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 ぼくに対する担任からの嫌がらせは依然と続いていた。

 家庭訪問では、家人の前で愛想を振り撒いて良き教育者を演じ切り、普段教室では見せたこともない柔和な笑みと上辺だけ凪いだ穏やかな眼差しでぼくに次の家庭訪問先への道案内を求めた。道行き、共に歩を進めていたら、玄関先での母の見送り姿が視界から消え始めた途端、一旦沖の彼方へと引いていた潮が、狂暴極まりない怒涛となって彼女の視線から押し寄せ、ぼくのまなこに襲いかかる。彼女のうねった胸底から吐き出された、口ほどにものをいう瞳が起こす津波から逃れん、とぼくは伏し目がちに恐る恐る「あそこの家です」と次の訪問先を指差してやった。と、尚も無言のまま苦虫を噛み潰した表情を一瞬見せたかと思えば、突如豹変し、凍てついた眼光を浴びせかけながらつっけんどんにまたもやぼくを罵倒し、「ついて来るな!」とぼくをその場に足止めしたあとで、不適切な捨て台詞をひとつ置き土産に去って行った。あの人間味のない目の色は、いつまでもぼくの脳髄を突き刺して記憶の底へと沈められた。恐らく一生忘れはしないだろう。今もって何かにつけふと思い起こされる。地獄の番人ですらもっと優しい目ではないかと思った。

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