ーー故郷から新展地ーー
「坊やはちょっと寝といた方がいいかもな~~~~~長旅になるから、今のうちに休んどきな」
「忠告ありがとうだけど、いいよ!こんな景色見たことないし何回も見れるとは限らないしね!」
「じゃあお好きに!」
周りの山も元いたところとは違う生物が居たり、肌感覚が、微妙に違っていて、楽しみの連続だった。次第に夜になっては、朝がやってくる。気候の慣れない僕にとっては居たいところだ。旅の飯はそこまで種類はないものの、その場に留まってキャンプファイヤーのようなものを行う。
暖かいものが出てくるだけマシだ。
1日目が過ぎ、2日目の昼ぐらいでようやく1つの街が見えてきた。
「あれがテスタ・ロコ。なんていうか、街の中が結構にぎわってそうですね!」
「ああ、まあここが目的地の奴なんてほとんどいないがな!だいたいの商人や旅人は他の都市を回っていく中でここを通るもんだ!あの村からは近道すりゃあ、いっちばん近いけどな!」
「それはどういう意味?」
「中見てみりゃあ分かるよ、さあもう時期つくから、荷物の確認をしておけ!」
中がどうなってるかは知らないけど、少しだけ好奇心と恐怖心が押し合いをしている状態だった。ついて早速、荷物を下ろしていくと、ここからは1人で通るんだって言われてからカレコレ1時間が経った。意外と門の人間はそこまで取り締まってはないらしい。
「ここどこだ?なんか変な街だな~~~~全然、見当たらないんだが!」
地図の場所が辺りにないのか、地図の読み方が間違っているのかぶらぶらと歩いていると、それらしい場所を発見する。
一軒家みたいな広さのサイズ感で商店と言うにしては少しちっさい気がする。名前も「ジャソス商店」であっている。恐る恐るその扉を開けると・・・・・中には明るい空間が広がっている。
入り口から見た感じと違って奥に広い内装の壁には見たことないような絵が飾ってある。にぎわっている様子から見て、ここは酒場のような場所だとその時は思った。
「あれ、こんなに若い子連れてきたの誰?」
店の従業員らしき人に声をかけられる。客は会話に夢中で見向きもしてこない。しばらくすると奥の方からもう1人が店内の様子をうかがう。
「今日も順調だね~~~って、そこに突っ立ってるあんた、もしかしてトルコフの息子かい?」
「えっ・・・・・っていう事はこの子が例のここで働く子?」
いろいろと騒がしいようで何一つ情報が入ってこない。戸惑っていると、最初に話しかけてくれた人が奥に案内してくれた。
「早速で悪いんだが、仕事の手順覚えてもらうよ!本当は明日のはずだったんだが、まあいいや!今日も忙しいから細かいことまでキッチリ教えてやんな、レネア!」
「どこからって厨房の方がいいか・・・・・・・早速ね~~~~~これが包丁でこれがこれがまな板で~~~」
「すいませんが、それぐらいは知ってます・・・」
「じゃあ、知らないのってどれだろ~~~~~あっ、油で揚げる系のってやったことある?」
「まだないです、家じゃ家事らしいことはしてこなかったので・・・・・・すいません」
「ありゃ~~~~~~まあ、謝ることないよ、まだこっち来て初日なんだし、色々覚えていこ!」
こんな感じでぎこちない会話をしていきながら、初日なこともあり、いくつかしか仕事が覚えられなかったカシアであった。
「それ作れたら次はそのお皿洗っておいて、後はあそこのテーブルの代金貰っておいてちょっとだいぶ酔っちゃってるけど、頼んだよ~~~」
そんな無茶なこと頼まれてもと思ったが・・・・・・・・仕方ないここで働いていくためだ、これぐらいの事はやらなくちゃだよね。
「すいません、これ、お代金です」
そのテーブルにいた5,6人の客が目を大きくして、僕に突っかかってくる。当然対応しなきゃいけないんだけど、なんというか顔が真っ赤だ。
「おいこんな飲んでねーぞ、あと半分ぐらいにしてくれなきゃ払わねえからな~~~」
「でもこれが本当のって言うか、お客さんマズいぐらい酔ってて大丈夫ですか、金銭感覚?」
周りの人間が噴き出すと、それにキレた目の前の客がビール瓶を思いっきり上から振りかざしてきた。とっさの事だったので彼の手首らへんを受け止めようとしたその瞬間・・・。
「おい、あんた!子ども手を上げるってのはどういうこったい⁉もし、そのまま振りかざしたら容赦はしないよ!」
さっきの女将らしき人がギラッとした目で客を威嚇した。ビックリして酔いがさめたのは代金を払ってそのまま帰っていった。
「ありがとうございます!でも、客は神様的な事さっき結ってなかったでしたっけ?」
「ああ、そうさ!でもね~~~~~客かどうかを決めるのはこっちの権利ってもんだよ、それだけ覚えときな!」
カシアはこの時、この人の下で働くことに少し安堵したのだった。
「これでもう今日はおしまいだ、どうだ?疲れたか?ここでやっていけそうか?」
そんなこと言われても口に出そうとしたが、一端のみこんでから、こう言った。
「これから、いろいろ覚えていくので、どうぞよろしくお願いいたします!」
