署に着きました。私は警察に連行され取調室にまぬかれました。

椅子に座ると怖い顔をした刑事が私に向かってこう言いました。

「貴方は人を殺した時どういう思いでしたか?」

私は言葉を並べようとしましたが思いという思いはありませんでした。

人を殺した時に悲しくなったり、嬉しくなったり、楽しくなったり普通はなりません。人を殺した時何も思わないと思います。ただ、殺したあとに残るのは後悔です。

「早く答えなさい。貴方の思いを聞いているのだ。」

「私は後悔が残りました。」

「それがあなたの思いですか?」

「はい、取り返しがつかない事をしたと思っています。」

「大体今まで殺人者は後悔しましたと言っています。貴方も殺人者と同じ心境なのですね。おやおや貴方は殺人者でした、当然の事でした。」

皮肉っている声がノイズのように聞こえた。何故彼等は私たちのことを皮肉って後悔している事実を一般的なものとして扱うのでしょうか。

「私は本当に思っています。人を殺めたのです。将来のある者ないしは楽しみがある者を殺して奪ったのです。私という卑しい人間の手で尊い命を奪ったのです。」

「では何故あなたは人を殺したのですか。」

.....何も答えられない。私本当に何をしてしまったのだろうか。自分が自分で怖い。あのときの思いが思い出せない。私は人間として終わっている。

「答えられないですよね。意味なく人を殺すような貴方には。何も考えられない、何も思い出せない、本能のままに殺している。貴方は血に飢えているのです。獣です。人外です。貴方は人を殺した代償として罪を償うべきです。例え死刑になろうと。」

「私は全てを受け止めます。代償を代償を。」

この後も取調は続いた。

そして20日後、高等裁判所にて裁判が始まった。勿論しなくても死刑だと分かっていた。死んで償う。死んで全てが終わる。しかし人生とは上手くいかないのである。

「静粛に。藁山被告人は一人の女の生命を奪ったのにもか関わらず死体を複数回刺し、人徳に反した行為とみなすので20年の懲役を与える。以上閉幕。」

カッカッ

ガベルがやけに五月蝿くなった。

人を殺したのに懲役20年?人生を奪ったのだぞ。代償が釣り合ってない。

「裁判官私は死刑に値します、どうか死刑を。」

「ウム、それはできん。君も一人の人間。君を今私が判決により死刑にしたとしたら私が君を殺したことになる。君にはまだ将来いや希望が残っている。十分に反省しなさい。それがあの人のためにもなるのですよ。」

私は木製の天井を見つめ涙を流した。

裁判官は大きな声で言った。

「以上でこの裁判は結審となります。」


刑務所の中で寝ることになった。当然悪環境で布団がありえないくらい固い。

寝られない私は壁によりかかり、大好きなシェイクスピア作のマクベスの言葉を悲しみに暮れて言った。

「人生は動く影、所詮は三文役者。色んな悲喜劇に出演し、出番が終われば消えるだけ。」

........

私の声は青い牢獄に響き渡る。格子から見える月は私を照らしていた。

月、貴方は私という悪者の心を照らしてくれるのですか。月は雲に隠れもう私は月にまで見放されてしまったと嘆いた。

所詮人生はそういうもんだ。いくら歩こうと強い人間が現れそいつ等は私のプライドを奪い私はそれに嫉妬する。私は昔から変わらない。嫉妬は人間にとっての大罪。ある意味神が与えた代償。私は生まれながらにして代償を受けた。

人は何故平等に生まれない。何故なのか?

なぜ私はいつまでも変われないんだ。何故私は人として歩めないのか?

何故だ何故だ。

私は自分自身を責める。私はもう生きてはならない。私に明るい未来はない。

激しい憎悪を人々が持つようになると言ったが何より一番持っているのは私なのだ。

一体私は誰なのだ。

「悲しみは神が与えた代償ですよ。そして生きることは神が与えた祝福なのですよ。」

私は驚いた。

他には誰もいないはず。横を見た。すると、さっきの刑事がいた。

「私はあなたをここからは出せないが話はできる。話してくれませんか。どうしてあの女性を殺したのか。」

私は心を落ち着かせ言った。

「私は・・・・・・・・・・・・」






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