8章:阿比須の拳

第81話 我、上京す。

閻魔優子えんまゆうこ目線



 我が今生の義姉である花蓮お姉ちゃんに阿比須の神髄をワカらせてから。

 我はまず東京に出向いた。


 すっぽんぽんの一文無しだったけど、頑張って裸足で東京まで走った。

 前世の我が生きた鎌倉時代の前の時代では、武士は裸足で都に参上するのが普通だったのだ。

 それを考えれば、これぐらいわけない。


「そこの裸族のJC! 止まりなさい!」


「裸で外を走ってどういうつもりだ! 中学生がそんなハイレベルなプレイをしていいと思ってるのか!」


 途中で警察官に呼び止められたけども、我は


「我は一文無しじゃ!」


 この一点張りで乗り切ろうとした。

 でも何度主張してもワカってくれなかったので


 やむなく警察官2人を殴り倒し。

 また東京に向かって走った。


 そしてその日の夕方に、我は東京の国会議事堂前に到着する。


 そこでは


「破産が何度もできないのはおかしい!」


「破産に審査があるのは絶対におかしい!」


「破産で借金にマイナス査定がつくのはおかしい!」


「自由に破産できて、自由に借金ができる自由な世の中を!」


愧死きし田! 我々の声に耳を傾けろーッ!」


 ……怠け者どもが、ふざけた内容の……「でも」とかいうやつをやっていた。


 我はナマで悍ましき怠け者どもを目にして、激高し。


「真面目に働かんかヴォケがーッ!」


 突っ込み、毎秒4人ずつに致命傷を与える技を繰り出し続け。

 その場を血の海にした。


 そして連中を全滅させた後。

 国会に乗り込んで、前にその言動を聞いてムカついていた議員を片っ端から血祭りにあげた。

 その際、我の足を舐めてでも助かりたいという態度を示した議員は、我の目標と違っていても血祭りにあげた。

 

 そして


 我を見ても、全く動じず「殺すがいい……我々は暴力には屈しない!」という胆力を見せた者だけを残し、我は国会議事堂を後にした。


 その後、公園の水道で返り血を洗っておったら。


 今の世の中の、この国の軍隊である自衛隊が襲って来た。

 キチンと銃器を装備した状態で。


 相手にとって不足無し!


 我は笑みを浮かべて、我は自衛隊に挑み……


 全員殴り倒したら、その日のうちに我は「腕力家」という称号を得るに至った。




 そして現在の我が何をやっているかというと……


「責任者よ。ジャリ袋は全部運んだぞ。我は次は何をすればいい?」


「ああ優子様。次は鉄骨運んでおいて貰えます? そこに積んでるのを、そっちの現場に」


「分かった」


 ……我は、工事現場で「あるばいと」をしていた。

 キチンと厚手の作業着を着て。へるめっとは被っておらぬが。


 切っ掛けは、一文無しが流石にマズイ。

 着る服が無いのもマズいと思うに至ったためだ。


 金子を得なければ。

 ならば働く。当たり前。


 だから我は、ビルの工事現場で責任者に「我を雇え。力仕事ならなんでもするぞ」と自分を売り込んだ。

 我は今の世の中の知識が未熟で、力仕事しかできない。

 あと、ここの作業員になれば、きっと作業着を確保して貰える。

 そういう目論見があって、選んだ職業。


 最初、責任者は「通常の作業員の10倍のお給料で雇わせていただきます優子様」と、怯えながらそれを承諾したが。

 実際に我がその給料以上の働きをすると気づき。


「……この労働力を、たった10倍のお給料で確保できるなんて……拾い物でした」


 と笑顔を見せてくれるようになった。

 我は嬉しい。


 ……代わりに、我と同じ力仕事要員で雇われていた同僚が全員解雇になったが、すまぬ。

 他で仕事を見つけてくれ!




 あっという間に、指定の場所に鉄骨を運び終える。

 我としては「こんくりーと」を捏ねる作業がそろそろ来るのではないかと思い、さっきジャリ袋を運んだ現場に向かおうとしたら


「優子様」


 ……背後から声を掛けられた。

 まあ、気配自体は前から気づいてはおったのだが。


 振り返る。そこには。


 2人の女がいた。

 2人の女が、片膝を突き、畏まっていた。


 1人は肩に届く程度の長さの髪の美しい女。

 その顔には知性を感じさせ、高貴な印象もあった。

 衣装として、ひらひらした紫色の布の衣装を身に着けており。

 それはまるで、西洋の神々を想像させる。


 もう1人は眠そうな顔をした、爆乳女。

 胸のサイズはHカップ。

 これは間違いがない。

 その髪型は……三つ編みおさげ。

 着ている服は青色のダボッとした……ええと、ろーぶ、というやつじゃろうか?


 ……デウスプリンセスとヒューマンプリンセス。

 それが、奴らの名だった。


 一体、我に何の用なのか?

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