結婚式編
第149話 緊急の呼び出し
飛行船は墜落することなく、無事に到着した。だが、何千何万回の飛行に一度起きるかの墜落事故に、私は巻き込まれる気がする。
だから、私は極力乗りたくない。乗るならば海の上限定がいい。
「新婚旅行は、飛行船で世界一周もいいですね」
「世界を巻き込んで大変なことになりそうなので、王妃様が許可されないかと」
レオンとザクロの会話を聞き、腹が立つ。
「しばらく旅行はいりません」
エスコートを受けながら馬車に向かう。馬車の前には城でよく見る侍従がいた。
「お疲れのところ大変申し訳ございませんが、お二人には事情を伺いたいと陛下が……」
申し訳なさそうだが、断れない命令であることはわかる。
「それほど急ぎですか? 明日には登城いたしますが」
レオンが少し嫌そうだ。色々と大変だったので私も休憩したいから気持ちはわかる。
「ごもっともなご意見ですが、あまりにも想定外の功績を上げられましたので」
「わかりました……。魔法石も一緒に運びましょう。こちらで管理するのも心配でしたから」
もらってきた魔法石がリリアン様に見合った品質であるといいが……。目的のものと違うなんて事態になったら困る。何よりも他の魔力に汚染されるのが怖い。
王宮行きの馬車に乗り、すぐにうとうとしてしまう。
馬車はいい、墜落する危険がない。
特別に産まれた国が好きだという認識はなかったが、やっぱり落ち着く。
「リラ殿、お疲れのところすみません」
もうすぐ着くという頃になってレオンに起こされた。
「寝てました……。ふぁっ……」
あくびをして体を伸ばす。少々行儀が悪いが馬車の中でくらい許して欲しい。
「リラ殿とは婚姻契約書も交わそうと考えています。結婚した場合は婚約と違い財産分与や、将来子供ができた時の養育についての問題も出ます。無論、離婚するつもりはありませんが、ないからこそ、きっちりとリラ殿に不利とならない約束を交わしておきたいと思っています」
「……」
寝起きに真面目な話をされる。私は寝ていたが、レオンは道中色々と考えていたようだ。
離婚は貴族間ではあまり多くない。別居は多い。離婚すると生活に困窮する夫人が多いからだ。
色々な家にいたので、愛が深いほど憎悪が大きくなる例も見てきた。
好きだから離婚なんてありえないと、離婚時の条件を決めないことが多いのだ。
「母からも、結婚するならばリラ殿にとって不利にならない条件を付けるようにと言われています。リラ殿は、準男爵で、家格としては公爵家とはかなり差がありますから、権力で結婚を迫る以上、それに見合った保証はしておくようにと」
レオンの母親たちは公爵様に色々と条件を飲ませて結婚しているようだったので、事前に交渉をしっかりしたのだろう。
それを息子にも言うあたり善人だし、私のことを考えてくれている。無論、跡取りができた時に揉めないようにという配慮もあるだろう。金で解決できる方が公爵家にはいいに決まっている。
「わかりました。ある程度はこちらで考えて、シーモア卿に確認してもらいます」
「シーモア伯爵から、許可が出ればすぐにでも婚姻の届を出しましょう」
「………はい」
まっすぐに言われて、目を逸らしてしまった。
色々と大変な事が続いていたので、あまり考えないで済んでいたが、国についた途端、思い出してしまった。
レオンが死んでしまったかもしれないと思った時、とても恐ろしかった。その時の感情は、もう誤魔化せないものだ。
「ザクロ、旅の間は有難う。余計なこともされた気がするけど、とても助かりました」
話を変えたくて、王宮に戻れば王妃様付きのメイドに戻るザクロに礼を言っておく。
「わたくしも、リラ様のお世話は楽しくさせていただきました。ご健闘をお祈りいたします」
王宮につくと、レオンのエスコートを受け、王宮の奥に案内された。ザクロとは先に別れた。王妃様の許へ向かったのだろう。
私がレオンを助けるための状況も報告される。
以前はただの妄想ですと済ませられたものを現実に抱えることになった。
今、私はレオンから婚約破棄をさせたいと切実に思っている。けれど同時に、それがとても怖い。だから、いっそ早く婚約破棄をされたい。
好意を持ってしまったからこそ。近くにいるのが怖い。
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