2人ともの顔が明るくなったとこで、奥でこれからのどうするのかを話し合う事に・・・・・。
「あんた、まさかその様子だと父親から何にも聞かされていないみたいだったね、ちょっと頭は働くからと言われて雇ったが、まあまあ最初にしちゃあ上出来だよ!」
もう1人の女の子が僕に飲み物を手渡してくれた。
「私はレネアってさっき、話したか、これからよろしくね!」
「確かに自己紹介がまだだったね、あたしはアンジーナ、こっちは娘のレネア、ジャソスってのは夫の名だよ・・・・・・・・・家族で一様経営しているんだけど、もう1人従業員がいるからそれはまた来た時に紹介するとしようかね、てかあんた、まだ名前をあんたの口から聞いてないよ、何でもいいから話してみな!」
「僕の名は、カシア・・・・・・・・・・カシア・フォノムです、まだここの事はわかりませんがよろしくお願いします、一様6歳です。若干モノづくりをしていたこともあってそこのところは任せてください!」
「6歳ってホント⁉親も良く許可してくれたね~~~~~~私がその歳なら絶対無理だよ~~~」
改めて話すのは初めてだから少しむずがゆく感じた。
「ここはね、こう言った飲食以外にも日常生活に使うものを売ったりしているのさ、もちろんここで作っているよ、ジャソスがね・・・・・・もしかしたら、父親もそれを見込んでここにお願いしに来たのかもしれないね」
「あ~~~と、父さんにはモノづくりしていることは黙っていて、その何ていうかたまたまだったと思うんで、どっちかって言うと、その、ここの雰囲気を選んだんじゃないでしょうか?」
そういうと、2人は顔を合わせて大いに笑ってくれた。
「あんたも大変だね~~~まさか、モノづくりがたまたまできることだったなんて、そんなこともあるもんなんだね~~~~まあ、どっちでも働いてもらう予定だから、今日はもう休んで、明日ジャソスのところに行ってきな!部屋はね~~~~2階の05室だよ、これカギね!」
そう言って渡されたものをグッと握りしめ、僕は自分の身体がベッドに沈んでいくのを感じてそのまま深い眠りに入った。朝起きると体の感覚がどうもおかしい。ベッドが違うからかいつもと慣れないことをしたからか違和感のようなものが僕を襲った。
「こっちの朝もそう悪くないね~~~」
体をほぐしてから下の階に行くと、アンジーナさんが調理の下準備をしているところだった。
「おはよう、カシア~~~よく眠れたかい?今から朝食作るけど、何がいい?」
「エッグサンドで!」
昨日来た時に気になっていたものだ。これが頭から離れなかったのだからつい言ってしまったが、作ってもらえるのだろうか?
「そんなものでいいのかい?若いんだからもっと食べな!」
量を少し多めにベーコンとサラダ、そしてエッグサンドが10分もしない内に運ばれてきた。パンに挟まっている卵からは湯気が出ていて、とてつもない食欲におそわれる。
「そうさいな~~~朝のうちにガッツリ食べときな、そうしないと身体が持たないよ~~~」
味はあまり気にしたことがなかったカシアだが、その食べた瞬間の満足感のようなものが、体をしみわたっていくのを感じた。
「おいしかったです、この器そっち持って行きますね!え~~~と、今日はどうすれば?」
「今日は午前中にジャソスのところに行って、最初だしいろいろ見学していきな、午後はこっちに帰ってきて、酒場の手伝いしておくれよ!」
僕が酒場を出ようとした時、慌てて呼び止められる。
「あっ、そうそう!これ持って行ってくんない、あの人昨日徹夜だったから何にも食べてないだろうから、朝食と向こうの建物の地図だよ!反対側のちょうど2つずれたところだから、よろしくね!」
そう言って2つ手渡され、街の中を淡々と進んでいく。朝の街は意外と建物が面白い構造になっていることに気付かされる。
「昨日は暗かったから本当にどんな場所かと思ったら~~~こんな作りだったのか~~~へえ、なんか歪だな~~~」
調子も良好、久々の新鮮な感覚に酔いしれていると、先ほど言っていたジャソス商店に似た看板を見つける。
「随分と早いな~~~坊主、オレの店へようこそ~~~は~~~う~~わあ~~」
前にいるとてつもなく眠たそうな人物はジャソス本人だろう。早速、部屋の中に入って自分の紹介をするところだが・・・。
「なぜ、僕の名前を?」
「あ~~~なぜとは?お前さんが今日ぐらいに来ると知らされておったからな~~~」
「そうではなく、なぜ僕の事が分かるんですか?会ったこともないのに・・・・・」
「それは、あいつから聞いてたからな~~~~~まだ両手で数えれるぐらい若いのに早起きして、どっかに淡々と言って何か新しいことを発見したように戻ってくるって、どう考えても最初は嘘だと思ったが、実際に見にしたらまんまその通りでこりゃ驚いたさ」
「父から僕の事聞いていたんですね!」
「ああ、そうじゃなきゃ、簡単には受け入れなかったからな、お前がどれくらいここに居るか分からんが、そのお前さんが持ってる知識十分に使ってくれよ、改めてよろしく、ジャソス・マムだ」
