28_イチゴ
ホテルを出てスマホをチェックすると、響からメッセージが届いていた。
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好きなの? 嫌いなの? どっち!
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605号室に入る前に、イチゴが好きかどうか聞かれていた件だ。既読だけ付けて返信していなかったので、催促してきたのだろう。
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遅くなってすみません・汗 イチゴ大好きです!
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既に響は仕込みに入っていると思うが、そう返事をしておいた。
続けて、香奈に秀利の事を報告する。
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お疲れさまです。さっき、ホテルを出ました。次もホテル行けそうです。
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お疲れさま! 探偵からも写真を押さえたって連絡入ったとこ。多分、佑くんの事も探偵が調べ出すと思うけど、ちょっとの間、我慢してね。
ホテルでは何かあった? 秀利誘ってきた?
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香奈は随分と楽しそうだ。自分で思い描いていた計画が、完璧に進んでいるからだろう。ホテルでの事は、極力正直に伝える事にした。香奈に嘘を言って、プラスになる事は多分無い。
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何それ、キモすぎ! ドン引きなんだけど!!
秀利がそこまで変態だったなんて・笑
とにかく、今日もお疲れさま! あと一回だから、頑張ってね!
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長かった運命の一日が終わりを迎える。
もう少し。あと、もう少しだ。
***
翌日の木曜日。こだまに入ると、響が声を掛けてきた。
「おはよう。持ってきたよ、お土産のイチゴ。これ、めちゃくちゃ美味しいんだぞ」
「おはようございます! こんな沢山いいんですか? ありがとうございます! ……そういや、すみませんでした。昨日は返事が遅くなっちゃって」
「ホントに。既読だけ付けて、何してたんだか。……そうそう、佑が一人前になったら、私も追加で休み入れて貰える事になったの。多分、私の休みは火曜日になるかな」
響が満面の笑みを浮かべて言う。
「本当ですか! 僕もそうして貰った方が気が楽です。いつか、僕たちだけで回せるようになったら、大将も休めるようになりますね」
「流石にそれは、まだまだ時間掛かるだろうけどなあ……まあ、それを目標にするってのもいいかもね!」
響はそう言って笑った。
もし、僕と響だけで店を回せるようになったら……想像するだけで、胸が踊った。
夕方までは元気だった響だが、20時を回った辺りから様子がおかしくなった。
「響さん、大丈夫ですか? 顔色良くないですけど」
「うーん、なんだろう……風邪の引き始めかな。ちょっと寒いんだよね」
店内は全く寒くないにも関わらず、響は小刻みに震えているようだった。僕は、カウンターに入っている大将にその事を伝えた。
「響! 帰れ帰れ! それくらい言われなくても、自分で判断出来るだろ! 後は佑がやるから、それも置いていけ!」
ハイボールを作るグラスを並べていた響だが、大将に言われると手を止めた。
「ごめんね、佑。明日の方が忙しいと思うから、今日頑張って治してくる。これ、3番テーブルだから」
そう言うと、体をブルッと震わせ、響は帰宅する準備を始めた。
「響ちゃん、お大事にね!」
「無理せず、明日も休みなよ!」
「そうそう、俺が手伝いで入るから!」
店を出る響に、常連客たちが次々に声を掛けた。
響は元気の無い笑顔で、皆に頭を下げた。
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