同じ攻撃ばっかのお二人
「なんかあの二人ヒートアップしてるな」
「大丈夫か?」
「多分...」
第二試合が始まり、闘技場の上には神崎と柳沢がいた。
二人の様子を見ていると、互いに挑発し合い、歯止めがきかなくなってきているように見える。
「まぁ、あれでいて柳沢さんは戦略を建てることが得意ですから。何か手があるんですよ。...きっと」
「そうなのか?俺はてっきりその逆なのだと」
「確かに最初はそう反応するわな。あのタイトルを聞いたら」
<
俺が思っている力とはまた違うものなのだろうか。
「見てれば分かるさ。痛っつ」
「おっと悪い。もう少し我慢してくれ」
俺は牧村が先程の試合で負った傷を手当していた。
俺も傷を治す系のタイトルを手に入れようかな。今までは俺に仲間ができるとは考えたこともなかったし、俺自身に怪我を負わせられる存在がいないため、そういったタイトルは獲得するのを後にしていたからな。
なんて、これで手に入るんだがな。
ピコンッ!
『<
まさかの、運よく牧村の手当をするとタイトルが獲得できるとかいうウィンドウが出たんだよな。
俺は<Yes>を押す。
『<人命救助>を保持しました。既存保持タイトルの影響で、<人命救助>は<
そんでもってのタイトル昇華。医師免許とか持ってないんだけど、最初からこんなタイトル貰っていいのか?
ま、ラッキーと思っておこう。
♢
牧村はこんな奴を相手に耐えてたの?!
神崎の攻撃は実際に対面すると、想像以上に強力なことが分かった。
避けても避けても、次々に攻撃は降り注がれ、少しでもかすれば確実にそれは痛手となる。
緊張感の中での体は思うように動かすことが困難であり、それもまた私の足を引きずろうとする。
それでも、私は闘技場の上で未だ逃げ続けることができていた。
「さっきの奴といい、お前といい。あんなに息巻いておいて結局は逃げるだけか?」
「ごちゃごちゃとうっさいわね!そんな相手に一発も当てることができないのはどこの誰かしら?」
なんとか耐えることができているのは、やはり自身が持つ力のお陰だろう。
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例え、相手の攻撃が次にどんな風に来るのかが分かったとしても、その対処は自分自身がしなければならない。要は、見えるだけ。
だが、それだけでいい。その後の対処は他のタイトルで補えばいい。
<
その影響か、タイトルが表れた後、代々柳沢家の者はこのタイトルを必ず獲得してきた。もちろん、私自身も。
このタイトルは身体能力を上げることに加え、五感が研ぎ澄まされることで、超人へと変化する。ただ、私自身がまだまだ未熟なせいで、相手を倒すまで自分で発した殺気で自分自身まで支配される。
ゲームでいうところの、バーサーカーになるような状態に近い。これでは、全く違うタイトルを使っているようなものね。
ドォン!!!
神崎の攻撃を避けると、先程避けた場所と同じ場所に攻撃が入り、砂埃が舞う。
一瞬自身の体が神崎の視界の中から消えた瞬間、私は腰にしまっておいたナイフを二本投げる。
ヒュッ——
「ふっ...。っぶねぇな」
「ちっ...」
一本目をぎりぎり避けた神崎に二本目のナイフが襲い掛かるが、黒い煙でナイフが弾かれてしまう。
だけど、あの煙を使わせるのがこっちの最低目標だから全然大丈夫。
「...結構簡単に見せてくれるのね」
「以外とやるじゃねぇか。だが、所詮は雑魚は雑魚のままなんだよ!」
ドォン!!!
「...減らず口が」
とはいえ、このままでは牧村と同じ結果になりそうね。
ただ彼の攻撃を避けていても、ナイフを投げるくらいじゃ勝てない。
やっぱり、こっちも更にタイトルを使った方が良さそうね。
「<無為無策>」
「何をしたって意味はねぇぜ?!」
「あんたこそ、いい加減その変わり映えのしない攻撃をやめなさい!」
神崎は牧村との時と同じように剣に力を溜め込み、強力な一撃を放つ。
私には牧村のように剣を受け止め、跳ね返すことはできない。だけれど、その策。私も使わせてもらう。
ドォン!!!
「はっ。お前にはさっきの奴と同じような芸当はできなかったみたいだな」
——
辺りが静まり返る。
そりゃあ、自分の視界から相手が消えれば、勝ったと確信してしまうだろう。
だが、実際はただその言葉通りになっただけで、私を倒すことはできていない。
ゆらっ...
「ッ!?」
ヒュッ!
「っぶねぇ」
避けられてしまった。しくじったな。
「まさか、あの一瞬で俺の背後に回っていたなんてな」
「...それでも、結局は不意をつく前にあなたのタイトルに気づかれてしまったようだけど」
「あぁ、もしものために俺の周囲にこの煙を張っておいて正解だったって訳だ」
まったく、あのタイトルはなんなのよ。
ただ、ひとつ分かったとすればあれはやっぱり防御系ってこと。
ここませ派手に煽っているのに、使い方は必ず一定して自身の周囲のみ。
どうやって攻略したらいいだろう。
ん?でもそういえばさっき...。
「一か八か、牧村の策を使わせてもらうわよ」
私は<先見>を利用して、神崎が確実に避けられない位置に数本のナイフを投げる。
「ちっ。いい加減その豆鉄砲やめやがれ!」
神崎は、確実に避けられないことを感知すると、先程まで周囲一面に広げていた煙を自身の体へ巻きつけるように変化させる。
そして、神崎は剣で弾く、避ける、煙で弾くの三つの動作をこなすことでナイフから逃げてみせた。
やっぱり。あのタイトルの弱点は...。
私はもう一度、ナイフを神崎に向けて放つ。
カキンッ
神崎は剣でナイフを弾く。
「ん。どこへ行った?」
剣で弾いた時に生まれた一瞬。目を話した隙に私は神崎の背後を取る。
煙は、神崎の周囲を舞う状態と、服のように纏う状態のどちらかでしか使用できない。
そして、舞っている際は物体を通してしまうが、攻撃などの感知に特化できる。
纏っている際は物体を通さず、防御性能が上がるが、感知能力が劣る。
この二種類の形態があるタイトルなのだとすれば、私が背後に回った際に煙が纏っている状態なら気づかれることはない。
牧村がやったのと同じように、数度同じ攻撃を繰り返すことで、必然的に次も同じ攻撃をするだろうという思考へ相手を誘導する。
だから、神崎は私が次も同じようにナイフを投げると考えた結果、私を見失ってしまった。
だけど、私には神崎相手では牧村と同じように負けてしまうだろう。
牧村との試合の時も神崎の不意を突くことはできたが、倒すことはできなかった。
だから、神崎が反撃する前に倒しにいく。
「はぁっ!」
神崎が私の存在に気づき、後ろを振り返る瞬間を狙い、唯一煙が纏われていない目元を狙う。
私が持つナイフの先と神崎の眼球が紙一重まで近づく。
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