私の心のバズーカは、魔改造砲弾を装填中。
夏原秋
第一弾 忘年会は一触即発
「夏原さん笑わないよね」
何ですって?
突発的にトリガーを引きかけた。しかし僅かな躊躇いが私をとどめる。ギリギリのところで指を外し、バズーカ砲を一旦肩から下ろした。そして、素知らぬ顔でグラスに残るビールを煽る。
いやー、そんなこと言われるとは心外だ。私にも言い分がある。だって競馬とか野球の話って分からないし。それでこっちから読書の話題振ったら盛り上げてくれるのかっていうと、絶対「ふーん」で終わりじゃないすか。
そういう気持ちが裏にある、「そうですねえ」の一言を返した。武器は背中の後ろに収めた。
「夏原さんは、お母さんになって笑えなくなったんだよ」
今度は、他部署にいるかつての上司が合いの手を入れた。
思わぬ言葉に私は動揺した。ワナワナ震える手で背後にある武器を、お守りであるかのように触った。
二〇二三年忘年会。閉会の一本締めより約一時間前の一幕であった。
そうか。周りからはそう見られているのか。いや、違う。私が笑わないのは元々だ。学生の頃から笑顔が少ない人間だった。四角四面の教室は苦痛な空間だったし、無理に笑おうとするのも健康上良く無いのだ。
仮に以前より笑わなくなった印象があったとしても、それは結婚や出産のせいではない。いつまで経っても他者とのコミュニケーションに余裕が無いというだけのことだ。要するに、他人を前にするといつも緊張している。
滅多に使わないバズーカを不安な顔で抱き抱える。根底にある性質、多少の成長はあっても矯正は不可能だと、とっくに諦めている。
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