握手をした時の彼の手はゴツゴツしていた。よっぽど何か大変な作業をしないとこうはならない、改めてやりがいを感じれそうだった。
「あっ、忘れてた!これ持ってきたんでした!」
そう言って手渡すとすぐに理解したジャソスは腹が減りすぎていたんだと分かるぐらい包みの中のモノをがっついていた。急いで食べ終わると、ここの作業について早速教えてくれてた。
「オレんとこでやってんのは、見ての通りモノづくりさ!確かつい最近作ったのが、これよ」
こっちに投げてきたその箱みたいなものは、どこか知っているような手触りだった。
「これは水筒だ。好きなものを入れて保存出来て結構便利だと思うぞ~~~」
「この容器でだいたいどのぐらい持つの?」
「ざっとモノに寄るな~~~まあただの水入れるなら1年でも2年でも持つだろ~~よ、まあ見ての通りここは日常的に使うようなものばっかだからな~~~客もいろんなのがいてその都度、依頼を受けてはこうやって作ってるってわけよ」
彼の作ったものが、奥に飾られているが、ざっと店を出せそうなレベルだった。
「え~~~と、僕はこれから何をすればいいですか?」
「カシア、お前はここのモノづくりの手伝いをしてもらう、やり方教える
から、しっかり見とけよ、ついでに言うと案も考えてもらおうかと思ってるんだが、だいたいはその2種類だな、まあそのためにお前を雇ったようなもんだ、早速やり方を教えるがやれるか?」
「もちろん、モノづくりは任せてください、多少の経験は僕にもあるので!」
2人とも張り切って必死に作業を進めていく、カシアは見ては手を動かし、またその繰り返し。実際に思っていたよりも上達スピードが速いことに顔のニヤつきが抑えられないジャソスであった。
「そういや、アンジーナに何か言われてるか?」
「午後はこっちで手伝って欲しいとだけ・・・」
う~~~んと顔をしかめながら、ジャソスは少し悩んでからこういう。
「まあ、多少1,2時間ぐらいは平気だろう、もうちっとこっちで教えたいから、頑張ってくれ!」
順調に彼の作っていた半分近くのモノをたったの6時間くらいで極めてしまったがために、さすがのジャソスも唖然とする。
「ふ~~~、マッ、まあ~~~~マジか、これだけ作ってしまえるんなら上等じゃなくてもう立派なもんよ、仕事が湧くに割ること間違いねえ!」
「喜んでもらえて、僕も良かったです!やはり、モノづくりは一度やりだしたら手が止まらないですね~~~」
案外面白いという感覚がやる気を際立たせる。誰もができる訳じゃないが、これぐらいはある程度の人ができると思っていた故にこの仕事の事を少し好きになりそうだった。
「だろ~~~~やっぱり、お前を雇って正解だったな~~~今日はこっちでもうちっと教えたかったんだが、アンジーナに怒られんのも面倒だ、さあ酒場の方に戻ってくれ、残りの手えつけてないのは明日教えることにするとして、まあ、慣れるまで頑張れだ・・・そっちの方もその心配もないだろうがな!」
礼をして、軽くは走りながら酒場の方へと向かう。うれしい時ほど、足取りが軽くなるものだ。
「ただいま、戻りました!何から手伝えばいいですかね?」
戻った時には大体の準備は終わっていたらしく、普通に昨日と同じようにする流れだった。厨房に戻ると知らない人が1人中にいる。
「お!やっと戻ったね~~~あっちの調子はどうだった?」
「ま~~まずますってところですね、それよりもう1人?」
アンジーナが後ろを振りとなるほどと言うように僕の疑問が分かったようだ。
「彼にまだ会ってなかったんだったね、あの人はジョル。今ではこっちのコックをやっているのさ!」
ん?こっちのという事は持ちは違う所で働いていたのだろうか?
「あいつは元王都で料理人をやっていて、王都疲れで今ではこっちに移り住んでいるのさ!」
「王都疲れ?」
「ああ、あっちはよっぽど、客の人数も多いし、料理人も多い、さらには階級の高い奴どもがいっぱいいるから気疲れしたらしいのさ!こっちだと開店前に作って帰れるからあっちよりはよっぽど楽なんだとよ!挨拶してきな!」
王都と聞いてどんな人物かと思ったが、意外とマイペースな感じの人だった。
「こんにちは僕、カシアって言います、よろしくお願いします!」
「カシア、行っとくが王都に行きたいらしいが、そんな楽しい所じゃないぞ、あそこは差がすべてのモノを言う、もし王都に行きたいというのなら、格差を埋められるように必死に頑張るがいい・・・」
よっぽどきつい環境だったのか、カシアはジョルの憐れむ顔に少しのピリッとした何かが流れ込んだのを感じた。
「まあ、ここではそんな覚悟をもってやることもないから、精々気軽に聞くがいい・・・・・で何か聞きたいこととかあるか?」
「ええ~~~すごい、王都で働いてたんだ~~~~~お兄さん、僕に料理とか少しでいいから教えてくれない?」
図書館のセスティルさんから大人の対応は何となく慣れているつもりだったが結果はどうだ?
