赤ずきんと俺物語

野墓咲

プロローグ

 目を覚ますと、銃口が俺を狙っていた。

 銃口の先には赤いスカーフの娘がいる。あどけない顔をしているが眼つきは狩人のようだ。

そういやあ、死んだじっちゃんがよく言ってたっけ。わしらにとって一番の天敵は人間だ、てさ。

「これから、あなたを殺すわ」

 小さいお口から出てくるにしては随分と物騒な言葉だった。

「好きにしろよ」

 実際、そう言う他ない。まだ意識はもうろうとしているし、手足はベッドに縛られている。おまけに鼻の先にはごつい散弾銃だ。本当はお嬢ちゃんに扱えるしろもんじゃないが、的が5センチ先にあるとなれば話は別だ。

確かに俺も色々やったさ。

でも生きるためだ。

生きるために別の生き物を殺して何が悪い?

人間だってそうだろ。

「最後に聴きたい事があるの」

「何だ?」

「おばあさんをどうしたの?」

 俺は鼻を鳴らして笑う。

「分かってんだろ」

 赤ずきんは銃で俺の頬をつついた。

「答えて」

 以前無表情だが、彼女の唇は震えていた。

 俺は歯をむき出しにして笑った。

悪役らしく、な。

「俺が喰ったよ」

 彼女の顔が歪んだ。空のように澄んだエメラルドの瞳から涙が零れる。

「このゲス野郎!」

 赤ずきんが引き金を引いた。

こうしてオオカミが死に、物語は終わる。

これにてハッピーエンドだ。

ちくしょう。

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赤ずきんと俺物語 野墓咲 @hurandon

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