すてきないきもの
緑苔ピカソ
0.密会
その様子を遠くから見た散歩中の男は、ふと足を止めた。
女性の方に見覚えがある。服装や化粧がいつもとは異なっているが、同僚の女性教諭に違いない。
男は好奇心に駆られ、散歩を中断してそのカップルを眺めた。
彼女の隣に座っているのは、男性というより少年といった方がしっくりくる、若い男だ。
いや、この少年にも見覚えがある。確か、1年2組の生徒ではなかったか。
男子生徒と女性教師が、休日にこんなところで何をしているのだろう。
教師の方は40がらみだったはずだが、外見は年齢を感じさせず美しい。高校生と不純な関係を結んでいたとしても、おかしくはない。無論、あってはならない事だが。
そんな考えを巡らせていると、とんでもない事態が起きた。ベンチに座るふたりが抱き合い、キスをしたのだ。
決定的な瞬間を目撃してしまった男は、身の毛もよだつ思いだった。数十秒間立ちすくみ、我に返ると急いでその場を離れた。
キスを終えたあと、
これは許されない事だ。男は同じ教師という立場から、そう考えた。
明日学校で会ったら、彼女を問いつめよう。それから、彼女が生徒と別れるか否かには関係なく、校長に報告するべきだ。あるいは、保護者への連絡が先だろうか。
いずれにせよ、ただちにあの女を、教壇から引きずり降ろさねばならない。
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