「おまえ、中々見る目があるじゃないか~~~今度教えてやるからしっかりと目と鼻に刻み込め、わかったな!」
さっきまで暗めの印象を持っていたジョルが一気に明るくなった。やはり、彼は褒めたら何でもやってくれるタイプだ。そうして、ジョルには料理をジャソスには日用品づくりを重点的に教えてもらいながら、ちょうど1ヵ月が過ぎた。
「今晩も、上出来だったわ~~~客もいつもながらににぎわってし、ササッとかたずけてみんなで夕食にしましょう!」
ジャソスが酒場に帰ってくると、早速全員集まる形で料理が運ばれてくる。
「いや~~~カシアがいると、メチャクチャ作業が進んで楽なんだよな~~~」
「まあ、そうだったの⁉こっちもこっちで足りなかったら残りの材料で新しいもん作ってくれるから助かりもんよ!最初はこの歳でどうかと思ったけど、雇ってみるもんね~~~」
カシアがおいしそうに食べていると2人の目が同時にカシアへと向いていく。
「んん~~~やっぱ、これうまいや~~~え、2人とも何ですか?どうして僕の方見てるんです?」
「いや、何でもないよ」
「ああ、よく頑張ってるよ、レネアもだぞ。何か辛かったりしたらすぐに言うんだぞ!」
レネアが驚いた様子で2人を見る。よっぽど珍しい光景だったのだろう。
「カシア?後で来てくれない?」
こそっと僕だけに聞こえる声で言うとそのままいつも通りに食事へ戻ったレネア、カシアの方は何の用事かとずっと気になって考えているのだった。
階段を上がってから、レネアは自分の部屋に僕を誘う。
「実は・・・・・・・好きな子がいて、その子に何か作ってあげたいんだけど、何かないかな~~~~」
僕ではなく、その好きな誰かに甘いものをプレゼントしたいとのことだった。
「僕じゃなくてジョルさんに頼めばいいんじゃないの?」
「あの人に頼んだらなんか茶化されるか1から教え込まれて大変なことになるかだから、カシアがちょうどいいの、お願い!」
「それならわかった・・・・・・・・・・・・確か、僕が前見たもので、おいしそうなものがあったんだけどね・・・・」
好きな人に向けて何を作るか話し合っている途中、廊下から2人の視線を感じたが、すぐにその視線が無くなった。どうか誤解しないようにしてほしんだけど・・・。
「じゃあ、明日来れ作ってみようかな~~~明日はここ休みだし、少しだけ手伝って!」
「うん、僕も挑戦がてら何か試してみるよ、新メニュー」
2人が各々話し合った後、次の日に向けてしっかり睡眠をとって、その翌日・・・。
「これどうやって作るの、混ぜるのタイミングが全然わからないんだけれど~~~~なんか思ってたのと違う感じになったわよ!」
どうやら、お菓子作りはそれほどやっていなかったようで、何度も失敗した上にようやく、それらしいフルーツとナッツの焼き菓子が完成する。
「カシア~~~~ありがとね、明日の準備終わったら早速これ渡してくるね!甘いもの好きだって言ってたから、私の作ったの多分大丈夫だと思うけど、気に入ってくれるかな~~?」
「大丈夫だと思うよ、気持ちさえ伝われば、きっと喜んでもらってくれるよ!」
そう安心させながら、レネアの不安を感じさせないようにすると、気合のこもった様子で部屋に戻って行った。
「さて、どうするかな~~~~」
次の日の準備が終わった夕方ら辺にちょうど店を出るレネア、気になったカシアはそのままこっそり後を付けていくことにした。
「あ!いた、もうちょっと緊張するな~~~~~でも、長引けば、後々声かけづらいし、行こうかな」
そのまま向かった先は・・・・・・・・・・・・・・・・女の子だった、カシアはそんなこともあると少し驚きながらもそのまま遠くで見守ることに・・・。
「これ作って来たの、良かったら食べてくれないかな~~~って、思って、ずっと伝えようか迷ってたんだけど、どうかな、リリナ?」
「ごめんね、気持ちはとっても嬉しいの、でも・・・・・・・・・・・・・・・」
リリナという人物がやった目線の先には。
「おい!リリナ!どうしたんだよ~~~早くこっち来いよ~~~~お前の友達かこいつ?って何腕に持ってんだそれ?」
「この人・・・だれ?」
「ボーイフレンド・・・・・なんだけど、ごめんね、ほんとに・・・」
横に来た図体の出来いその人物は相手柄の彼氏だったようだ。
「おん!俺こいつと付き合ってんの、悪いんだけどあっち行っててくれ、2人の時間がもったいねえ!」
彼がレネアをあしらおうとしたその瞬間、レネアの手から勢いよく出たその焼き菓子は彼の口もとへ狙いを定めて飛んで行った!
「オゴォッ、ゲッホ、ゴホ。息が・・・・・息が出来ねえ・・・・・ヴゥ~~~!」
苦しんでいる姿を見るまでもなく、来た道を全速力で帰っていくレネア。その後を追いかけるようにして彼女の気持ちを落ち着かせようとした。
家の2,3件前で立ち止まってしゃがみ込み、そのまま大きく泣くレネアを見ながら、どうしていいかわからず突っ立っていたカシア。
「なんで・・・なんで、ちゃんと作ったのに~~~~~!そもそもそんな気配無かったのに・・・彼女、あんな奴と付き合っていたなんて、ほん~と、私って、ついてない、ねえ、何でダメだったのかなぁ、カシア?私の見る目がなかったのかなぁ?」
「ダメなんかじゃないよ!それにまだ出会いはたくさんあるよ、次頑張ろうよ、次またどこかで自分のタイプの人が見つかるかもしれないし、きっと何かしら努力してれば、出会いはあるよ・・・・ほら戻ろ?」
彼女の思いからしてだいぶ前からその子のことを思っていたのだろう。結果、相手がいたから断れたなんて思ってもいなかったことだが、たぶんリリナって人も押しに弱い感じの人だと思う、なんというか2人の相性や目線的なものに違和感を感じたからだ。
「だめ、うごけない・・・・・・カシア、おいて行って、後で絶対行くから・・・・」
これはマズいと感じたカシアは、ここに一人で残すまいと彼女を抱っこしてそのまま帰ることにした。家に帰っても、中々機嫌が直らないため、今日はアンジーナさんと僕、2人でやることに・・・。
そんなこんなでいろいろあって3ヵ月が経ち、7歳になり、ここのやり方もけっこう慣れてきた頃、新しいものを作るためにまわりにどんなお店があるか、調査がてら見学しに行った。どれもこれも村にはなかった店ばかりだ。何かと怪しい雰囲気のお店もあるが無視して先に進む。
「どうだ、なにか目新しいものはあったか、カシア?」
「いいえ、生憎どれもこれも、そこまで使えるかと言えば、それほどですし、材料がどんなものかもわかりません、何かこうホッと休憩の時に使えるようなものがいいのですが・・・・・・・・ん?」
何かを思いついたカシアは、急いでそのものを紙に書き留めていく。途中まで書いて後どうすればいいか悩んでいると、ジャソスが首を傾げて、僕の設計図の方をじっと見つめる。
「これ~~~~~おまえさん、こんなもん小さすぎて作れねえぞ!何か身体を温めるもんなんだろうけど、それに鉄はここらにはそこまで供給されてないんだ、それは却下だな~~~~」
改めにもう一度、考えるじゃなく何があるか記憶をたどって、連想していく。次はここでも材料があって、尚且つそこまで作るのに手間がかからないもの・・・・・・・そうすると、1つ出てきたが、何かと合わせれば、より効果的な気がする。単語だけは頭の中に入っていたものの、実際どんなものだったか知らないため、想像で書き連ねていく。
「こりゃなんだ、見たことねえもんだな~~~~こっちの走ってるぞ、王都で売られているもんだろ・・・・・・・ってことは、これは風呂か?」
「ええ、そうです。で!そこに、山で取ってきてすり合わせた薬草を使えば、薬草風呂ができると思うんですけど、どうですかね?」
「薬草を入れることでなんか意味あるのか?オレは薬草なんぞ知らねえぞ、そこのところは?」
「そこは自分で何とかします、薬草はここ近くの森を探索すれば、あると思いますよ、僕が使うのはどこにでもはえてる類のモノなので!」
「じゃあ、この器具はどうすんだ、というかどうなってんだ?素材は何で作る?」
「あれば、そのですが・・・・・・・・・・・ガラスをと」
「それはちっと高すぎるな~~~~」
「そしたら、薄く伸ばした金属製の材料でいいのですが・・・」
ジャソスの曇りかけた表情がまたスッと戻る。
「それなら、斜め前に金属専門の加工やがあったはずだ、ちょっと交渉してみるから、待っといてくれや!」
設計図を持ったジャソスはそのまま上機嫌で向かいの店に、そのまま数十分が経った頃、戻ってきたジャソスがこう言った。
「面白そうだから、乗ってやるだとよ!早速作業開始だ!お前はどうする?」
「森から薬草をありったけかき集めてきます!」
走って森のある方向へ、そんなに簡単に行くと思ってなかったカシアは、気持ち速めで、森の方へリュックを持って出かけることにした。大して変わらない森林内部に安堵している暇もなく、早速辺りを見回して森に生えているものを記憶をたどりながら探していく。
「確かここの近くに生えていて、独特なにおいがしたような~~~あった、これだ!」
森林の明るさは元住んでいた場所よりもずっと明るく、見つけるのに苦労することはなかった。10キロ単位近く集め終わると、その場を後にする。
「あ~~~重たい!ただの葉っぱでも、集めたらこんな重さになるんだな~~~」
帰りはリュックを破砕させないように、歩いて帰ることに・・・・・・・・・・・・・・・・・ジャソスの元に着くころにはもうすっかり夕方になっていた。
「お~~~お帰り、カシア。お目当てのモノは早速見つかったのか?」
「ええ、けっこう積んできたので、作業は明日にしたいと思います!」
「そうだな、オレもちっと休もうと思う、2,3台は作ったが、手に力が入らねえ、酒屋に戻って回復するとしようか!」
「そうしましょう!」
2人が帰ってから、こっちの状況とは別に酒場ではそこまで人だかりはなかった。
「もうお帰りかい、ジャソス?」
「ああ、何かくれ!今日は面白いことカシアが思いついたからその案に賛同して他の店も乗ってくれたんだ、まあ数日後には完成するから、そんときにはお前にも見せてやるよ!」
「それは楽しみにしとくよ!」
いつも通りのやり取りをしているとあっという間に時間が経ち、今日は早めに店を切り上げることに・・・・・。
「そんで、なんで今日はこんなに早いんだい?」
「うまく作れたもんで短い間に詰め込み過ぎたのさ、まあどおってことはないな!」
「そうそれならいいけど、また前みたいに無理しないでおくれよ~~~」
前回何かあったみたいで少し、気になったが、聞かないでおくことにした。夫婦の問題に首を突っ込むことじゃない。
「今日もおいしかったです!」
「それはよかった!あんたも頑張ってるんだね~~~明日もそっちかい?」
「はい、すいません、こっちにあまり来れなくって、こっちの作業を終わらせたいのでもう少しジャソスさんの方でやらせてもらいます・・・・」
「まあ、いいよ。レネアも前より、スムーズに動けるようになったし、私としてもちょっとは楽になったもんだから安心さ!」
レネアも前の事もあってか吹っ切れて今は仕事に精を出しているようだ。部屋に戻ると、薬草を見てどうするか悩んでいると、レネアが部屋に入ってきた。
「何しているの、カシア?それって・・・・・・・・・怪しい粉作ったりしないわよね?」
「そんなものつくるわけ、ないだろ!てかなんで入ってきたの?」
レネアは前よりも僕の事をいじってくる。恥ずかしいところを見られたから、そのお返しをしたいとかなんとからしい、ちょっと面倒なことになっているが、僕はあの件の事はそこまで恥ずかしいことじゃないと思ってはいるが、それは経験してないからだと、僕に説明してきたレネアはどこかおかしかった。
「ちょっと、背伸びたんじゃない・・・・・・・・はあ~~~私と違って、お気楽なカシアくんは何してるんですか?」
「薬だよ・・・・・・・・正確に言うと、薬草をお風呂に入れて、薬草風呂にするためのアイテムかな~~~肌にいいって本に書いてあったんだよね」
「そんなことして、なに?モテたいの?なんていうかさ、カシアは好きな人いないの?」
急に聞かれた話題にせき込みながらも、間をおいてからこう答える。
「いないよ・・・・・・・・・うん、いない・・・・・・と思う、多分ね」
「へ~~~~~な~んか、ウソっぽいな~~~~」
そんなこと言われたってまだ、恋愛についてどうこうしたいっていうのが、わからないのだから、どうしようもない、もしかしたら今まで好きという感情に巡り合えていたのかもしれないが、それはぼくのまだ見ることのできない世界だ。
「カ~~~シ~~~ア~~、何か試してみない~~~~例えば、キスとか~~~~」
いきなり近づいてきたレネアはすごくアルコールのにおいがしている。
「レネアさん、さてはお酒飲んでますね~~~~う~~抱き着いてこないでください!」
そう言えば、随分と前に間違えてお酒を飲んでしまった時にでろんでろんに酔っていたことを思い出す。また、何かの拍子に飲んでしまったのだろうか?
「レネアさん今はダメです・・・っていうか、僕はダメです。こんなのはレネアさんじゃないですよ~~~しょうがない!ここをフイッと!」
前にべスクスの店でもらった麻痺性のツボを抱き着いているレネアの背中に押し当てる。たちまち力が抜けたかと思うと一安心できたのもつかの間。
「やばい、レネアさんが白目向いてる・・・早く、水飲ませて、部屋に運ばないと!」
無事にレネアをベットで休ませるとそのまま自分もベットで休むことに。その次の日にはレネアも何が起こったか覚えておらず、いつもの元気なお姉さんに戻っていた。
「今日で完成させるぞ、カシア。お前のはすぐに作れんのか?」
「昨日少し、見ていたので、何となくは分かりましたが、戻ってからいろいろ試してみます・・・・・・まあ、昨日はそれどころじゃなかったんですが」
ジャソスはよくわからんと言った表情で作業場に戻ると、風呂の方は一台完成していた。その形からも何となくいいものを造れたと実感できる出来だった。
「こいつを後、20台造る。完成すれば、お前の作った薬草と二段構えで用意しておく、よし、それじゃあ作業開始と行こうか!」
早速すりつぶした薬草を粉上にしてから、そのまま乾燥させていく、そうして粉末状になったものを袋に詰めてやっと完成した。
「できました、そっちの方はどうですか?」
「後4,5台ってところだ、ガンベルのやつがもうちょっとしたらできるらしいから、こっち、負けてられねえなあ~~~」
「それじゃあ、そっち手伝います!」
「ああ、ここの部分気を付けろよ、危ねえから慎重にだ・・・・・オレももうひと踏ん張りってとこだな」
ようやく完成したものは疲労のあまり、何も言えなかったが、次の日の朝、見に行って確認すると完成している状態を見て達成感のようなものがこみあげてくる。
「やっと、やっと完成しやがった、一台だけ持って行って、出店がてら試してみようか!」
「おう、売れたらオレんとこにも山分け頼むぞ、ジャソス!」
いつの間にか横に立っていたのは、ガンベルの兄貴だった。早速、店を出して、モノを並べていく。
もちろん、目玉の商品は火を使わない風呂と粉末の薬草だが、他のモノもそれに負けないようにジャソスの商品というのが、独特な何かを見出している。
出店はここだけじゃなく、商店もけっこう出てきているらしい、今日はたまたま広場のお祭りもあって、ここの商品を見ていく人もだんだん増えていった。
「あの値段じゃちょっと高いわね~~~~」
「うん、そうだね、また何か役に立ちそうなものがあれば、見に来ようか~~~」
若い夫婦たちも少し除いただけで、後はそのまま通り過ぎていく。
「ちょっと、だけ高いんですかね~~~少し、下げますか?」
「何言ってる!火を使わんで風呂が入れる太陽の照らされる場所に置いておくだけで風呂が入れるんだ、それでこの値段は安いもんだ、さっきの奴らはものの値打ちが分かってなかったんだよ、それに売れていくのは・・・まだまだこれからだぞ~~~!」
ジャソスの言う通り、数時間経つと思いっきり売れていくものを見るにカシアは目を疑うよう光景が目の前で行われていた。
「す、すごい!こんなにモノが減っていくなんて・・・」
「だろ、まあその内落ち着いてくるから今が山かもな~~~~さあ、買った買った!今回初だしの商品がほとんどだ、買っておいて損はないぜ!」
ジャソスが張り切っていると、向こうから馬車のようなものが1台この出店の前で留まる。
「なんですのあれ?面白い形をしたお墓ですこと・・・フフフッ」
扉を開けて出てきたのは貴族らしき服装の女性(マダム)だった。
「これを作ったのはあなたかしら?」
「ええ、そうですが、マダム。こちらは墓じゃなく風呂でございまして、
便利なことに日を使わずに太陽の力で湯を沸かせる仕組みになってるんですよ」
「・・・・・・という事は、持ち運びは可能でして?」
「ええ、さらにこちらの薬草も入れることでより肌がきれいに際立つこと間違いなしです、まあここで初めて出した商品ですが、いかがです?」
少し考えるしぐさを見せつつ、後ろの馬車に乗っていたお使いのモノにこう伝える。
「少々、金貨の用意を・・・・・・・・・・・・・・買いですわ~~~~~~オ~~ホッホッホッホ!」
その貴族の波に乗って来たのか、他の貴族や商店の人間同じものを買うと注文が建て込んだ。もちろん、薬草の方も単体でならある程度は売れていったので、カシアの中では上場な方だった。
「~~~~~~~カシア、どうだ、お前から見て、この成果は?」
「とっても上出来ですね、まさか最初からこんなうまく行くとは思いませんでした!」
結果、風呂はすべて売れ、他の商品もスカスカになるぐらい、売れていた光景を見るとうれしさのあまり笑みがこぼれてくる。
「おまえさん、どれぐらいの値打ちになったと思う?」
「ぱっと、1ッか月分とかですか、ね?」
「ガンベルのやつに分けるの抜いて2年分はあるぞ‼」
今聞いたのは嘘じゃないかと疑いかけたが、金貨の数を見て改めて現実に引き戻される。2人はうれしさのあまりグータッチをすると、今までの苦労を帳消しにす来るくらいのものを家へと運ぶ。
「どうだった、そっちは売れたのかい?」
「売れたってか、ほれっ、これだ!」
袋の開けると大量の金貨と銀貨が入っていた。その拍子にアンジーナはジャソスに抱き着き、レネアもまた、目を大きく開けたまま固まる。
「なにこれ・・・・・・・・・・すごい・・・」
それからというもの酒場の状態もジャソスの日用品の注文も以前より増していき、やっと終わったと疲労と幸福感がマム家の中で流れているのを感じる。
「カシア、お前もけっこう頑張ってはこの店に貢献している。最初はこんな奴は力仕事の足しになればいいと思ってはいたが、今になってみればお前を雇ってよかったよ、カシア」
「ホントね、こんなに若いのに何か事情でもあったらどうするのって最初は思ったけど、前よりいい生活をさせてもらっていると思うと、感謝せざる負えないわ~~~~」
2人から褒め散らかされると、なんというかむず痒い。外から帰ってきたレネアは僕と3人の会話を見てわかんないと手を上にひらひらとさせる。
「それはそうとカシア。あんたに手紙来ているみたいだけど渡しておくね、はい」
貰った中身をすぐさま、確認すると送り主は父親からのだった。
「え~~~と、カシア、元気にしているか、お前がいない内にお前の兄弟が一人で来たぞって、そんなことよりもお父さんが来ている。お前からするとお祖父さんになるが、けっこうめんどくさいことになってて、取りあえず帰ってくることは出来ないか~~~~手紙が届いたなら、その次の日にでも来てくれ、家族で話し合わなければ、いけないことができた、お前にも深く関係することだ、またそっちの話も聞かせてくれ!・・・・・・・・トルコフ・フォノムより・・・・・・って、なんでこんなに急なんだよ!」
カシアが読み上げていたことからもマム家全員に内容が知ったり伝わってきた。
「なんだ~~~~お前の父さんも面倒な奴だな~~~こっちは幸い、こんだけ資金があるんだ。生活には困らねえさ!」
「ええ、明日荷物を馬車を用意してあげるから行ってきなさい、うちらの事手伝ってくれて、本当にありがとね!」
「ええ~~~!本当に行っちゃうの⁉カシア、絶対また戻って来ないと私の気が収まんないんだからね!」
ふんっといった拍子で上の階へ上がって行ったレネアを追いかけようとしたが、アンジーナに待てと止められる。
「今はよしときな・・・あの子はあれでも、あんたの事弟みたいに思ってたんだよ、あんたがこっち来てから結構前向きになった方だしね!」
ジャソスもうなずく。
「今日は早く夕食作るから、後でいっぱいあの子と話してやんな!スッキリした木森でここ出ていきたいだろ、多分それはあんたが一番わかってんだろうけど・・・」
食事を済ませてから自分の部屋に戻る。自分の部屋にあるモノを片付けてはいろんなことがあったと思い返す。
「短い間だったけど楽しかったな~~~~」
急に扉が開いたかと思うと、そこにはまたしてもレネアが立っていた。
「本当に出て行っちゃうの?」
そんなこと言われても、と言いそうになったが、そんなことを伝えてもまた以前と同じパターンになる。ワイワイの繰り返しだ。そうじゃなくて、レネアが居て良かったと思わせれるようなことを言わなければいけない・・・・・・・・いけないのに何も頭には浮かんでこない。
「さっきの手紙がウソだったらどうしますか?」
「普通にぼて繰り回す」
「こっ、怖いですよ~~~また、あの時みたいに好きな人ができても過去の事なんて考えずに前に進んでくださいね!」
「カシアはさ~~~~本当にすごいよ、私よりも数歳下なのに、こんだけ
仕事ができて、他の人にも冷たい対応なんか一切取らない。何でこんなにすごい奴が家で働いてんだろうって思うぐらいだけどさ、カシアも朝起きた時とかメチャクチャ子供みたいに大きいあくびするし、私が酔ってるときに迫ったら、メチャクチャ焦ってて可愛かったし、まだやっぱり子供なんだな~~~~って、思って大人になって行くカシアをちょっと、見届けたかった感はあるけど、まあそれも今日で終わりか~~~ってさ~~~」
そうするとカシアはレネアの目をじっと見つめ、そのままこう告げる。
「僕が・・・・・・・大人になった時にレネアさんのところに戻ります、そうすれば満足ですか?」
「ホントの本当に?」
「ええ、ホントの本当に・・・」
そう返すとレネアの表情は穏やかになり、僕の頭をワシャワシャっとさわりながらこう言ってきた。
「立派な人間になってくるんだよ、もし最悪の性格で、どうしようもないぐらいへまばっかりして、女たらしなダメ人間になったんなら、私が、今の若いの頃に戻れるように何度でも殴ってやるから、覚悟しておきな!」
「そんな、へましませんよ、それに僕は堕落した生活は嫌いなので!」
2人はその後もこっちに来てからの頃の事をたんまりと話していた。次の日の朝は身体がちょっと重たいような、気持ちが重たいような、そんな寂しさが僕をおそった。下の階に行くといつも通り朝食の準備をしているアンジーナがいた。
「馬車の2日間はあまり食べれないだろうからここでいっぱい食べておきな!」
食が進むはずもないが、確かに馬車はそこらが整っていないので無理やりにでも喉に詰め込む。
「大丈夫さ、何にも心配ないよ、ここに雇い入れるかは、まあ、頑張り者しか欲しくないが、取りあえずはうちらで間に合ってるさ!」
そう言われて安心したが、やはりここを出るのが寂しい。
「時間だ!そろそろ準備しないと、馬車を長時間待たせるわけにもいかねえからな、もしお前さんが何かここらを通る時があったらいつでも寄ってくるがいい、短い期間だったが、いろいろあって随分と濃い時間だったよ」
「そう・・・ですか、短い・・・」
「まあ、お前さんの歳からしたら長いかもしれねえが、そんなこと言ってもオレも寂しいのは同じだ、またいい面白いもん作りに来てくれや、オレはいつでも歓迎だぜ!」
「はい・・・そうさせてもらいます、できたら今度はもっとすごいものを!」
馬車に乗ろうとした時、慌てて走ってきたレネアがカシアの目の前で留まって、深呼吸をしてから文句を言ってきた。
「今日が分かれ日だって言うのに誰も起こしてくれないとか、そんなことある⁉」
「普通はもっと、早く起きておくものでしょ、全く髪だけは整えてくるんだから~~~」
改めて僕の方を向くレネア、しっかりとした表情で告げる言葉は今までで最も自信があった。
「あんたに助けられたあの日、自分にとって起点だったなって今でも思うよ・・・・・・・・・・・、感謝してるよ、カシア、あと、私との約束忘れないでよね?」
「わかったよ、レネアお姉ちゃん!」
レネアはお姉ちゃん呼びに満足気ながらも、両親そろって、約束とはという何のことか分からないという仕草をしていた。
「ああ、そういやお前さんに渡し忘れていたものがあった・・・・・・・・・これだ受け取れ!」
そうして、キャッチした袋の中を覗くと金貨や銀貨が・・・・・・あの時の量よりは少ないが大量に入っていた。
「こんなの貰えないよ・・・・・・これって、あの時のだよね、どうして?」
「どうしてってそりゃあ、お前さんが考えたものにオレが売り込んだもんだからな、働いたもん同士で金を分け合うのは当然よ、まあ働いた分をほとんど渡せてなかったから、この文でチャラにしてくれや・・・・・・・・・ってことで、それはお前さんのもんだ!」
「ありがとう、王都の資金これで溜まったと思うよ・・・・・・じゃあね、またいつか、その時まで!」
そしてテスタ・ロコを去る馬車が出発する。正門が見えなくなるまで、手を振っていたカシアであった。
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